【写真を見る】鈴川紗由、高石あかり、木戸大聖ら若手俳優が声優を務める(『きみの色』)
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、山田尚子監督最新作となる完全オリジナル長編アニメーション、塚原あゆ子&野木亜紀子のタッグが贈るシェアード・ユニバース・ムービー、吉田修一の同名小説を江口のりこ主演で実写化したヒューマンサスペンスの、誰かと一緒に観たい3本。
■心情に寄り添う音楽×美しい色彩の映像とともに描く…『きみの色』(公開中)
『映画「けいおん!」』(11)、『映画 聲の形』(16)など、数々のアニメーション作品で国内外から注目を集める山田尚子監督の最新作。『たまこラブストーリー』(14)以来、10年ぶりとなる完全オリジナル長編映画であり、「けいおん!」シリーズ以降、タッグを組んでいる『ブルーピリオド』(24)の吉田玲子が脚本を担当。ひょんなことからバンドを結成した高校生男女3人の青春物語を、心情に寄り添う音楽×美しい色彩の映像とともに描き上げた。
人を“色”で感じることができるトツ子(鈴川紗由)、同い年の少女きみ(高石あかり)、音楽が好きな少年ルイ(木戸大聖)の3人は、とても優しい性格で、それぞれ心に秘密を抱えている。自信が持てなかったり、本音を言えなかったり、多感な思春期ならではの悩みや葛藤に揺れ動く彼らの姿は普遍的で、自分を重ねてしまう人は多いはず。大規模なオーディションから選ばれ、声優業は初挑戦という若手俳優3人の等身大の初々しい感じも役のイメージにぴったりだ。ほのぼのとした可愛らしい日常、ゆったりと流れる季節の移り変わりを経て、彼らがたどりつく学園祭のライブシーンの臨場感は、音楽を愛する山田監督作品の真骨頂!トツ子が作った劇中歌「水金地火木土天アーメン」のキャッチ―な曲調は青春のきらめきを表現し、クライマックスを最高に盛り上げてくれる。(映画ライター・石塚圭子)
■停止ボタンを押して、じっくり見たい…『ラストマイル』(公開中)
「アンナチュラル」、「MIU404」を手掛けた塚原あゆ子監督と脚本の野木亜紀子、プロデューサーの新井順子。スピーディーな展開のエンタテインメントでありながら、現代社会の闇に真っ向から斬り込み、観る者の心を鷲掴みにする。その面白さには視聴者はもちろん、役者たちも絶大な信頼を寄せており、本作でも主役級の俳優たちが名を連ね、日本映画版の「アベンジャーズ」的キャスティングが実現。あちらがマルチバースなら、こちらはシェアード・ユニバース。
「アンナチュラル」、「MIU404」のキャラクターたちがドラマ後も存在していたんだとワクワク。演じる役者たちの姿もそのままなら、セットなども完璧に再現され、停止ボタンを押して、じっくり見たいほど。もちろん、『ラストマイル』本筋の出演者たちの存在感が薄まることはない。外資系のボスらしい、頭の回転が速く、マイペースな女性を満島ひかり、彼女にかき乱され、振り回されっぱなしの部下を岡田将生が演じ、息のあったやり取りを見せる。彼らとドラマを繋ぐ3作品すべてに出演している大倉孝二による毛利刑事の独特なツッコミは今回も健在。3作全ての主題歌を手がけた米津玄師とともに世界観を盛り上げる。(映画ライター・高山亜紀)
■狂気スレスレの暴走を、繊細かつ緊迫感たっぷりに体現…『愛に乱暴』(公開中)
主人公の中年女性、桃子は、夫の実家の離れで暮らすごく平凡な主婦。義母とほどよい距離を保ちながら、手の込んだ料理を作ったり、自宅のリフォームを計画したり、セッケン教室の講師を務める日々は、それなりに充実している。しかし「悪人」、「怒り」の吉田修一の同名小説が原作で、江口のりこが主演を務める本作、単なる微笑ましいホームドラマではない。桃子の穏やかな日常にいくつものきしみが生じ、夫の浮気が発覚する中盤以降、不穏なサスペンスがぐんぐん加速。ついには桃子の鬱屈した感情が限界点を超え、チェーンソーを握りしめる事態へと発展していく。
そんな“こわれゆく女”の哀れさや悲しみ、狂気スレスレの暴走を、繊細かつ緊迫感たっぷりに体現した江口の存在感が圧巻。妻であり、嫁でもあるひとりの女性の居場所はどこにあるのか。そんな問いを投げかけながら、観る者をサイコ・スリラーとコメディの境界へと誘う森ガキ侑大の語り口もお見事!(映画ライター・高橋諭治)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼
※高石あかりの「高」は、「はしごだか」が正式表記
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