取材・文:ミクニシオリ
撮影:洞澤佐智子
編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部
「世界中の月経の“不平等”をなくしたい!」
そんな思いで大王製紙株式会社に就職した、一人の女性がいます。新卒で入社してからずっと生理用品に関わり続けてきた出野結香さんは、現在フェミニンケアのブランドマーケターとして、生理用品ブランド「elis(エリス)」をはじめとする商品企画やプロモーションなどを担当しています。
生理用品と女性の身体、毎日の心身の健康に向き合い続けてきた彼女のキャリアはまさに「フェムキャリ」。彼女自身の生理用品へのこだわりや想いも聞きながら、フェミニンケア分野で目指す今後のキャリア形成についてもお伺いしました。
■生理用品に興味を持ったきっかけは学生時代の講義
はじめに、出野さんのこれまでのご経歴について教えてください。
2015年に大王製紙に入社し、3年半は営業職として、生理用品に限らず当社の様々な商品の商談に参加しました。入社当初から「生理用品に関わりたい」と言い続けていたこともあり、ブランドマーケティング部に異動してからは「elis(エリス)」ブランドの「エリスショーツ」や「クリニクス(CLINICS)」などのブランドマーケティングを総括しています。
ちなみに、生理用品に興味を持ったのは何かきっかけがあったんですか?
大学は国際地域学部出身なのですが、1年生の時にアフリカの生理事情について講義を受けたんです。日本では当たり前にどこでもナプキンが買えるけれど、アフリカでは衛生的な生理用品が手に入らない地域もあると知りました。
日本で暮らしていると、なかなか考える機会のない話ですね。
そうですよね。私は生理について大きな悩みを持ったことがなかったのですが、気になって色々調べてみたら、国によっては生理中の女性を避けるような文化も残っていることを知ったんです。それってなんだか、不平等だなと思って。
文化の違いなどもあるのかもしれませんが、私も驚いてしまいました。
今の日本もかなり、生理用品の種類が増えていますよね。でも裏を返せば、正しい知識がないと自分に合うものを選べないということでもあると思うんです。もっと言えば、日本以外の国の人々も、知識があれば今と違う選択ができるかもしれない。知識や文化の違いで生まれてしまう生理の不平等をなくしたいなと思って、まずは生理用品について詳しく学ぶために大王製紙への入社を決めました。
そうした経緯があったんですね。でも確かに、日本でも生理用品の選び方が分からない人は多そうです。
ナプキンにタンポン、月経カップや月経ディスク、吸水ショーツ……経血量やその人の環境次第でも合うものは変わりますが、まずは使ってみないと分からないことも多いですよね。生理用品の種類が多くなっていますが、これまでのデータを見ていると、
今はまだ紙ナプキンを使っている人が大半
なんですよ。
新しい生理用品を取り入れるのって、ちょっと勇気がいりますよね。
そうですね。使い方があまり知らない商品は使うのに勇気が必要ですよね。選択肢が増えているのはいいことですが、紙の生理用ナプキンは持ち運びがラクで使い捨てができるので、衛生的だと思います。
吸水ショーツをつけていてもやっぱり心配な日もあるし、紙ナプキンって手放せないですよね。
そうしたお声も多いので、当社では紙ナプキンの新商品開発に力を入れています。昨年発売した「エリスショーツ」はショーツ型の生理用ナプキンになっていて、外回りなどでなかなかトイレに行けない日や、量が多い日に在宅勤務をする時など、私も重宝しています。
紙ナプキンにも新商品が出ているんですね。カラーがブラックなのもいいですね!
外側がブラックなので、経血の色も気にならないし、ショーツのような感覚で履けるのに使い捨てで衛生的なんです(経血を吸収する部分は白色)。
■フェミニンケアブランドマーケターの「生理用品選び」
出野さんは日々のお仕事の中で、何をしている時間が長いんですか?
今はデータ解析に特化した働き方をしているので、調査データとにらめっこしている時間と、社内会議に出ている時間が長いです。
調査データを見ていると、どんな気づきがありますか?
意外にも生理に関して、お悩みが曖昧な方が多いように感じますね。例えば経血量や生理の重さって、なかなか他人と比べられないので、自分で判断しづらいじゃないですか。なので生理用品選びも、皆さん「なんとなく」で選んでいる部分も多いようなんです。
言われてみるとそうかも……学生の頃、最初に手に取ったものを使い続けている人も多そうです。
だからこそ、好みで選ばれていたりもするんですよ。厚みがある方が安心だという方もいれば、薄くて快適なものの方がお好きだという方もいます。ただ、ルーティンで使ってきたものを変えるのが怖いという方も一定数いるので、いいものを作ってもなかなか届かないことがあるのも、難しいポイントですね。
出野さん自身は、どのように生理用品を選んでいるんですか?
私はこの仕事をしていることもあって、複数の生理用品を使い分けています。例えば、1日目は意外と経血量が少ないので、摩擦があってもいいようにエリスの「素肌のきもち」を使います。保湿成分を配合したシートが、かゆみが起きづらくてお気に入りです。
肌に優しい素材も、最近かなり増えてきましたよね。
多い日の日中は「コンパクトガード」ですね。薄いけど吸収量が多いので、座りっぱなしの会議でも快適です。会議時間が長くて心配な時や、終わりがけで意外と経血量が少ない時は「エリスショーツ」が便利です。色々そろえているのでトイレの収納はかさばりますが、選択肢が多いと安心だし、生理の時も気分が下がりにくいですよ。
お話を聞くと、せっかく簡単に手に入るのだから、生理週間を快適に過ごすためにも色々と使い分けてみたくなりますね。
慣れていくと本当に必要なものが分かると思うので、一度色んな商品を手に取ってみてほしいです。日本ではまだまだ、女性同士でも生理の話題を口にしづらい雰囲気もあると思いますが、ぜひ気心知れた友人や家族とは、使い心地などをシェアし合って欲しいです。
大王製紙さんはやっぱり、社内でも生理の話はしやすいんですか?
うちは少し特殊なのかもしれませんが、男性社員の前でも生理の話はしやすいですし、生理休暇もあります。ちなみに男女ともに産休育休の取得率もかなり高くて、女性のライフステージにも寄り添ってくれていると感じます。
めちゃめちゃいい会社ですね……!
出社や在宅勤務の頻度も調整できますし、社内の人はいい人ばかりだと思っているので、かなり働きやすいと感じています。メーカーだということもあり、チームで働くことも多いですが、積極性と優しさを兼ね備える社員が多いですね。
■アラサーならではの悩みも。それでも想いは変わらない
出野さんは今後も、フェミニンケアブランドに関わりながらのキャリア形成を考えているのでしょうか。
会社の意向もあるので難しいところですが、私個人としては今後も生理用品に関わり続けていきたいと思っています。4年ほど前から、一番関わってみたかった生理支援分野も担当しています。
生理支援についても詳しくお話をお伺いしてもいいですか?
「ハートサポート」というプロジェクトなのですが、日本の中学生とアフリカの女の子が一緒に生理について考える授業を行ったり、アフリカに寄付する布ナプキンの製作プロジェクトを運営したりしています。このプロジェクトをきっかけに、いつかはもっとグローバルに、生理支援活動をしていけたらという思いもあります。
とてもすてきな活動ですね……! では、今後のキャリアをどのように考えていますか?
これまで関わってきた業務を生かし、生理のある方の役に立つようなことをさらに極めていきたいですね。ただ、一人の女性としては、次のライフステージに進む適齢期を迎えつつあるので、色々と悩んでいます。出産かキャリアか、とは思っていませんが、何か一歩を踏み出すにはタイミングも大切なので、しっかりと考えていきたいと思っています。
とても分かります。キャリアに力を入れたい年代と、妊娠・出産の適齢期が被りやすいのが、女性の人生設計の難しいところですよね……。
でも学生の頃から思い描いていた「世界中の月経の“不平等”をなくしたい」という思いは変わりません。生理のある方の毎日が少しでも明るくなるような生理用品を生み出せるよう、今後のキャリアを築いていきたいです。
自身のライフステージにも向き合いながら、仕事とプライベートの両立を楽しめるよう、これからも頑張ります!
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