2024年に生誕130年を迎えるフランス映画の巨匠ジャン・ルノワール監督の「コルドリエ博士の遺言」「捕えられた伍長」の4Kレストア版を「ルノワール“新しい波”」と銘打ち、11月1日から、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下で1週間限定上映される。あわせて、ポスタービジュアル、予告編(https://youtu.be/aUz2Q8pGQk4)、場面写真、三宅唱からのコメントが披露された。
印象派の高名な画家オーギュストを父に持ち、その偉大な芸術家の遺伝子を受け継ぎながら、映画芸術の可能性を高め続けてきた20世紀を代表する巨匠ジャン・ルノワール。自由と生命を高らかに謳い、そして同時に人間や世界の裏の側面を容赦なく暴き出し、官能的なまでに艶やかな映像美と圧倒的なエネルギーに満ち溢れた唯一無二の映像世界を作り上げてきた不世出の映画作家だ。
フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、ロベルト・ロッセリーニ、ルキノ・ビスコンティ、ロバート・アルトマン、ダニエル・シュミット、ウェス・アンダーソン、濱口竜介ら、あまたの映画作家たちに影響を与えた。今回の特集で上映される「コルドリエ博士の遺言」「捕えられた伍長」は、ルノワールの後期の作品で、これまで日本ではあまり機会のなかった2作だ。
「コルドリエ博士の遺言」は、「ジキル博士とハイド氏」をルノワール流に大胆に翻案した作品で、当時、新たなメディアとして登場したテレビ向けの企画として製作され、従来の映画とは違った演劇や舞台のスタイルを取り入れている。複数のカメラで同時に撮影する「マルチプルカメラ」の手法が採用され、ルノワールは俳優をカメラから解放しようと試みる。これにより俳優たちはカメラに向けて演技をするのではなく、自分のリズムとペースで演技をすることが可能となった。撮影前には入念なリハーサルが繰り返され、舞台演劇のように綿密な打ち合わせが行われた。ルノワールは50年代中盤から舞台演出も手がけており、「芝居でやった仕事から生まれた実験映画である」と本作について語っている。主演はマルセル・カルネの「天井棧敷の人々」(45)のジャン=ルイ・バロー。
「捕えられた伍長」は、名作「大いなる幻影」の変奏ともいうべき傑作喜劇で、何度失敗しても果敢に捕虜収容所からの脱走を試みる伍長の姿を通して、生きる歓びと素晴らしさを描いたルノワールの遺作だ。ルノワールは「敗れた者の精神についての映画を作りたかった。『大いなる幻影』はその反対に勝者の映画だった。先の大戦は私たちに一つのことを教えてくれた。そこには敗者しかないということである」と語っている。出演は「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」(72)のジャン=ピエール・カッセルと「はなればなれに」(64)のクロード・ブラッスール。
11月1日よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて1週間限定上映。
▼三宅唱コメント
「捕えられた伍長」の空はどうにも晴れそうにない。ばかばかしくなるほどすべてがうまくいかない。間違いだらけの世界に抗って、しつこく何度も、こっそり逃げる。ジャン・ルノワールの映画はあまりにも真剣で、あまりにも楽しい。いったいなんのために、どのようにして? まずは一度、そしてしつこく何度でも!
【作品情報】
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捕えられた伍長
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