シンガポールでフェルスタッペンに20秒以上の大差をつけ、今季3勝目を飾ったノリス。ドライバーズ選手権でポイントリーダーのフェルスタッペンとのポイント差は52点まで縮まった
連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE16
第17戦アゼルバイジャンGPと第18戦シンガポールGPの連戦を終え、F1は残り6戦となった。10月中旬からテキサス州オースティンでのアメリカGPを皮切りに、メキシコGP、ブラジルGPと3週連続でレースが開催される。
注目のタイトル争いは、アゼルバイジャンGPでマクラーレンがコンストラクターズ選手権でレッドブルを抜いてトップに立った。ドライバーズ選手権では依然としてマックス・フェルスタッペンが首位の座を守り続けているが、ランド・ノリスは急速にポイント差を縮めてきている。アメリカ大陸の3連戦はチャンピオン争いの大きな山場になりそうだが、どのチームとドライバーが抜け出すのか!?
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■マクラーレンがチャンピオン争いでトップに立つ連戦となったアゼルバイジャンGPとシンガポールGPはともにマクラーレンが制しました。アゼルバイジャンではオスカー・ピアストリ選手が優勝し、ランド・ノリス選手は4位に入賞。
対するレッドブルはセルジオ・ペレス選手が久しぶりに速さを披露して、レース終盤まで表彰台争いに加わっていたのですが、フェラーリのカルロス・サインツ選手と接触してリタイアに終わります。マックス・フェルスタッペン選手は5位に入賞するのが精一杯で、レッドブルはついにコンストラクターズ選手権のトップの座をマクラーレンに明け渡しました。
ペレス選手とサインツ選手の接触に関して、スチュワード(レースの審査員)はレース中のアクシデントとしてどちらのドライバーにもペナルティを与えませんでしたが、あそこで接触してしまうのが今のペレス選手なのかな......。こんなことを言いたくはないですが、彼の厳しい状況を物語っているように感じました。
続くシンガポールはノリス選手がライバルを寄せつけず、圧倒的な強さでシーズン3勝目を挙げます。ピアストリ選手も3位に入り、マクラーレンはレッドブルとのポイント差を41まで広げました(シンガポールGP終了時点)。
レッドブルは路面がパンピーなシンガポールのマリーナベイ市街地コースが苦手なようで、22戦中21勝した昨シーズンも唯一敗北しています。今年もレッドブル勢は走り始めからマシンのバランスに苦しみ、ペレス選手は10位に入るのがやっと。そんな中、フェルスタッペン選手はセットアップを変更し、決勝を2位でゴールするところまでもっていったところはさすがだと思いましたね。
■タイトル争いの厳しさを知り尽くすレッドブル現状、マシン性能はマクラーレンが頭ひとつ抜け出していますし、ノリス選手とピアストリ選手が安定してポイントを積み重ねています。対してレッドブルはフェルスタッペン選手が孤軍奮闘している状況なので、コンストラクターズ選手権で逆転するのは難しいと思います。
でも一方、ドライバーズ選手権でノリス選手がフェルスタッペン選手に追いつき、逆転でチャンピオンになるのは簡単ではないでしょう。マクラーレンは決して盤石の戦いをしているわけではありません。トップチームらしからぬミスで、順位を落とす場面がありました。
アゼルバジャンでチームの判断ミスで、ノリス選手が予選Q1で敗退。17番手に終わります。決勝は上位勢にアクシデントがあり、最終的には4位でゴールしましたが、そういうミスがこれからのチャンピオン争いで大きく響いてくると思います。
マクラーレンは、チームメイト同士で自由に戦うことを許可する"パパイヤルール"を撤廃したと言いますが、ピアストリ選手がノリス選手をしっかりとサポートして勝ちきったレースはありません。これまで"パパイヤルール"があったことでノリス選手はかなりのポイントを失っています。それがフェルスタッペン選手とドライバーズ選手権を争う上で、大きな足かせになっています。
劣勢のレッドブルはタイトル獲得のために貪欲に戦っています。シンガポールでは、ゴール直前にレッドブルの姉妹チーム、ビザ・キャッシュアップRB(VCARB)のダニエル・リカルド選手がピットインしてソフトタイヤに交換し、ファステストラップを取りにいきました。あの場面には驚かされました。
ファストストラップを記録したドライバーとチームには1ポイントが与えられますが、入賞圏内の10位以内でフィニッシュした場合に限ります。リカルド選手がピットインしたときは入賞圏内を走行していなかったので、その条件を満たしていません。それでもリカルド選手はファステストラップを記録することで、結果的にマクラーレンとノリス選手から1ポイントを奪い取る形になりました。
正直言って「そこまでやるの!?」と感じました。いくら姉妹チームとはいえ、レッドブルとVCARBは別のチームです。しかもリカルドはポイントを取れるわけじゃないですからね。でもフェルスタッペン選手とノリス選手のドライバーズチャンピオン争いがもつれ、最後にフェルスタッペン選手が1ポイント差でタイトルを獲得したら、もうリカルド様様ですね(笑)。
レッドブル陣営は、チャンピオン争いの厳しさを熟知しているからこそ、そういうギリギリの勝負を仕掛けてくる。「えげつないなあ」と思う一方で、「さすがだな」と感心もしました。
■若いドライバーの活躍で新たな変化の予感リカルド選手はシンガポールを最後にVCARBから離脱することが発表されました。そしてリアム・ローソン選手がリザーブドライバーから昇格し、シーズンの残り6戦、角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手のチームメイトになることが発表されました。
ローソン選手は昨シーズンの中盤から後半にかけて、負傷欠場したリカルド選手に代わって5戦出場しました。彼はすごく速いドライバーですが、角田選手は平常心で戦ってほしいですね。
これまでの角田選手は、何よりチームメイトを上回る結果を出すことが目標だったと思います。もちろん、それはこの先も変わらないのですが、F1参戦4年目となった今シーズン、角田選手はやるべき仕事をほぼ100%こなしていると思います。マシンのポテンシャルを限界まで引き出し、その上でチームメイトを上回るパフォーマンスを発揮しています。
すでにチームからの信頼は十分に得ていると思いますし、われわれファンも安心して角田選手の戦いを見ることができています。誰がチームメイトになっても、今まで通り戦ってほしいです。
現在22歳のローソン選手が来シーズンのVCARBのシートを獲得できるかどうかはこれからの活躍次第だと思いますが、ここ数戦、若いドライバーたちの活躍が目立ち、F1に新しい変化が生まれそうな予感があります。第16戦のイタリアGPにウイリアムズからデビューした21歳のフランコ・コラピント選手は、参戦2戦目となるアゼルバイジャンGPで8位に入賞しています。
続くシンガポールも壁に囲まれた狭いサーキットであるにもかかわらず、本当にギリギリを攻めていました。最終結果は入賞にあと一歩届かず11位に終わりますが、F2に比べると大きく重い現代のF1マンンにいきなり乗って、あそこまで攻められるのはすごいことだなと感じました。
2025年シーズン、ハースからフル参戦が決まったオリバー・ベアマン選手も印象的な走りを見せてくれました。19歳のベアマン選手は、ペナルティポイントの累積により出場停止になったケビン・マグヌッセン選手の代役でアゼルバイジャンにハースから参戦しましたが、予選で一発の速さには定評のあるベテランのチームメイト、ニコ・ヒュルケンベルグ選手を上回る11番手のタイムを叩き出し、決勝でも10位に入賞しました。
コラピント選手やベアマン選手のような20歳前後の若い選手たちが活躍して、F1が活性化されています。彼らのこれからの活躍が楽しみです。
■レッドブルにとってメキシコが天王山になる!?シンガポールが終わり、シーズンも残り6戦。短いインターバルを挟み、第19戦アメリカGP(決勝10月21日)を皮切りに、第20戦メキシコGP(決勝10月27日)、第21戦ブラジルGP(決勝11月3日)と3週連続でレースが開催されます。
「レッドブル陣営にとってメキシコGPは天王山になる」と話す堂本光一
南北のアメリカ大陸を舞台にした3連戦はタイトル争いの大きな山場になると思います。アメリカの舞台となるテキサス州オースティン近郊にあるサーキット・オブ・ジ・アメリカズは長いストレートと低速から高速までさまざまなコーナーがあり、マシンの総合力が問われるコースなので、今の勢力図を示した結果になると予想されます。
高地でのレースとなるメキシコはレッドブルとホンダが共に得意としています。6月の第10戦のスペインGP以来、勝利から見放されているフェルスタッペン選手にとっては巻き返しのチャンスかもしれません。ペレス選手にとっても母国ファンの声援は大きな力になると思います。逆にメキシコで取りこぼすと、タイトル獲得は本当に厳しくなる。レッドブル陣営にとってメキシコは天王山になるかもしれません。
3連戦を締めくくるブラジルは天候が急変し、荒れる展開が多い。今年も大いに荒れていただいて(笑)、手に汗を握るドラマを見せてほしいと思います。
☆取材こぼれ話☆
堂本光一が作・構成・演出・主演を務めるミュージカル『Endless SHOCK』の福岡・博多座での公演は9月29日に千秋楽を迎え、11月8日からは東京・帝国劇場で最後の公演が始まる。なお帝国劇場で11月29日に13時に上演される『Endless SHOCK』大千穐楽公演は全国の映画館でライブビューイングを行なうことが決定した。
「夏の大阪公演の前には新型コロナに感染し、博多公演の前に声がつぶれたり、いろいろありましたが、もう身体は大丈夫です。実は、声に関しては今年春の帝劇公演のときから違和感があったんです。それを庇いながら舞台に立っていたら、逆に声帯に負担をかけていたみたいです。
あとはメンタル的な部分も少し影響していたようですね。病院で診察を受け、先生から『もう思いっきり発声したほうがいい』とアドバイスを受け、実践したら調子が戻ってきました。まあ長く舞台をやっていると、体調が100%という日はありません。とにかく11月の帝国劇場での最後の公演まで、いつも通りに臨んでいきます」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD)衣装協力/AKMヘア&メイク/大平真輝)
構成/川原田 剛撮影/樋口 涼(堂本氏)写真/桜井淳雄(F1)
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