投資に感心はあるものの、乱高下する日経平均株価のニュースなどを見て、尻込みしている人は多いだろう。以前、「株価暴落」にビビって投資を始められない人こそ“大損するリスク”が高い理由を資産運用の専門家である鳥海翔氏に解説してもらったが、知識がないまま始めると、買ってはいけない投資信託を勧められる可能性もある。
まずは投資の王道を理解する
「初心者にとって資産運用に難しいテクニックはありません。どれだけ多くの金額を投資できるか。どれだけ長く時間をとれるか。この2つでほぼ勝負が決まります」と語る鳥海氏。彼は、YouTubeチャンネル「鳥海翔の騙されない金融学」で、資産運用や保険、社会保障制度など、お金に関する解説を行っている金融学のプロ。ほかにも家計改善・資産運用のコンサルティングも手掛けている。
「この王道を知っていれば、相場の暴落に左右されずに新NISAの積立投資を続けるのがベストだと分かるはず。冷静に考えれば、年利5%や8%で資産が徐々に増えていくことはすごいのに、なかには『自分にあったもっといい投資があるのではないか』と、白馬の王子さまのような投資先を信じている人がいる。こんな人が騙されやすいと思います」
とはいえ、最近は詐欺の手口も巧妙化しており、リテラシーが高くても見抜くのは難しいそうだ。
「有名人をかたるSNS型投資詐欺が話題になりましたが、サイトが作り込まれている巧妙なものもありました。これなら信じてしまうのもおかしくないなと思いましたが、先述した通り、資産の長期運用が投資の王道です。短期間でリターンが得られるものなんてありません。王道でないものは、疑ったほうがいい」
投資の専門家に丸腰で相談するのはNG
投資を始めるにあたって、専門家の意見を参考にしたいと考える人もいるだろう。だが、鳥海氏は「丸腰で相談してはダメ」と指摘する。
「金融機関に務めている人は、ちゃんとしているというイメージがあると思います。だからこそ、おかしな投資信託は勧めてこないだろうと考えがちですが、そもそも金融機関も営利企業です。社員の目的は、顧客の資産を最大化することではなく、会社の利益を最大化させることなので、会社にとって都合のいい商品を勧めてくると考えるのが自然です。
専門家に相談するのが決して悪いわけではありませんが、相談するなら、『インデックス投資をしようと考えています。米国株のインデックスで、手数料が一番安いのはどれですか?』といったように、質問はシャープにすべき。カモにされないためにも、間違っても『オススメは何ですか?』と質問してはいけません」
勧められたときに注意すべき5つの投資信託
鳥海氏よると、「金融機関は、会社に利益が出ないインデックスファンドではなく、利益の出るアクティブファンドを勧めてくることが多い」という。特に注意が必要なのは、下記の5つの投資信託だ。
①新規設定のファンド②テーマ型ファンド③毎月分配型のファンド④アクティブ型の債券ファンド⑤手数料の高いファンド「新しく設定・運用された新規設定のファンドは、過去の実績がないんで、伸びるかどうか誰にもわからないのがネック。独自の選定基準だと、本当にその通りになるかどうかなんてわかりません。新規設定ファンドに投資するなら、S&P500などのインデックスに投資したほうが再現性は高くなります。
また、テーマに沿った銘柄に投資を行うテーマ型ファンドは、できたころにはピークが過ぎていて長期投資に向きません。いままでは伸びてきたかもしれませんが、今後も同様に伸びるかというと、そうでないものが多い。半導体のような例外もありますが、これからも絶対に伸びると判断できないのでやめたほうがいい」
お得感のあるファンドも注意すべき
では、1か月ごとに決算が行われ、分配金を毎月支払う方針の毎月分配型のファンドや、債券を中心に運用される債券ファンドのアクティブ型がダメな理由とは?
「毎月分配型のファンドは安心感がありますが、複利効果(運用で得た利益を再び投資することで、利益が利益を生み資産が増える効果のこと)が得にくいうえに、長期運用に向いていません。さらに、悪いものだとファンド自体の資産を取り崩しながら、加入者に分配金を払っているタコ足型のファンドもあります。
アクティブ型の債券ファンドは、自分から資産が増えないと言っているようなもの。というのも、アクティブ型は総じて手数料が高いのに、債券ファンドはローリスク・ローリターンのものが多いので、時間をかけても思うように増えません。
アクティブ型のように、手数料が高いファンドにも注意すべきですが、高い手数料を支払う価値があるかどうかをちゃんと見極めるべき。たとえば、手数料が安くても3%しか増えないファンドと、手数料が高くても差し引き6%増えるファンドなら、後者に投資したほうがいいでしょう」
【初めての投資で失敗しない3か条】・投資は長期運用が王道であることを知る
・投資の専門家に丸腰で相談しない
・特に注意すべき投資信託を理解する
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