M-1チャンピオンでありながら、これまで数々のやらかしをしてきた迷える40歳、ウエストランドの河本太が、さまざまな先輩・仲間に人生相談を受けに行く不定期連載「人生相談する側チャンピオン」。
爆笑問題の太田光さん、田中裕二さんを迎えた最終回は、目立ちたいけど何もできないという切実な悩みを聞いていただきます。
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人生相談④
「本当は面白い人なんじゃないかと期待されることがありますが、本当に何もありません。どうしたらいいですか?」(東京都・河本太・40歳)
――前回、太田さんの根本には「目立ちたい」という気持ちがあるけど、それが世間とズレているという話がありましたけど、河本さんにも「目立ちたい」っていう気持ちはあるんですよね。
河本
そう、それだけはあるんです。でも技術もないし理論もないし、それをやっても面白くなるかどうかも分からなくて、ただズレてるだけなんですよね。だからやらかしちゃったりするんでしょうね。
田中
でもやらかしたのは面白いと思ってやったわけじゃないでしょ?(笑)
河本
もちろん面白いと思ってやったわけではないですけど、これくらいなら問題にならないだろうっていう甘い考えがあったんだと思います。ただ、こんなんだから中には「河本には何かある」って期待してくださる人もいて、面白がってこうやって話す機会をもらえたりもするんですけど、本当に何もなくて大抵ガッカリされるんです。佐久間(宣行)さんとか、加地(倫三)さんとかに。
一同
(笑)
河本
あれだけしゃべる人、面白い人がたくさんいる第一線で、これだけしゃべらないヤツが相方にくっついて出てくると珍しいから、「なんだコイツは?」って食いついてくれる人もいるんですよ。でも、いざスポットを当てたら本当に何にもできねえヤツじゃんっていう。それで大体みんな悲しい顔して去っていくんです。きっと週プレNEWSもそうですよ。
太田
企画倒れだね(笑)。ヤバいよこの企画。
――そんなことないです!(笑)「テレビの話」で太田さんが河本さんのことを「誰も(能力を)活かせられない人間だからな」って話していて、そういう人こそきっと面白いと思ったんです。
太田
面白いところを引き出せるもんなら引き出してやってくださいよ(笑)。前に「情熱大陸」の600回記念で、俺の回と田中の回が別々に放送されるっていうことで、それぞれにスタッフが別班で密着するって言うんですよ。で、俺は「絶対やめたほうがいい」って言ったの。だって田中は本当に何もない男だから。その時のスタッフも、今みたいに「いや、そんなことはないですよ!」って言ったんです。
で、田中に1週間密着したら、その班のスタッフが俺のところに来て「太田さんどうしましょう。田中さんって本当に何もないです。草野球しかやらないんですけど、ピンマイクつけるのも嫌だって言われて、もうどうしていいのかわかんない」と。「だから言ったじゃん!」って話ですよ。
でもさ、それがオンエアされたらコイツのほうが視聴率1%上だったんだよ!あの時は許せなかったよね!
一同
(爆笑)
■「じゃない方芸人」について
――田中さんがそうだという意味ではないんですけど、「じゃない方芸人」っていう言葉があるじゃないですか。相方にすごく強烈な個性がある場合って、そうじゃないほうの相方ってどう振る舞うのが正解なんですか?
例えば、オードリーの若林さんとかハライチの岩井さんも、ブレイク当初は「じゃない方芸人」だったと思うんですが、後から才能が注目されたじゃないですか。河本さんももしかしたらそうなんじゃないかなと思っていて。
太田・田中
違う違う違う!(笑)
田中
オードリーは若林がネタを作っていて、ネタの見せ方として春日のキモさを前面に押し出したわけでしょ。
太田
春日のアレをコントロールしてるのが若林なわけだからね。
田中
岩井も、澤部が何でも柔軟に返せる天才的な頭脳を持ってるからこそ、無茶苦茶なフリをして追い込ませるっていう、いわば策士なわけだよね。ふたりとも相方を目立つようにしてるから最初は「じゃない方」に見えるかもしれないけど、もともとの実力がめちゃくちゃある。
でもウエストランドはそういうコントロールも井口がやってて、河本のことをどうやって活かそうかいまだに井口は悩んでる。そこが全然違うよね。
太田
でもさ、さっきの「情熱大陸」の話じゃないけど、芸人っていうのはそういう何もないヤツのほうが持ってく可能性がある世界なんだよね。河本のほうが井口より持ってく可能性も十分残ってる。もしそうだとしたら、その時の井口の顔を見てみたいね!どんだけ悔しい顔をするか!
田中
そうなったら井口は本当に悔しいだろうけど、「何もしてない河本のほうが売れた!」ってそれすらもネタにできるじゃない。喜々としてそのネタばっかり言うようになる。
河本
いや、アイツは本気で腹立つんだと思いますよ。だってアイツは本当に自己顕示欲の塊ですから。ネタもありますけど...。
太田
だからね、意外と大衆っていうのはこっちの思い通りにいかないことも多くて、こういうどうしようもないヤツのほうを見たいっていう可能性もあるんだよ。お前がもう一皮剥けて、それが世間に認識された時、お前のほうが井口より好感度が高くなる可能性は全然あるし、下手すりゃ数字持ってる可能性だってある。今の段階ではまだ分かんないからね。普通のトーク番組とかで、うるさい井口よりコイツのほうが馴染むとか、ひょんなきっかけでハマることってあるから。
田中
番組の何かの企画にバッチリ合うってことはあるからね。ロッチの中岡なんて、どう考えても最初はロッチの「じゃない方」だったけど、「イッテQ!」に出会って、いま中岡のほうが知名度は逆転してるじゃない。
太田
そうなんだよ。アイツのどこが面白いんだって思うけどね(笑)。
河本
面白いですよ!
田中
あんなにコンビ内で知名度が逆転するなんて思わないもん。オードリーもそうだし。だから何かがひとつハマってガラッと変わるっていうことはあるんだよ。
河本
でも、そういう人たちも最低限はエピソードトークとかができる人じゃないですか。僕は何をやってもちょうどできないところに落ち着くんですよ。これだけ親しくさせていただいてる爆笑問題さんのYouTubeに出ても中途半端なことしかできなくて。
太田
まあね。でもそれは人を笑わせるっていう意味においてはでしょ。違うんだよ。視聴者は「この人何にもできないし全然笑わせないけど、なんとなく好感が持てるな」とか、そういう人を求めることがあるんだよ。それがなぜかは俺にも分からないけどね。
河本
じゃあ、そんなに悩まなくてもいいんですかね。
太田
俺だって「これからこの芸能界でどうしたらいいんだろう」みたいな戦略的なことは考えたことないし、考える必要ないと思うけどね。あとは北方(謙三)さんのとこに行けよ。「ソープに行け!」って言われるから。
一同
(笑)
――今後も河本さんにはいろんな人のところへ人生相談に行ってもらおうと思うんですけど、爆笑問題のおふたりから「あの人のところへ行ったほうがいい」っていう推薦があれば教えてください。
太田
まず北方さんのところへ行ったほうがいい。
田中
それより、さっき名前の出た佐久間さんや加地さんのところへ行ったら何て言うか気になるけどね。
河本
ああ、実際に使っていただく立場の人に相談に行くのか。いいですね。ガチのダメ出しをされたら立ち直れなくなるかもしれないですけど。候補に入れておきます。
太田
(ボソッと)長期連載になるといいな......。
河本
そんなこと思ってないでしょ!
爆笑問題からの回答④
「何もないヤツのほうが世間にハマる可能性はある!『これからどうしよう』なんて悩む必要はない!」
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■河本太(こうもとふとし)
タイタン所属。1984年1月25日生まれ。岡山県津山市出身。2008年に同級生の井口浩之とウエストランドを結成。M-1グランプリ2022チャンピオン。リフォーム会社に勤めていた経験から電気工事、配管工事が得意。趣味は登山、キャンプ。
■爆笑問題(ばくしょうもんだい)
タイタン所属。ともに1965年生まれの太田光、田中裕二が日大芸術学部で知り合い1988年に結成。数多くのテレビ・ラジオ番組のレギュラーや執筆活動を抱えながらも、隔月開催される「タイタンライブ」では新ネタで出演している。
取材・文/酒井優考撮影/山添 太
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