『仮面ライダーガッチャード』で、本号表紙の松本麗世が演じる九堂りんねが変身した仮面ライダーマジェードのスーツアクターを担当。
スタント歴17年。特撮ファンから高い人気を誇る
下園愛弓
がグラビアに登場。稽古場やプライベートに密着し、知られざる仮面の奥の素顔に迫る。
仮面ライダーマジェード錬金術師の少女・九堂りんねが、アルケミスドライバーでユニコンとザ・サンをガッチャンコして変身した姿。必殺技は華麗なキック連打「サンユニコーンノヴァ」©2023石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
■キャリア17年にして初めて仮面ライダーに変身
「仮面ライダーにはなれないと思っていたので、お話をいただいたときは本当にうれしかったです。特撮の現場でまた新たな夢を見させてもらえるんだって。スゴくワクワクしました」
そう語るのは、8月末に最終回を迎えた『仮面ライダーガッチャード』で、2号ライダーである仮面ライダーマジェードを熱演したスーツアクターの下園愛弓。2007年、『獣拳(じゅうけん)戦隊ゲキレンジャー』の吹き替え(女優が素面<すめん>でアクションを演じる際のスタント)で特撮デビューを果たし、2016年、『動物戦隊ジュウオウジャー』のジュウオウタイガーで初レギュラーに抜擢(ばってき)される。
以後、スーパー戦隊シリーズを中心にスーツアクターとして変身後のヒロインを演じてきた彼女だが、意外にもライダーシリーズに深く関わることはなかった。しかし令和になり、女性が変身する仮面ライダーが増え、キャリア17年にして初めて仮面ライダーを演じる機会に恵まれたのだ。
「スーパー戦隊に比べて仮面ライダーは全身が硬くゴツゴツしているんです。初めて装着したとき、可動域が狭くて驚きました。マジェードは冷静沈着なキャラクターですが、とはいえ控えめなリアクションだと動きが伝わらない。オーバーに動いてもキャラがブレてしまうので、あんばいが難しかったです。
それに、チームで戦うスーパー戦隊と違って、仮面ライダーは基本的に個人戦。ピンチになっても誰かが助けに来てくれるわけじゃない。常に、いち戦闘シーンの主役という意識を持ってアクションに取り組んでいました。今までにないくらい、ずーっと戦っていましたよ、ホントに(笑)」
常に主役という意識で戦闘シーンのアクションに取り組む
■スーツアクターを目指したその理由とは?1984年、鹿児島に生まれた下園。幼少期から器械体操を習うなど体を動かすことが大好きで、中・高校時代は体育祭でアクロバットを披露し全校生徒を沸かせたこともあったという。
「テーマパークのショーなど人前でパフォーマンスをする仕事に漠然と憧れ、高校2年生のとき、デパートや遊園地のショーでアルバイトを始めました。当時放送されていたスーパー戦隊のキャラクターとしてステージに立ち子供たちの前でアクションを披露すると、ワーッと歓声が上がるんです。とてもやりがいを感じました。次第に『ホンモノになりたい』と思い始めたのが、本格的にスーツアクターを目指したきっかけです」
マット運動でアップトレーニング。逆立ちからの前回り、後ろ回り、受け身を軽々こなしていく
4人一組で殺陣芝居の練習。スマホで動画を撮影しながら、映像の中での見え方を研究する
高校卒業後、知り合いの先輩を頼りに上阪。アクション界トップクラスの芸能事務所「ジャパンアクションエンタープライズ(JAE)」所属を目指し、約3年間、和歌山の遊園地でショーに出続け上京資金をためた。そして2006年21歳の頃、上京と同時にJAEに入所した。
「最初の1年間は養成部に所属し、JAEファクトリーという稽古場で毎日のように授業を受け、殺陣やスタントの基礎を学びました。いわゆる体育会系の集まりで、上下関係はめちゃくちゃ厳しかったです。朝、先輩に会ったら、バッグを置いて自分から大きな声で挨拶しないと怒られるんです。ぶっちゃけ、かなりスパルタな環境でした。でも、辞めたいとは一度も思わなかったです。こう見えて高所恐怖症で、10mの高さから飛び降りるスタントにはいまだに苦手意識があるんですけど、軽々と跳んでいく先輩たちの背中を見ているとビビってなんかいられなかったというか。自分にだけは負けたくなかったんですよね」
JAE専用のクーラーボックス。人数分のドリンクを詰めて撮影現場に持っていくのは、代々新人の務めなんだとか
今回の取材では、実際にJAEファクトリーで行なわれている稽古にも密着させてもらった。基本的には養成部や養成部を卒業したばかりの若手が練習する場所として開放されているため、下園も久々に訪れたという。
この日の講師は、現在放送中の『爆上(ばくあげ)戦隊ブンブンジャー』や『仮面ライダーガヴ』にも出演しているベテランスーツアクターの今井靖彦氏。マットやトランポリンを用いて、お芝居を意識したアクションを4時間みっちり指導。下園も積極的に若手に話しかけ、身振り手振りを交えアドバイス。
「派手な動きで魅せる意識も大事ですが、アクションを通してお芝居をしなきゃ"スーツアクター"の意味がない。戦う理由は?殴られる意味は?たとえ台本がなくても、練習のときから状況や背景を考えて動かないと現場では通用しない。逆に言えば、アクションで役の気持ちを表現できる人が殺陣の中で主役になれるんです」
わんぱくなビー♂(左)と、おっとりなヴェル♀(右)。休日は愛犬2匹と過ごす時間が癒やしだそう
■親子ほど年の離れたヒロインと二人三脚で特撮の現場におけるスーツアクターの役割は、変身後のお芝居やアクションにとどまらない。変身前を演じる若手俳優と二人三脚での役作りも求められるのだ。
「変身前を演じる俳優さんとのコミュニケーションは絶対に欠かせません。ふたりでひとつの役を演じるのは、そう簡単じゃないですからね。お芝居に関する話はもちろん、好きな食べ物や趣味などいろんな話をして少しでも仲良くなれるよう心がけています。たまに恋バナで盛り上がっちゃって、つい過激なトークに走りそうになることもあるけど(笑)。いずれにせよ、気軽に話せる関係性が理想ですね」
右も左もわからぬまま現場に参加している若手俳優たちにとって、気兼ねなく接してくれる下園は頼れるお姉さん的な存在でもあるのだろう。『仮面ライダーガッチャード』でタッグを組んだ松本麗世は現在16歳。下園とは親子ほど年が離れているが、彼女との関係はどうだったのか?
「麗世ちゃんは、とにかくアフレコが上手。マジェードの戦闘シーンは私が演じているわけですけど、麗世ちゃんのアフレコが私のアクションをカッコよくしてくれたと言っても過言じゃないです。しかも回を重ねるごとに声の芝居が上達していく。あまりの成長ぶりに、撮影終盤は思わず涙が出そうになりましたよ」
夢を追うヒロインの成長を見守るのもまた、スーツアクターの務めなのかもしれない。そうして初の仮面ライダーを終えたわけだが、次に抱く夢は?
「昔のスーパー戦隊シリーズでおなじみのセクシーな悪の女幹部をやってみたいです。素面でカメラの前に立つのも、セクシーな格好をするのも恥ずかしいけど......私、いつもヒーローなので(笑)」
(スタイリング/上野 珠ヘア&メイク/杏奈取材協力/まくらあさみ)
●下園愛弓Ayumi SHIMOZONO
1984年1月6日生まれ鹿児島県出身 身長158㎝
○2021年放送『機界戦隊ゼンカイジャー』のマジーヌ、2022年放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』のオニシスターなどスーパー戦隊シリーズを中心にスーツアクターとして活動中。2023年放送『仮面ライダーガッチャード』の仮面ライダーマジェードで、初めて仮面ライダーを演じた
撮影/桑島智輝©2023石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
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