夏の甲子園で注目を集めた好投手たちをレジェンド・山本昌が解説 最も印象に残った選手は?

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夏の甲子園で注目を集めた好投手たちをレジェンド・山本昌が解説 最も印象に残った選手は?

9月3日(火) 7:00

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山本昌スカウティングレポート2024年夏(後編)

NPBで32年間の現役生活を送り、通算219勝を挙げたレジェンド・山本昌氏(元中日)が甲子園大会で輝きを放った投手を徹底分析。後編は今夏の甲子園で注目を集めた新星や来年のドラフト候補として期待がかかる2年生投手を見てもらった。

山本昌スカウティングレポート2024年夏前編はこちら>>

福井大会からすべてリリーフで登板した北陸の竹田海士photo by Ohtomo Yoshiyuki

福井大会からすべてリリーフで登板した北陸の竹田海士photo by Ohtomo Yoshiyuki



竹田海士(北陸/177cm・76kg/右投右打)

縦の角度を持った、将来楽しみな右投手だと感じました。リリースポイントが高く、右腕を上から強く叩けるので縦変化が鋭く曲がります。とくに空振りを奪えるフォークの落差はすばらしかったです。ステップ時に体は立ちぎみですが、ホームベース方向へ真っすぐ移動ができています。また、コンパクトなテイクバックのため、打者はタイミングがとりにくいはずです。球速的にはまだ驚くような数字ではなく、全国的に騒がれていませんが、こういう投手こそ将来大化けするのかもしれません。

この夏の愛媛大会で公式戦デビューを果たした聖カタリナ学園の有馬惠叶photo by Ohtomo Yoshiyuki

この夏の愛媛大会で公式戦デビューを果たした聖カタリナ学園の有馬惠叶photo by Ohtomo Yoshiyuki



有馬惠叶(聖カタリナ学園/190cm・78kg/右投右打)

本格的な実戦経験は今夏からと聞きましたが、こんな新星が登場するのだから高校野球は面白いですね。まだまだ線は細いし、粗削りですが、素材は楽しみです。甲子園で最速を3キロも更新したストレートは、投げっぷりがよく、球質も優れています。一塁牽制のターンが速いなど、細かな部分にも努力の跡が見えます。あとは試合を経験するなかで、実戦向きのフォームをつくっていけるかどうか。左肩の移動距離を少しでも伸ばし、変化球で腕の振りが緩まなくなれば楽しみです。いずれはアドゥワ誠くん(広島)のような投手になるかもしれません。

最速154キロを誇る健大高崎の石垣元気photo by Ohtomo Yoshiyuki

最速154キロを誇る健大高崎の石垣元気photo by Ohtomo Yoshiyuki



石垣元気(健大高崎2年/178cm・75kg/右投両打)

今大会は2年生の好投手も目立ちました。石垣くんは2年生にして150キロ台のボールをコンスタントに投げられるという、空恐ろしい投手ですね。高校2年生とは思えないほど体つきがたくましく、順調にいけばドラフト1位は堅いでしょう。あわただしいアクションで球筋がバラけるところもありますが、もう少し左足に体重を乗せて間(ま)をつくれると球筋が安定しそうです。同期左腕の佐藤龍月くんが左ヒジ手術をして彼への負担も増しそうですが、投球の幅を広げるチャンスと思って前向きに取り組んでもらいたいです。

2回戦の小松大谷戦に先発した大阪桐蔭・森陽樹photo by Ohtomo Yoshiyuki

2回戦の小松大谷戦に先発した大阪桐蔭・森陽樹photo by Ohtomo Yoshiyuki



森陽樹(大阪桐蔭2年/189cm・83kg/右投左打)

見るからに体が大きく、とてつもない馬力を持った剛腕ですね。高校2年生にして、これだけ体に力がある投手は珍しいです。ボールにも力がありますし、伸びしろもたっぷりあります。僕は基本的に本人の投げやすさを最優先すべきだと考えていますが、森くんのフォームを見ていて気になるのは右腕を直線的に使う点です。テイクバックで右腕を真っすぐ伸ばすようにして、頭から離れた位置でトップをつくっています。もし右腕で円を描くようにテイクバックをとって、体の近くでトップをつくれたら、今まで以上に腕の振りがスムーズになりそうです。いずれにしても、とんでもない投手に成長する可能性を感じます。

中学時代から評判の東海大相模・福田拓翔photo by Ohtomo Yoshiyuki

中学時代から評判の東海大相模・福田拓翔photo by Ohtomo Yoshiyuki



福田拓翔(東海大相模2年/184cm・78kg/右投右打)

私の母校である日大藤沢が昨秋の神奈川大会で抑えられたこともあって、福田くんのことはいち早く気にしていました。中学時代(明石ボーイズ)から評判の投手ですし、腕の振りも鋭いと感じていました。今後もっとよくなるためのポイントは、腕を振るタイミングを安定させられるかどうか。今は右腕が上がりきる前に投げ急いでしまい、シュート回転が強くなる傾向があります。もうワンテンポ我慢して、右腕が上がりきってから叩けるようになると安定感が増してきそうです。変化球もよりキレが出てくるでしょう。

今大会24イニング自責点0で優勝の立役者となった京都国際・西村一毅photo by Ohtomo Yoshiyuki

今大会24イニング自責点0で優勝の立役者となった京都国際・西村一毅photo by Ohtomo Yoshiyuki



西村一毅(京都国際2年/175cm・66kg/左投左打)

今大会24イニング自責点0で優勝に大きく貢献した2年生左腕ですが、とにかくすばらしいピッチングでした。バランスのいいフォームでいつでもストライクをとれるコントロールがある。そして何より、この投手の代名詞はチェンジアップ。あれだけ腕を振ってチェンジアップを投げられる投手は、全国にもそうはいません。西村くんのように回転をかけないタイプのチェンジアップで、ここまでコントロールがつけられるのは稀でしょう。エースの中崎琉生くんのいい影響を受けているのだろうな、と感じる部分もありました。たとえば、右打者のインコースに角度よく決まる球筋。まだ細身で球速は130キロ台中盤ですが、140キロを超えてくると攻略困難な投手になるはずです。

低反発バットが導入されて時間が経ち、打者のスイングは春よりも鋭くなってきました。今回紹介した投手たちは、そんな背景があるなかで好投している点に価値があります。また、上位進出しているチームは必ずふたり以上の好投手が揃っていました。複数の好投手を育成する指導者の方々には頭が下がりますし、もはやひとりの大エースで勝ち上がる時代ではなくなったのだなと再確認しました。今回甲子園に出られなかった投手のなかにも、きっと楽しみな好素材がたくさんいたのでしょうね。

今回分析させてもらったなかでとくに印象に残ったのは、興南の田崎くんです。スケール感、フォームのバランス、球のキレとすべてに驚かされました。これからも成長した姿を見せてもらいたいですね。

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