レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏
記憶の扉のドアボーイ・
山下メロ
です。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
さて、平成レトロの話題でよく登場するのがMDです。カセットテープに代わる録音メディアとして、90年代初頭に登場し、徐々に普及しました。すでにCDが音楽ソフトの主流になっていたので、CDより小さく持ち運びやすいことが求められていたのです。
レコード会社によるアーティスト楽曲の録音済みMDも一部発売されましたが、基本は何も録音されていない空のMDにCD音源をダビング、もしくはラジオ音源などを録音します。そのためカセットテープのカセットレーベルのように曲やアーティスト名など録音した内容を書く必要がありました。
MDにはトラックに文字情報を持たせる機能もありますが、これを確認するにはプレイヤーで表示する必要があり手間でした。事前に再生したい楽曲がわかるよう、曲目を書いたインデックスシールをMDケースに貼るのが一般的だったのです。
MD表面に貼るタイトル用のシール
収録曲名を書く用のMDケースに貼る大きなインデックスシール
MDの底面に貼るタイトル用の極細シール
インデックスシールを貼ったケースとMD内の音源を一致させるためには、MD本体にもタイトルを書く必要があります。ただし、コンパクトさを重視したMDは、シールを貼れるスペースが限られています。そして、MDの表面だけでなく、上から見てタイトルシールが探せるよう底面にもシールを貼る必要がありました。
しかし、底面の記入ゾーンは、とても幅が狭く文字を書き込むのは至難の業。筆者は個人的に〝平成の米粒写経〟と呼んでいます。人生で一番小さい文字を書く機会だったかもしれません。
そんな米粒写経の強い味方が〝平成の極細筆〟〝平成の写経筆〟と呼びたい1994年発売のパイロットのゲルインキボールペン「ハイテックC」。
超激細なのにかすれにくく安定して書け、これでタイトルを書いていました。あまりに大変だからか、PCで小さい文字列を作成しプリンターでシールに印刷できるMDラベル用紙も発売されました。今こそ、久しぶりに米粒写経をしてみませんか?
PCで小さい文字を並べたデザインを作成してプリンターで印刷できるMDラベルが登場。MDを開発した企業としての責任感からなのかSONY製が多い。難所である極細の底面タイトルシールのみに特化した商品も発売された
撮影/榊 智朗
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