若手トップ棋士同士の激突!
JT杯覇者(前回優勝者)と2024年2月29日時点の日本将棋連盟公式戦タイトルホルダー(竜王・名人・王位・王座・棋王・叡王・王将・棋聖)および2023年賞金ランキング上位の棋士12名が出場できる「将棋日本シリーズJTプロ公式戦」(以下、JTプロ公式戦)。9月21日に行われた2回戦第4局の北海道大会で、藤井聡太JT杯覇者と佐々木大地七段の対局が行われた。
藤井の通算成績は380勝76敗(勝率0.833、対局前)、佐々木は304勝136敗(勝率0.691)。両者の対戦成績は藤井の9勝4敗で、昨年はタイトル戦で2度顔を合わせている。まさにトップ棋士同士の対決となった。
「子どもたちの前でプロの迫力を」
対局場所はJR札幌駅から車で15分ほどの距離にある「札幌コンベンションセンター」。藤井はJTプロ公式戦前々大会の2回戦第4局、羽生善治九段戦も同地で対局して勝利している。当時は竜王・王位・叡王・王将・棋聖の五冠を保持。そのまま勝ち進んでJTプロ公式戦を初優勝、昨年も優勝して連覇を達成。今期は史上2人目の3連覇をかけた戦いとなる。
対局開始前にコメントを求められた両者。藤井聡太JT杯覇者は「ご来場の皆さまに最後まで楽しんでいただけるよう、全力を尽くしたい」と短いながら気合いの入ったコメント。佐々木大地七段は「皆さまの前で指せる特別な環境は、棋士冥利に尽きる。過去に子ども大会に出場し、プロの迫力に憧れを抱きました。今度はわたしがその魅力を伝える番。将棋の指し手で子どもたちに魅力を伝えていきたい」と、同時に開催されているテーブルマークこども大会への思いを口にした。
終盤の“激しい攻め合い”が好き
持ち時間10分で持ち時間を使い切ったら一手30秒未満、考慮時間1分×5回の超早指しで行われる本棋戦。振り駒の結果、藤井の先手に決まった。
過去の両者の対局では、相掛かりが8局、角換わりが3局、横歩取りが2局。対局前日のインタビューで、好きな戦法や作戦について訊かれた藤井は「角換わりが好きです。終盤、激しい攻め合いになりやすい戦型ですが、私自身、そういう戦いが好きなので好んで指しています」と語ったが、本局はその角換わりとなった。序盤の研究に余念がない両者、ほとんどノータイムで指し手が進み、形勢互角のまま両者が持ち時間を使い切り、終盤戦へと進んだ。
「考えすぎずに決断よく」
将棋で最もエキサイティングなのは終盤だ。特に持ち時間の短い対局の場合、観ているほうの胸も高鳴るような指し手の応酬が延々と繰り広げられる。
「自分は決断が悪いタイプなので、『考えすぎずに決断よく』ということは早指しの対局では特に意識してます。その一方で急所の局面では立ち止まって読みを入れるというのは大事だと考えています」と対局前日に藤井が語るとおり、秒読みに追われながらもジッと盤上を見つめながら読みを入れている姿は迫力たっぷりだ。対して佐々木七段も闘志十分。「心理的なプレッシャーに打ち勝つことが大事だと考えてます。玉が詰む詰まないという局面で弱気な手を指すことで、ズルズルいってしまうことは避けたいです」と、運の要素が少ない完全情報ゲームの将棋において、心理戦の重要度を口にしていたことが印象的だった。
両者の好手がぶつかり合うギリギリの終盤戦の末、129手で藤井が勝利。
投了図129手目▲4二銀不成まで
局後の両者のコメントは以下のとおり。
藤井JT杯覇者「最初はこちらから攻めて飛車を取る展開になった。中盤は苦しいと感じるところもあったが、粘り強く指せたと思います」
佐々木七段「序盤はこちらが注文をつけて相手に動いてもらう将棋だった。しかし、ビシビシ指されて『この変化もカバーされているのか』と封じ手のあたりはガッカリしていた。中終盤はチャンスがありそうで、もう少し指しようがあったかもしれない」
勝った藤井の次戦は11月2日(土)に行われる準決勝第二局・東海大会での広瀬章人九段戦。3連覇なるか、次戦も目が離せない。
文/日刊SPA!取材班写真提供/将棋日本シリーズ総合事務局
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