9月27日(金) 7:00
住宅生産団体連合会(以下、住団連)の「2023年度戸建注文住宅の顧客実態調査」の結果が報告された。近年は建築費の高騰が指摘されているが、影響はあったのだろうか? IT化の進展やコロナ禍を経て、住まいに求めるものも変わりつつあるが、どんな点に表れているのだろうか?
【今週の住活トピック】
「2023年度戸建注文住宅の顧客実態調査」結果を報告/(一社)住宅生産団体連合会
この調査は、三大都市圏と地方都市圏において、2023年度中に住団連の住宅メーカーと契約した人が対象で、調査票は各社の営業担当者が記入している。2023年度の今回は、第24回目となる。
まず、注文住宅を建てた人の平均像を見ていこう。世帯主年齢の平均は40.2歳(対昨年度0.4歳低)で、平均世帯人数は3.01人(対昨年度0.06人減)、平均世帯年収は1148万円(対昨年度80万円増)。ここ数年は、世帯人数が減り続け、世帯年収が増え続ける傾向が見られる。
次に、建てた注文住宅の平均像を見ていこう。
建築費は4566万円(対昨年度342万円増)建築費の1m2単価は37.0万円(対昨年度2.8万円増)土地代を含む住宅取得費は6681万円(対昨年度311万円増)延べ床面積は123.5m2(対昨年度0.1m2減)自己資金は2047万円(対昨年度132万円増)借入額は5859万円(対昨年度386万円増)※借入のある世帯のみ借入金の年収倍率5.10倍(対昨年度0.02ポイント減)※土地の取得方法は、従前の敷地(建て替え)26.7%、新たに購入(50.8%)などがある。
ちなみに、「住宅の階数」は「2階建て」が81.3%と主流だが、「平屋建て」が13.7%(対昨年度2.4ポイント増)と、増加傾向にある。
建築費・住宅取得費の上昇に対して、最も多い対応は「住宅面積の縮小」さて、平均値を昨年度と比べてみると、建築費や住宅取得費の上昇が著しい。それに応じるように、借入額や自己資金が増えている。なお、世帯年収が増加しているので、借入額の年収倍率は大きくは上がっていない。
こうした「住宅取得に関する物価高や資材高の影響」をどう感じていたのだろう?「資金計画にかなり圧迫感があった」が65.1%と最も高く、「資金計画に少し圧迫感があった」の17.3%を加えた、82.4%が資金計画に圧迫感を感じていたことが分かった。
それに対する対応については、最多が「住宅面積を縮小した」(50.2%)で、順に「希望する住宅のグレードを下げた。採用をあきらめた」(42.3%)、「住宅の基本性能の向上をあきらめた」(21.2%)、「家具や家電製品の購入を控えた」(15.7%)となった。
延べ床面積の平均値は対昨年度で0.1平方メートルしか縮小していないが、借入額を増やすだけにとどまらず、面積を小さくしたり、グレードを下げたりして建築費を抑えるといった動きもかなりあったことが分かる。
住環境の重視項目に変化の兆し。約6割がZEHを検討
次に、住宅について重視した点を見ていこう。
「住宅購入を検討する上で特に重視した点」では、「住宅の間取り」(62.4%)、「地震時の住宅の安全性」(50.0%)、「住宅の広さ」(37.6%)、「住宅の断熱性や気密性」(34.9%)が上位に挙がったが、傾向は昨年度と同様だ。
一方、「新たに土地を購入(借地も含む)した人が住環境の面で特に重視した点」では、「通勤、通学などの利便」(35.8%)や「敷地の広さや日当たりなど空間のゆとり」(31.7%)などが上位に挙がった。ただし、これらは年々重視度が下がっている。逆に、年々上がっている項目を見ると、「治安・犯罪が発生しにくい環境」(24.8%)、「災害時の避難のしやすさ」(22.4%)など。
日当たりや利便性といった以前から重視されていた項目の重視度が薄れ、治安や災害時の避難など、犯罪の凶悪化や災害の甚大化を踏まえた項目が以前より重視されるようになってきたことがうかがえる。
次に、ZEH(net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略)についての回答を見よう。「ZEH検討の有無」については、「ZEHにした」割合は42.4%でかなり高く、「検討は行ったがZEHにしなかった」が17.8%、「検討しなかった」が29.2%だった。
ZEHにした、あるいは検討した人に、申請や検討したZEHの種類を聞いた結果を見ると、「ZEH」が 32.1%と最も高く、以下、「ZEH+」(26.6%)、「Nearly ZEH」(22.9%)、「ZEH Oriented」(7.1%)、「Nearly ZEH+」(5.9%)、「次世代ZEH+」(3.7%)、「LCCM住宅」(1.7%)、の順となった。
これを見ると、ZEHといっても多くの種類があることが分かる。とはいえ、その違いが分からないという人も多いことだろう。なぜ、これほど細かく分かれているのかというと、それは補助金の種類や額が異なるからだ。
一戸建てのZEH補助金は、上の資料の通りで、基本は、「ZEH」か「ZEH+」かに分かれる。ただし、ここでいう「ZEH」は、いわゆるnet Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)かどうかではなく、一定の基準を満たすものとなる。
専門的になると一般の方には分かりづらいので、簡単に言うと、(1)建物の断熱性能が基準を満たす(=断熱と呼ぶ)、(2)住宅で使う給湯器や照明などの一次エネルギー消費量が基準値よりどれだけ低いか(=省エネと呼ぶ)、(3)太陽光発電などの再生可能エネルギーをどれほど生み出すか(=創エネと呼ぶ)の組み合わせで決まる。
●ZEH(ゼッチ)
「断熱」を満たし、「省エネ」で基準より20%以上削減、「創エネ」を含む場合は基準より100%以上削減。
●ZEH +(ゼッチ プラス)
「断熱」を満たし、「省エネ」で基準より25%以上削減、「創エネ」を含む場合は基準より100%以上削減。これに加えて、断熱性能をさらに引き上げたり、HEMSを搭載してエネルギーを制御したり、電気自動車を活用したりすることなどの条件をいくつか満たす。
ZEHとZEH+ を前提に、太陽光発電などによる創エネが難しい立地などについては、一部を緩和して別の種類を設けている。
●Nearly ZEH(ニアリー ゼッチ)
寒冷地で降雪日が多いなど日当たりが期待できず、太陽光発電などが十分に働かない場合に適用され、「創エネ」を含む場合が基準より75%以上100%未満に緩和される。
●ZEH Oriented(ゼッチ オリエンテッド)
都心部で小さな土地に3階建てを建てる場合など屋根が小さくて、太陽光発電設備を多く搭載できない場合に適用され、太陽光発電などが未設置でもよいとされる。
「次世代ZEH+」は、ZEH+よりもさらに創エネ性が高いものだが、補助金については2023年11月10日に募集が終わっている。また、国土交通省の補助金の対象となる「LCCM住宅」は、ライフ・サイクル・カーボン・マイナスの略で、脱炭素化を図った住宅のこと。建設時、運用時、廃棄時で省CO2に取り組み、さらに創エネで、住宅建設時のCO2排出量も含めライフサイクルを通じてCO2の収支をマイナスにする住宅だ。
補助金に対応して多くの種類のZEHがあるわけだが、調査結果を見ると、申請から受理されて補助金利用が決定するまで「1~2ヶ月未満」が 43.3%と長くかかる場合が多い。全体の工期に影響することもあるうえ、補助金は毎年予算をつけて実施しているので、その年の予算に達したら申請の受付が終了することもある。いずれにしても、早めに施工会社に相談したい。
さて、注文住宅の最大のメリットは、建て主が住宅の性能や間取り、設備を選べることだ。しかし、調査結果で浮かび上がったように、費用面による制約も生じる。近年のように建築費が上昇していると、優先順位をつけて選ぶことがなおさら重要になる。
●関連サイト
(一社)住宅生産団体連合会「2023年度戸建注文住宅の顧客実態調査」
「2024年の経済産業省と環境省のZEH補助金について」パンフレット
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