【写真】ミステリアスな雰囲気の大海将一郎
ミュージカル「薄桜鬼 真改」、舞台「魔法使いの約束」などの人気作に出演している大海将一郎。声優、俳優として幅広いジャンルで活躍している彼に、役者としての自身の話やプライベートのこと、そして今後の展望についてなど広く語ってもらった。
■洋画と山寺宏一への憧れから芸能界への道に
――まずは芸能界に興味を持ったきっかけから教えてください。
日常的にテレビで映画が流れているような家で育ったのですが、吹き替えの映画を見て声優という仕事を知ったんです。そこから声優になるためにはどうすればいいのかと、いろいろと調べ始めました。
中でも大好きな映画の一つの「マスク」(1994年)で、ジム・キャリーさん演じる主人公の吹き替えを担当していたのが山寺宏一さんだったことが大きくて。山寺さんは声のお仕事だけではなく「おはスタ」(テレ東)のようなバラエティー番組でも活躍されていて、そんな山寺さんへの憧れも声優に憧れる気持ちをさらに強くしたと感じています。
――デビュー作は、2016年に上演された舞台「アルカナ・ファミリア Valentino」ですね。
声優の養成所に通っていたときにオーディションの話をいただきました。養成所では声の仕事についての授業だけではなく、舞台についての授業もありましたし、芝居の経験を積めるならやってみたいと思ってオーディションを受けることにしたんです。
お客さんの前で芝居をするのも初めてでしたし、ダンスや歌もあって、無我夢中でした。周囲の人に支えてもらってなんとか乗り切ったという記憶しかなくて。ただ、それが苦しかった、嫌だったという気持ちは一切なかったんです。楽しいと思えて、しっかりとやりがいを感じることもできた。それが今につながっているんだと思います。
――その後、さまざまな作品に出演して経験値を積んできた今、どんなところに仕事のやりがいを感じていますか?
単純に、“僕自身がお芝居を好きだ”というところに尽きるかなと。俳優という道を選ぶとき、どうなるか分からない仕事だし、正直迷うこともありました。それでも芝居をやってみたかったんですよね。そんなふうに憧れていた仕事に就けている今が、とても楽しくて仕方がないんです。
■ポジティブ思考と仕事への熱意
――現在は声優業、俳優業と幅広く活躍されていますね。
僕としては、声優業、俳優業という区別をつけているつもりはないんです。吹き替えの仕事に興味を持ったことがきっかけではありましたが、たくさんの舞台に出演させていただき、いろいろな仕事をやっていく中で、声優、俳優という枠組みを作ってしまうのはもったいないなと思うようになりました。とくに今は俳優が声優をやることもあるし、逆もしかり。だから芝居に通ずる仕事であるなら、なんでもやらせていただきたいなと思っています。
――成長を感じた出来事やターニングポイントとなった作品があれば教えてください。
2.5次元作品は芝居だけではなく歌やダンスがあることが多いので、最初は「どの作品にもダンスがあるじゃん!」と心の中で泣いていました(笑)。B-PROJECT on STAGE「OVER the WAVE!」や「Hi!Superb」というアイドルグループでは、特に難しいダンスをやらなければいけなくて、当時は本当に焦っていました。でも、たくさん練習をして乗り切ることができたときに、これから先どんなに大変な作品に出合っても「あのとき乗り越えたし」と思うことができると思ったんです。
――大変な経験を経て自信がついたんですね。
苦しかったり大変だったりしたからこそ、その経験が自信になったのかなと。それこそ、7月に上演した舞台「夏空のモノローグ」は、過去イチでせりふ量が多かったんです。稽古期間が少し短めだったこともあって、本当に覚えられるかなとずっと不安でしたが、とてもすてきな作品になったと感じていて。この作品もまた、これからの僕を支えてくれる作品の一つだと思っています。
――お話を聞いていて、何事もポジティブに考えている印象を受けたのですが、物事は前向きに考えるタイプですか?
そうですね。あまり本気で落ち込んだりということもないですし、何よりも「乗り越えた自分、えらいね」と思っちゃうんです。誰も褒めてくれないから自分で自分を褒めてあげています(笑)。
――もともとのポジティブな性格に加えて、強い思いで目指した仕事をやっているからこそ、すべてが楽しく感じるというのもあるかもしれないですね。
俳優は先が見えない仕事ですし、本当にいろいろなものを求められる業界だと思うんです。年齢を重ねてきて、俳優を辞めて違う道に進む人も周りにいる中で、それでも続けているのは、やっぱりこの仕事が好きだという思いが強いからだと思います。
■稽古場で「いじってもらうのはありがたい(笑)」
――稽古場などお仕事の現場ではどのような立ち位置にいることが多いですか?
あまり社交的なタイプではないので、基本的には静かにしています。でも、知り合いがいる現場だと、いじられていることが多いですね。自分がちょっと変わり者だということは理解しているので、いじってもらうことで僕を知らない人に向けて「僕はこういう人間なんだよ」というのをわかりやすくアピールできるから、ありがたいなと思っています(笑)。
――共演者の方々からは、どのような印象を持たれていると感じますか?
舞台「魔法使いの約束」で共演している山田ジェームス武さんからは、「集中しているとすごく気難しそうな人に見える」と言われました。だから、そう見えないようにジェーさんが僕をいじって空気を和ませてくれるんです。ジェーさんは座組のお兄ちゃんのようなポジションで、常に周りを見渡している人。そのいじりがきっかけで話し掛けてくれる人もいたのですごく感謝しています。
――自身のことを変わり者だという自覚もあるとのことですが、具体的にどういう時にそう思うのでしょう。
思ったことをすぐやりたくなっちゃうんですよ。例えば、まったくクラブには行かないのに、格好いいと思ったという理由だけで、DJの人が使うターンテーブルを買いました。そうやって形から入るタイプなんですよね。
あとは趣味でゲームを作っていて、そのためにプログラミングの勉強をしています。自分だけが登場するゲームを作って、それをファンの方にプレイしてほしいなと。ああしたい、こうしたいといろいろなアイディアが浮かんでくるんです。
――今回の撮影では、趣味で集めているという自前のカメラも小道具として使っていただきました。
なにか作品作りをしたいなと思って買ったんですけど、今では単純にカメラが好きになってカメラばっかり買っています。共通の話題になりやすいので、カメラや写真が好きな俳優さんと仲よくなることもありますね。
■役者人生の中での大きな決断の理由
――8月末に現在の事務所を退所されて、9月からは新しい環境での活動となりますね。
10年近くお世話になった事務所なので、正直とても悩みました。でも、僕は世間知らずな部分があるので、そういう意味でも、環境を変えて新しい場所で挑戦してみたいと思ったんです。大きな決断でしたが、何事も実際にやってみないと分からないだろうと思っているので、思い切って飛び込むことにしました。
――現実主義な面もありつつ、行動力が先をいくこともあって、両極端な部分があるのかなと思いました。
そこが僕の魅力かもしれない、と思いたいです(笑)。よく「ミステリアスだね」と言われますけど、自分としては「見えているものがすべてなのに」と思っています。ただ、確かに感情の起伏は激しい方なので、そのときどきですごくテンションが高かったり、大人しかったりするから、そう見えるのかもしれないです。
――最後に将来のビジョンについても教えてください。
これまでにやったことのない、役柄や作品に関わる機会が増えたらいいなと思っています。あとは、なによりもファンの皆さんが幸せだったらいいなと。僕の出演作を見て、「来てよかったな。幸せだな」と思ってもらえることが一番役者冥利に尽きることなので、そんな作品をこれからも届けていきたいです。
◆取材・文=榎本麻紀恵
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