大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)はこの秋、2年連続3度目のMVPを受賞するだろう。今シーズンはすでに史上6人目の「40-40」を達成し、さらに史上初の「50-50」を成し遂げる可能性もある。ホームランはナ・リーグで最も多く、このままいくと2年続けて本塁打王のタイトルを獲得する。
今永昇太(シカゴ・カブス)は違うシーズンであれば、新人王に選ばれてもまったくおかしくない。メジャー1年目の今シーズンは、ここまでの24登板で140.1イニングを投げて10勝3敗、奪三振率8.98と与四球率1.41、防御率3.08を記録している(成績は8月30日時点)。
にもかかわらず、新人王は受賞できそうにない。なぜならばナ・リーグには、ポール・スキーンズ(ピッツバーグ・パイレーツ/8勝2敗・防御率2.23)とジャクソン・メリル(サンディエゴ・パドレス/打率.291・20本塁打・76打点・16盗塁)がいるからだ。
鈴木誠也がメジャー3年目でさらに進化photo by AFLO
同学年の大谷とチームメイトの今永にスポットライトが当たっているせいか、そこまで目を惹かないかもしれないが、日本人メジャーリーガーのなかでは鈴木誠也の活躍も見逃せない。昨シーズンに続き、クオリティの高いシーズンを過ごしている。
メジャーリーグ2年目の昨シーズンは、1年目に56打席足りなかった規定打席に到達し、打率.285と出塁率.357、20本塁打、OPS(出塁率+長打率).842を記録した。今シーズンは8月28日の試合を終えた時点で、シーズン全体の規定打席である502打席まであと31打席に迫っている。打率と出塁率は.278と.350、ホームランは19本、OPSは.843だ。
ここからシーズンが終わるまで健康に過ごすことができれば、昨シーズンと同様に20本塁打以上とOPS.800以上を記録するだろう。ホームランの本数は昨シーズンを上回りそうだ。2年続けて出塁率.350以上もあり得る。
【鈴木誠也のOPSはメジャーでも上位クラス】1シーズンに20本以上のホームランを打った日本人メジャーリーガーは、通算5度の松井秀喜と今シーズンが5度目の大谷に、昨シーズンの鈴木の3人だ。城島健司と井口資仁はどちらも2006年の18本塁打が最多。イチローは2005年の15本塁打が最も多かった。
規定打席以上のシーズンにOPS.800以上は、イチローと松井秀喜が5度ずつ記録している。大谷と鈴木はそれぞれ、今シーズンが4度目と2度目となるはずだ。
イチロー、松井秀、大谷の3人は左打者。シーズン20本塁打以上も、シーズンOPS.800以上も、右打者の日本人メジャーリーガーは鈴木しかいない。
カブスにおいても鈴木のOPSは、昨シーズンの.842がコディ・ベリンジャー(.881)に次ぐ2位、今シーズンの.843はトップに位置する。2番目に高いのはOPS.811のイアン・ハップだ。鈴木を除くと、カブスで昨シーズンも今シーズンもOPS.800以上となりそうな選手はいない。今シーズンのベリンジャーのOPSは.745にとどまっている。ハップは昨シーズンのOPSが.791だった。
2020年以降、カブスで2年続けてOPS.800以上(規定打席以上)を記録した選手は途絶えている。現時点では2014年〜2019年に6年連続のアンソニー・リゾ(現ニューヨーク・ヤンキース)に、2018年〜2019年に2年連続のハビア・バイエズ(現デトロイト・タイガース)とカイル・シュワーバー(現フィラデルフィア・フィリーズ)が最後だ。
ちなみにリゾとともに打線の中軸を担い、ふたり合わせて「ブリゾー」と称されたクリス・ブライアント(現コロラド・ロッキーズ)は、2015年〜2019年の5シーズンともOPS.830以上だが、2018年は規定打席に届かなかった。
日本人メジャーリーガーやカブスという、人数が比較的少ない限られたカテゴリーのみならず、メジャーリーグ全体で見ても、鈴木のOPSは低くない。昨シーズンの.842は134人中22位、今シーズンの.843は136人中18位だ。それぞれ上位の16.4%と13.2%に入っているので「全体の85%前後の打者より上」ということになる。ナ・リーグに限ると、昨シーズンが15位、今シーズンは7位だ。
【打球のハードヒット率も年々上昇】打者としての鈴木は、「オールスタークラスの選手に次ぐ存在で、そのすぐ下に位置している」と言っていいのではないだろうか。たとえば、昨シーズンのOPSが鈴木より上だった21人中19人は、昨年と今年のうち、少なくともどちらかのオールスターゲームに選出されている。鈴木のすぐ下に並ぶ23位〜43位の21人は、ほぼ半数の12人が選出された。
パワーがもう少しアップすれば、鈴木はオールスタークラスの選手になり得る。そして、オールスターゲームにも選ばれるに違いない。
ワンランク上のパワーを具体的に表す「シーズン30本塁打以上」は、実現可能なハードルに思える。
鈴木の月間本塁打(3・4月→5月→6月→7月→8月→9・10月)は、2022年が4本→0本→欠場→4本→2本→4本、昨シーズンが1本→5本→0本→2本→5本→7本、今シーズンは3本→2本→5本→5本→4本と推移している。
メジャーリーグ1年目は月間4本塁打が最多ながら、2年目以降は月間5本塁打以上が計5度を数える(8月31日に打つと6度目)。1カ月に5本のホームランを打てれば、シーズン全体では30本塁打だ。
スタットキャストのデータによると、初速95マイル以上の打球の割合を示す鈴木のハードヒット率は年々上昇している。2022年の41.3%に対し、昨シーズンは48.0%、今シーズンは48.6%。規定打席未満の2022年はランキングの対象外だが、その数値は規定打席以上の70位前後に相当し、昨シーズンは30位、今シーズンは20位だ。
8月半ばから、鈴木は主にDHとして出場している。それまではライトを守ることが多かった。現在はベリンジャーがライトの守備につき、レフトはハップ、センターはピート・クロウ=アームストロングが守っている。来シーズンのポジションがどうなるのかはわからないものの、DHがメインとなれば、今まで以上にパワーが求められる。
なお、シーズン30本塁打は、来シーズン以降とは限らない。ここからでもパワーを発揮すれば、今シーズンの30本到達もあり得なくはない。
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