10月3日(木) 11:32
ゴルフにおいてスムーズなスイングをするためには、手首の使い方が重要になります。レッスンでは手首の「コック」といった表現をされますが、そもそもコックとは何を指し、本当にスイングに必要なものなのでしょうか。この記事では、コックが大事と言われる理由を解説しながら、身に付けるためのポイントを紹介していきます。
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スイング中、手首を折って、角度を作る動きを「コック」と呼びます。親指側に手首を折る「橈屈(とうくつ)」のことを指すことが多いですが、コックは英語の「Coking(コッキング)」が由来となった言葉で、その意味するところは「銃の撃鉄」や「弾丸を打ち出す準備動作」です。銃を撃つための動作と、ゴルフでボールを打ち出す準備である手首の動きを重ね合わせて、コックと呼んでいるようです。
同じようにスイング中の手首の使い方を表す言葉として「ヒンジ(Hinge)」がありますが、こちらは英語で「蝶番(ちょうつがい)」を表しています。コックも、ヒンジも比喩に近い表現で、その言葉自体に手首を具体的にどう動かすという意味はありません。そのため、コックやヒンジを定義付けする際、人によって内容が異なる場合があります。
この記事ではコックやヒンジについてあえて定義付けを行わず、スイングにおける手首の動作全般を表す言葉とします。
コックを使うメリットについて紹介する前に、なぜゴルフのスイングにおいて正しく手首を使う必要があるのか解説しておきましょう。
ゴルフのスイングの目的は、ボールを遠くに、正確に、狙った通りに飛ばすことです。そのためには、使用するクラブを上手に振って、効率良くパワーをボールに伝える必要があります。このクラブを上手に振る上で重要な役割を果たすのが手首です。
この原理を理解するには、トンカチを使った釘打ちをイメージするといいでしょう。
手首を柔らかく使うことで、スムーズにトンカチのヘッドを動き、テコの原理で効率良く釘を板に打ち込んでいくことができます。ゴルフのスイングはいわば、ヨコに刺さった釘をトンカチで打つような動作になりますから、尚更、手首を柔らかく使って、テコの原理でヘッドを加速させるように振ることで、効率良く、安定してボールを飛ばすことができるのです。
コックを正しく使えるようになると、ダウンスイングでヘッドが走るようになり、ヘッドスピードが早くなります。ヘッドスピードが上がれば、ボール初速も上がりますので、物理的に飛距離を伸ばすことが可能になるのです。
また、ダウンスイングでフェースを適正な角度でキープできるようもなりますので、打ち出されるボールの球質も良くなります。
もし、スピン量が増えすぎて吹け上がっていたり、逆にボールが上がり切らずに飛距離をロスしているゴルファーなら、正しいコックを身につけることで、確実に飛距離アップできるはずです。
手首のコックが使えることで、切り返しのタメ、そしてそこからのリリースによってヘッドが強烈に走るわけですが、これはヘッドスピードだけでなく、フェース向きにも明らかな変化をもたらします。
ゴルフのクラブは、シャフト軸より後方にヘッドの重心があるのですが、コックを使って、ヘッドを走らせるように振ることで、重心が目標方向に回転してくれます。つまり、インパクト前後でしっかりフェースがターンしてくれるようになるので、つかまったボールが打ちやすくなるのです。
手首は正しく使うことで、ヘッドを加速させ、ボールを真っすぐ、遠くに飛ばすことができます。一方で、誤った使い方をしてしまうと、ボールは左右にバラけてしまいます。そのため、手首のコックは使わないほうがいいという不要論も存在します。手首をロックするように「ノーコック」で打つことで、スイング中のフェース向きが変わりにくくなり、方向性が高まるという考え方です。
この考えを実践している選手の代表が、米国のブライソン・デシャンボーです。デシャンボーはアドレスで両腕をピンと伸ばし、その形を変えずに体の捻転だけでボールを打っていきます。通常、このようなスイングではテコの原理が使えず、ヘッドが走らないので、コックを使ったスイングよりも飛距離が落ちる傾向にあります。しかし、デシャンボーは、全身に巨大な筋肉の鎧をまとうことで回転力を極限まで高めて、ノーコックのスイングでも圧倒的な飛距離を叩き出しています。
まさにゴルフの常識を覆す規格外の選手ですが、これはかなり特殊な例です。一般的な体力のゴルファーが効率良くボールを飛ばすことを考えたら、手首のコックを正しく使うのが早道ですので、コック不要論は参考程度に覚えておくといいでしょう。
クラブを効率良く振るための手首使い、正しいコックはどうすれば身につくのでしょう。ここでは、正しいコックを身に付けるために取り組んでほしい練習法などを解説していきます。
正しくコックを使うためにまず大事になるのはグリップの握り方です。両手の指に引っかけるようにして握るフィンガーグリップを採用することで、手首を動かしやすくなります。手のヒラで握るパームグリップだと手首がロックされやすく、スムーズなコックができなくなるので注意しましょう。
また、グリップ圧はなるべく抑えて、ソフトに握ることも大切です。フィンガーグリップでクラブを握り、少しヘッドを持ち上げてブラブラさせ、重みを感じられるような力感で握れるのが理想です。
スイング中の手首には動かしていい方向とそうでない方向があります。正しい使い方は2つ。クラブを持ち上げるように手首を親指側に曲げる橈屈(とうくつ)と、シャフトを軸にフェースを閉じる動きである左手の掌屈(しょうくつ)です。
この2つの動きを理解するには、グリップを握り、ヘッドを胸の高さまで上げて、手首を動かしてみるといいでしょう。これはドリルとしても最適で、特に左手の掌屈を覚えるのにおすすめです。左前腕から左手の甲までが一直線になるように動かすと、フェースが反時計回りに動いて閉じるのが分かるはずです。
極端な言い方になりますが、この2つ以外の手首の動かし方をすると、ミスショットにつながります。左手を甲側に追って背屈させると、フェースは時計回りに動いて開きますから、このままインパクトすればスライスのミスになります。また、親指が前を向くように手首が伸びるとヘッドが下がりますので、すくい打ちになってダフリやトップが出てしまいます。
スイング中に手首のコックを作るタイミングは、プロゴルファーであっても人それぞれ違います。始動直後から手首を動かす「アーリーコック」の人もいれば、バックスイングの後半から手首を動かす「レイトコック」の人もいます。
どちらが正解とは一概には言えませんが、これから正しいコックを覚えようというゴルファーにはレイトコックをおすすめしたいです。なぜならアーリーコックで早めに手首を動かすとクラブが体の正面から外れて手打ちになりやすいからです。
まず手首は何もせず、体の回転でクラブを腰の高さまで上げます。そこから手首を親指側に折るようにしてクラブを持ち上げていきます。このとき、ヒジが曲がらないように注意しながら手首をコックさせることが大切です。しっかりとクラブを体の正面でキープしたまま、理想的なコックの形でトップを作れるはずです。
もしスライスに悩んでいたり、より強いボールを打ちたい場合は、手首を親指側に折るだけでなく、左手首を甲側に折る掌屈の動きも入れるといいでしょう。フェースが閉じた、いわゆるシャットなトップが作れて、つかまったボールが打ちやすくなります。
バックスイングで手首を正しく使い、理想的なコックが作れたら、後はいかにタイミング良くリリースできるかがポイントになります。基本的にバックスイングの手首の動きが整えば、それだけでダウンスイングの動きも良くなりますが、いくつかのポイントに注意することで、強いタメを作り、より理想的なリリースが可能になります。
よくダウンスイングのタメを作るためにギリギリまで手首の形をキープ…というレッスンがありますが、これは腕の力みを誘発し、スムーズなリリースを妨げる可能性があり、お勧めできません。
大事なのは手首を使って力をかける方向です。切り返しではグリップエンドを外側、目標方向とは反対に動くように引っ張ることが大切です。この動きと下半身リードの動きが組み合わさることで手と足の引っ張り合いが生まれ、プロのような強いタメができるのです。
バックスイング、切り返しで作り上げた手首のコックを最高の形でリリースするためには、クラブを振り抜く方向を意識しましょう。具体的には手元を体の近くでキープしたまま、インに振り抜くことで、ギリギリまでタメをキープしたまま下ろして、ボールを強く叩くことができます。
インに振り抜くには、ダウンスイングでグリップエンドを左太モモに引きつけるように意識するといいでしょう。理想的なハンドファーストのインパクトを作ることにもつながりますので、コックが使える前と比べたら、飛距離が明らかに変わってくるはずです。
ここまでゴルフのスイングにおける手首のコックの重要性や身に付け方について解説してきました。さまざまな方向に動く手首は、クラブをコントロールする上で非常に重要なパーツです。上手く使えるようになると、ゴルフのスキルが大きくレベルアップしますので、上達を目指すゴルファーの方にはぜひ身に付けてほしい技術となっています。
ぜひこの記事を参考に正しい手首のコックの習得を目指してください。