2023年8月7日に死去したウィリアム・フリードキン監督の、半世紀以上にわたるフィルモグラフィの中で最も毀誉褒貶に晒された問題作「クルージング」(1980)。43年ぶりとなる日本再公開を前に、このほど予告編が披露された。
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【フォトギャラリー】男たちの性の深淵をさまよう「クルージング」場面写真
70年代、ニューヨークで実際に発生したゲイの男たちを狙った猟奇連続殺人事件を基にしたクライム・サスペンス。主演に当時のトップ・スター、アル・パチーノを迎えた野心作にして80年代アメリカ映画史上屈指の問題作と言われている本作は、後の「羊たちの沈黙」や「セブン」などに先駆けた、80年代サイコ・サスペンスの重要作であり、SMゲイ・カルチャーの洗礼を受けて揺らぐ男の性的アイデンティティと精神の闇に迫った、今なお先鋭的な野心作だ。
ニューヨークで、ゲイ男性ばかりが狙われる連続殺人事件が発生。密命を受けた市警のバーンズ(アル・パチーノ)は、同性愛者を装い、“ストレート”立入禁止のSMクラブへの潜入捜査を開始する。毎夜、男たちの性の深淵を彷徨い、身も心も擦り減らすバーンズは、遂に犯人の手がかりをつかむが……。
フリードキンが警察やゲイ・コミュニティの人々と交流を重ね、当時、ロウアー・イーストサイドに実在していたゲイのサディストとマゾヒスト以外は立入禁止のSMクラブ内での撮影が許可されたからこそのリアリティある映像が展開する。ちなみに、SMクラブ内の男たちは実際の常連たちが演じている。
本作は、結果的にハリウッド映画史上初めて男同士のSMセックスを正面から描いたことにより、同性愛差別を助長するとして製作発表時から公開後まで全米各地で猛烈な抗議活動を受けた。大変な話題作となったものの、批評と興行は振るわず、今世紀に入るまで長らく語る者も稀だった。だが近年、「パルプ・フィクション」のクエンティン・タランティーノ、「ドライヴ」のニコラス・ウィンディング・レフン、「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマら名監督たちが本作をフェイバリットに挙げているだけでなく、各国のクィア映画祭では、HIVウイルスが世界に蔓延する前のゲイ・カルチャーを記録した貴重な作品として再上映/再評価される機会が増えている。
このほど公開された予告編では、あやしく退廃的な雰囲気が立ち込める夜のニューヨークを活写。ゲイの男性ばかりが狙われる連続殺人事件を探るため、NY市警のバーンズはSMクラブでの潜入捜査を開始する。そこで彼が目撃するのは、レザージャケットや黒のタンクトップ、鋲打ちのベルトやデニム、レザーハットにそろって身をつつんだ大勢の男たち。最初は当惑するバーンズだったが、やがてその世界に身も心も浸されてゆく…。映像は、人間の性と殺人鬼の暗黒の最深部を覗き込んだバーンズ=パチーノの瞳が、こちらに不穏な眼差しを投げかけるところで幕を閉じる。
11月8日からシネマート新宿ほか全国順次公開。
【作品情報】
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クルージング
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