2024年のメジャーリーグはレギュラーシーズンが終了。ドジャース大谷翔平の神がかり的な活躍はもちろん、カブスのルーキー今永昇太の快刀乱麻の投球や、チームメート鈴木誠也の安定感あふれる打棒に心躍らせた日本のファンも多かっただろう。
間髪入れず、現地1日(日本時間2日)には早くもポストシーズンが開幕する。両リーグから6チームずつ、合計12チームが世界一の座をかけて約1か月に及ぶ最後の戦いを繰り広げる。
改めて大谷の今季成績を振り返っておくと、
54本塁打&130打点は文句なしのリーグ2冠。シーズン終盤の猛追で首位打者の座も狙えるところまで来ていたが、こちらは惜しくもリーグ2位に終わった。
ただ、ドジャース1年目の大谷がナ・リーグでは自身初、エンゼルス時代も含めると2年連続3度目のMVPを受賞することはほぼ間違いないだろう。
「ジャッジは大谷より優れたシーズンを送った」というポストが話題に
そんな大谷と“メジャーリーグのMVPは誰か”という論争で盛り上がっているのが、ア・リーグのMVP最有力候補、ヤンキースの主砲アーロン・ジャッジである。
ジャッジは8月下旬から9月中旬にかけて、やや調子を落としたものの、最終的に
58本塁打&144打点の成績を残し、大谷と同じ本塁打王と打点王の2冠を獲得した。打率は大谷を上回る.322をマークしたが、こちらはリーグ3位。それでもシーズン終盤まで三冠王を狙える位置にいた。
そんなジャッジに対して、ブロガーを名乗る某ヤンキースファンが自身のXに投稿したのが
「アーロン・ジャッジは大谷翔平より優れたシーズンを送った。一件落着」というポストである。2人の主要打撃成績15項目を並べ、11項目で大谷を上回ったジャッジに軍配を上げたのだが、これが多くの野球ファンを巻き込む論争となったようだ。
同ポストで上がった15項目のうち、大谷がジャッジを上回ったのは、打席数、得点数、三振率、盗塁数の4項目。他の長打率やOPSなど、スラッガーに求められる項目ではジャッジの圧勝だったことが分かる内容となっている。
ただ二塁打や三塁打、塁打数といった大谷が上回っている幾つかの項目は含まれておらず、同ポストに対しては、「恣意的だ」という反論も寄せられていた。
過去にDH専任の選手がMVPを受賞した例はなし
ジャッジ擁護派の意見で多かったのは、「ジャッジはシーズンを通じて外野の要センターを守っていた。大谷は指名打者(DH)専任だった」という声だ。
メジャーリーグの長い歴史において、DH専任の選手がMVPを受賞した例はなく、アンチ大谷ファンにとって格好のネタとなっている。実際に今季の大谷はトミー・ジョン手術明けで、登板の機会はおろか、守備に就く機会は一度もなかった。どれだけ素晴らしい打撃成績を残しても、守備での貢献度がゼロだった事実を重く見るファンは一定数いるようだ。
ただ大谷擁護派からは、「確かに2人の打撃成績だけを並べるとジャッジが優れているとは思うが、大谷は史上初めて50-50を達成した。ユニークで記憶に残るのは大谷の方だろう」という意見が出るなど、ジャッジ派と大谷派、両方の意見が乱れ飛ぶ事態となっている。
ナ・リーグMVP論争は終止符を打たれたはずだったが…
そんな中、大谷で確定的とみられていた“ナ・リーグMVP争い”にもまだ火種がくすぶっていたようだ。
ヤンキースと同じニューヨークに本拠地を置くメッツのファンから飛び出したのが、
フランシスコ・リンドーアの名前である。
リンドーアといえば、三拍子そろったリーグ屈指の遊撃手で、強烈なリーダーシップを発揮してチームを率いてきた。シーズン終盤までは大谷とMVPを争う存在だったが、9月半ばに腰を痛めて、約10試合を欠場。その間に大谷の打棒が大爆発し、両者のMVP論争には終止符が打たれていた、はずだったのだが……。
ナ・リーグのMVP論争が再燃したワケ
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ナ・リーグのMVP論争が再燃したのはレギュラーシーズン最終日。ハリケーンの影響で延期されていたメッツとブレーブスのダブルヘッダーが行われたが、その1試合目にリンドーアが魅せた。
ブレーブスが1点をリードして迎えた土壇場の9回表、リンドーアが打席に立つと、値千金の2ランを放ち、メッツが逆転。その裏の反撃をしのいで、チームを2年ぶりのポストシーズン進出に導いたのだ。
開幕前は、地区3位がやっとという低評価を受けていたメッツ。ポストシーズンに辿り着いたのは、リンドーアの存在が大きかったのは間違いない。
そして、リンドーアが最後の最後に残した爪痕も確かにインパクト十分。「ナ・リーグのMVP論争が再燃した」というメッツファンの言い分にも一理あるだろう。
ニューヨークのファンの雑音をかき消すことはできるか
ただ、リンドーアと大谷の打撃成績を比較すると、大谷が圧倒していることは火を見るより明らか。リンドーアのリーダーシップや守備での貢献度を加味しても、大谷のMVPは確実視されている。
すでにMVP投票は締め切られているとはいえ、全米で最も熱狂的といわれているニューヨークのファンの雑音をかき消すためには、大谷がポストシーズンで大活躍をするしかなさそう。できることなら、リーグ優勝決定シリーズでメッツと、ワールドシリーズでヤンキースと対戦し、直接対決で白黒をつけてもらいたいところだ。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。
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