「ミヤネ屋」視聴率バトルで「ゴゴスマ」に敗北。かつて主流だった“攻めのMC”は時代遅れなのか

番組公式ホームページより

「ミヤネ屋」視聴率バトルで「ゴゴスマ」に敗北。かつて主流だった“攻めのMC”は時代遅れなのか

10月3日(木) 8:48

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2024年上半期、視聴率バトルに異変

午後2時台から3時台の情報番組の視聴率争いにおいて、2008年からトップの座に君臨してきた日本テレビ系『 情報ライブ ミヤネ屋 』(平日午後1時55分~同3時50分 以下、ミヤネ屋)が、今年度上半期はTBS系『 ゴゴスマ~GOGO!Smile!~ 』(同1時55分~同3時49分 以下、ゴゴスマ)に敗れた。

4月1日から9月30日までの個人視聴率を平均すると、 宮根誠司氏(61) がMCの『ミヤネ屋』は2.48%、 石井亮次氏(47) がMCの『ゴゴスマ』は2.51%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。『ミヤネ屋』の苦戦は昨年からテレビパーソンの間で話題になっていたが、いよいよ顕在化した。

どうして逆転劇は起きたのか。扱っているネタは両番組とも政治、事件、エンターテインメント情報、トレンド情報、生活情報が中心で、大きく違わない。ずっとそうだ。

たとえば10月2日の『ミヤネ屋』の主なネタは「暑さ復活!東京10月に真夏日か」「中国結婚事情に“異変”現地中継」など。

一方の『ゴゴスマ』がこの日、扱ったのは「宮崎空港で爆発、何が起きた?現場は今?」「ダブル台風最新進路」「紀州のドン・ファン元妻裁判覚醒剤密売人が重要証言!?」など。

なお、『ミヤネ屋』も宮崎空港の爆発を伝え、『ゴゴスマ』も暑さを報じている。

ゲスト含めて押しの強いキャスティング

ネタに大差がなく、これまで通りなのに、視聴率の逆転劇が起きたのだから、その理由は番組のスタイルにあるのかも知れない。両番組のスタイルも変わっていないが、視聴者が求めるものが変化した可能性がある。

まず『ミヤネ屋』は全体的に攻めのスタンス。進行形式は宮根氏のワンマンショーに近い。あらかじめ宮根氏が自分の見解を披露し、そのうえでコメンテーターに意見を求める。コメンテーターも 梅沢富美男(73) ガタルカナル・タカ(67) アンミカ(52) ら押しの強い印象の人が目立つ。

ご意見番の読売テレビ解説委員長・ 高岡達之氏(59) も歯に衣着せぬ物言いが特徴。5月、当時の 蓮舫参院議員(56) が東京都知事選への出馬会見を行い、自民党批判が中心の内容になると「夢を語っていない」と冷評した。

5月、靖国神社(東京)に中国籍の男が落書きなどをしたことが発覚すると、「内閣を挙げて抗議してもよい」。憤るのは分かるが、現在は一宗教法人の靖国神社の問題に内閣を動かしてもいいと主張するのはどうなのだろう。

高岡氏は広告代理店、週刊誌が選ぶ嫌いなコメンテーターで上位なのだという。発言の中心が解説ではなく、自分の意見だからではないか。意見には反感が付きまとう。

韓国での屋外喫煙で批判にさらされた宮根氏

『ミヤネ屋』のキーパーソンである宮根氏はどうなのかというと、今年は逆風にさらされた。

3月20日、宮根氏は大谷翔平選手が出場したMLB開幕戦「ドジャース-パドレス」を取材するため、韓国入りした。その際、ソウルの屋外喫煙禁止区域内で電子たばこを吸ってしまった。

この姿がカメラに収められ、X(旧ツイッター)に投稿された。それを韓国有力紙『朝鮮日報』のオンライン版なども伝えたため、批判の声が高まった。

くしくも視聴率が首位から滑り落ちた今年上半期が始まる直前のことだった。お気に入りのMCがやっている情報番組を観る視聴者は多いとされるから、宮根氏には痛かった。

宮根氏は翌21日放送の冒頭で謝罪する。

「これから取材姿勢をあらため、初心に戻って頑張りますので、あらためてよろしくお願い致します。どうも申し訳ありませんでした」(宮根氏)

ところが、これで一件落着とはならず、SNS上の批判は一向に止まなかった。宮根氏は普段から反感を買っていたようだ。お笑いタレントの 有吉弘行(50) からはラジオ番組で「めっちゃダサかった」と、からかわれた。

攻める姿勢、かつては主流だったけど

普段、強気の姿勢で不正などを追求する宮根氏のようなタイプのMCは、自分の不祥事の際はリカバリィが難しい。視聴者の間で「いつも他人のことを責めておいて、自分は何だ」といった感情が起きやすいからだ。

そもそも、番組の持ち味が、時代と逸れてきているのではないかとの見方もある。『ミヤネ屋』が東京に進出した2008年当時は攻める姿勢の情報・報道番組が主流だった。テレビ朝日 『朝まで生テレビ! 』(BS朝日に移行)、同『 サンデープロジェクト 』(2010年終了)などである。『ミヤネ屋』もそうだった。

しかし今ではソフトな内容の情報・報道番組が主流になっている。硬派調だったテレ朝『 報道ステーション 』(平日午後9時54分)も今では政治より先に大谷翔平選手の話題を取り上げる。また、MCの大半はスタジオ内の調和を図るタイプになった。ゲストを挑発したり、コメンテーターと舌戦を繰り広げたりするようなMCはほぼ消えた。

言い切らないMCに軍配が上がるワケ

一方で『ゴゴスマ』には時代のほうから近づいてきたのか。ずっとソフト路線だったが、それが災いしたらしく、関東に進出した直後の2015年10月4日には0.9%という記録的な低世帯視聴率を記録した。それが9年で常勝『ミヤネ屋』を破るまでになった。

石井氏のMCの特徴は何事も言い切らないところだろう。また、なるべくコメンテーターにマイクを渡しているようだ。コメンテーター同士の舌戦はなく、語気を強めて語る人もいない。

情報・報道番組の流れが変わり始めたのは2010年ごろから。社会の動きに連動する形でテレビに求める人権意識が高まり、番組のコンプライアンス化も進んだからだ。

たとえば、凶悪犯の肉親であろうが、不意にマイクを向けたら視聴者の反感を買う。芸能人への直撃取材も人権侵害になりかねない。ゴミ屋敷の主を責め立てるような報道も難しくなった。

大差はついていないが…

ゴミ屋敷を指導するのは行政の役割であり、犯罪の容疑のない時点でゴミ屋敷の家主を情報・報道番組が干渉するのは筋違いなのだ。ここ10年ほどで情報・報道番組は随分と変わっている。今後、ますますソフト化が進むだろう。

『ミヤネ屋』は首位を奪還するためにスタイルを軌道修正するのか。ただし、視聴率で大負けしているわけではないので、動きにくいはず。思い切ったリニューアルをするなら、大負けしているときのほうがやりやすいのだ。

一部で宮根氏の降板が伝えられているが、現実的な話ではない。そのような声は日本テレビや他局から一切聞こえてこない。そもそも、まだ61歳なのだ。フジテレビ『とくだね!』のMCだった 小倉智昭氏(77) は73歳までやった。

『ミヤネ屋』と『ゴゴスマ』の戦いは依然として続くだろう。

<文/高堀冬彦>

【高堀冬彦】
放送コラムニスト/ジャーナリスト1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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