8月30日(金) 17:00
作詞家・森雪之丞と、俳優にして演出家でもある岸谷五朗がタッグを組み創作、2013年に初演された『SONG WRITERS』。日本発のオリジナルミュージカルの傑作として、いまや伝説と化しているこの作品が、2015年の再演を経て約10年ぶりに帰ってくる! しかも主人公の幼馴染ふたりには、初演・再演時も大いに沸かせた、屋良朝幸と中川晃教が続投! 三たび“名バディ”エディ&ピーターに扮する屋良と中川に話を聞いた。
初対面は『Endless SHOCK』の幕間で――『SONG WRITERS』と言えば、屋良さんと中川さんの名バディぶりも話題になった、伝説のミュージカル。2013年の初演時がおふたりの初共演でしたね。初対面の時のことを覚えていますか?
屋良俺が出演していた『Endless SHOCK』の楽屋に来てくれたんだよね?
中川しかも1幕と2幕の間の休憩時間だった(笑)。
屋良そうそう!「中川さん来ます」と言われて「嘘でしょ!?」と思った(笑)。
中川たしか、終演後は化粧落としたりするので慌ただしいから幕間に……と誰かが気を遣った結果、そうなったんだよ。僕はあの時が初・SHOCKだったから、公演自体「すごー……」と思って観てたし、その中で屋良っちがすごくカッコ良くて。何て言うのかな……、僕たち比較的小柄じゃないですか。屋良っちを見て、そこがいいなと思ったの。つまり、大きい人たちをバックに従えて「お前らと俺は違うんだ!」という気迫を感じて、また役もちょっとそういう感じの役だったし。自分を投影して見てしまったんだよね。でもそもそも、屋良っちに関しては前情報がすごくて。「とにかくすごい人だから」って。
屋良ほんとにやめてほしい……(苦笑)。
お互いの魅力は「唯一無二」(中川)中川アイドルの人たちって、僕らよりずっとレスポンスの速さを求められる世界に生きていて、そのヒリヒリハラハラなところすら、カッコいいとお客さんに思わせる人たち。表現者としてトップオブトップだと思ってるんです。その中でも同い年のほかの人とは何かが違ったし、屋良っちがまわりから一目置かれているというのは、実際に会って「なるほどね」と思った。クリエイターっぽいところも持ち合わせているけれど、やっぱりアイドルであることを大事にしている。……で、「なんでこの人が、俺と一緒にシアタークリエでオリジナルミュージカルをやろうと思ってくれたんだろう」「もしかしたらここからまたさらなる新しい場所を見つけていきたいのかな、きっと野心があるんじゃないかな」と感じたのが、最初の印象でした。
屋良俺は……、緊張してた。
中川そんな風には見えなかったけど(笑)。
屋良いや、緊張するでしょう(笑)。でも今話していて思い出したけど、2012年のシアタークリエ公演『道化の瞳』が初単独主演だったんだけど、この時、すぐには(前所属)事務所からGOが出なかったんだよね。今でこそ舞台をやっている人も多いけど、その頃は事務所外の舞台公演に出る人はほとんどいなかった。自分がこの道を進まないと、後ろに道が出来ないなと思ってかなり頑張って説得したんです。
――なんと。事務所から「次はこの舞台です」と来たお仕事なのではなく、屋良さんの方が熱意を持って舞台をやりたいと言ったんですね……!
屋良そうなんです。『SONG WRITERS』もそうだったけど、『道化の瞳』はGOが出るまで1ヵ月くらい毎日話し合った。ここを切り拓かないと未来がないなと思って。でも『SONG WRITERS』は、最初にアッキーの名前を聞いて「ちょっと待って、俺は対等に並び立てるレベルじゃないよ」と思ったのも事実です。アッキーのことはアーティストとしてキャリアをスタートされたのも知ってたし、舞台に出た時は「俳優もやるんだ」と思ったし、帝劇で『モーツァルト!』も観ていますから。ずっとすごい人だと認識してた。でも俺がミュージカル界のトップの人とご一緒できる環境があるんだったら、やるべきだと思ってチャレンジしたんです。
中川へぇ~。
屋良『SONG WRITERS』はおかげさまでとても評判が良かったし、たぶんここから色々と流れが変わったんだよね。事務所の中で“演劇・ミュージカル”との向き合い方が。
――いいお話です。そしてその初演から11年、おふたりは交友を深めていらっしゃるようですが、お互いのパフォーマーとしての魅力はどう見ていますか?
中川唯一無二だと思います。常に新しいクリエーションを続け、一方でアイドルという肩書で求められる自分、その両方をひとつの額縁の中で成立させている人ってほかになかなか思い浮かばない。同じように堂本光一さんという方はアイドルでありながら後輩たちのことも考え、未来を見つめてエンターテインメントに取り組んでいらっしゃる。その光一さんが屋良っちのことを可愛がってたと聞いて、やっぱりなと思った。
屋良光一くんもだけど、自分の中では少年隊の存在が大きいかな。あの方たちが、アイドルと舞台の垣根を超えてエンターテインメントというものに向き合ってきたパイオニアだと思う。もちろんダンスも歌もホンモノだし。それを間近で見てきたので、自分がやってることは自分にとっては“普通”なんだよね。振付とかを後輩に教えたりするから、少し特殊な部分もあったかもしれないけど。
中川なるほどねー。
屋良俺から見たアッキーは“自分にないものがある人”。歌声の素晴らしさはもちろんなんだけど、芝居へのアプローチもそう。俺はずっと、時間のない中で「理解できていなくてもとりあえず進める」ということを求められる世界で生きていて、良くも悪くも“それっぽく見せる”技が身についてしまったんだよね。
中川それ、何て言うの?
屋良え?
中川今後のトークで使えるから言語化しといた方がいいよ(笑)!
屋良(笑)。なんだろう、“臨機応変病”(笑)? 振付がわからなくなっても適当に踊ってごまかせる、みたいな。でもアッキーはわからないことを、わからないままにしておかないよね。一度止まって「ここは何ですか、どういうことですか」と一つひとつ解読していく。その姿勢が自分と真逆で、でも物事を真摯に創るってそういうことだなと思った。
“臨機応変病”はある意味武器だと思っていたけれど、外の世界じゃ通用しないんだ、これは自分の薄っぺらさだと感じた。これはその後、(岸谷)五朗さんがきちんと指摘してくださったけれど、実はその前にすでにアッキーを見て自分の中では感じていたし、その強さをしっかり持って戦っている同世代として俺はアッキーに憧れました。
中川確かに真逆かもね、僕たちのアプローチは。
屋良俺はわからなくてもなんとなく形にして通過しちゃうところに、アッキーは素直に引っ掛かれるんだよね。でもたしかにそうしないと、深められない。そういう、表現者としての気付き含め『SONG WRITERS』は自分の中で転機となった作品です。
10年を経たふたりの“分かり合ってる”さまにキュンとする?!――そんなおふたりの出会いの作品であり、転機となった『SONG WRITERS』。役柄としては、屋良さんが作詞家のエディ・レイク、中川さんが作曲家のピーター・フォックス。ふたりでブロードウェイにかけられるミュージカルを作ろう!という、幼馴染のクリエイターコンビですね。キャラクターとしての見どころを教えてください。
屋良エディは自信過剰で、自分の作るものに対しても絶対の自信がある。そんな彼が、自分の作った物語世界の中に入っていっちゃって、物語のキャラクターや、現実でもピーターや歌手のマリーと関わる中でちょっと自信喪失したりもして……。すごく作中で変化し、成長するキャラクターなのでそこは楽しいところです。あとはパフォーマンスが華やかでとってもエンターテインメント。今回の演出がどうなるかはまだわかりませんが、アクションもダンスもあると思うので、そんなところも楽しんでいただけると思います。
中川僕の演じるピーターはエディと逆で、気弱な青年です。でももしかしたら、エディという人間がいるから気弱でいられるのかも。もしエディがピーターの人生に現れなかったら別の性格だったんじゃないかなと思うくらい、エディが僕の傘になってくれている。エディがいなかったら生きていけないような気弱さもあります。でもエディの物語の中に入っていくことで……つまり彼はエンターテインメントを作っているわけなので、その中で歌ったり踊ったりする。ある意味、音楽を体現できるキャラクターでもある。踊りが得意なわけじゃないけれど、抜群に踊れるエディと対等に踊らせてもらえるのは役得ですね。
屋良そこそこ踊ってるよね。
中川同じ振付を踊ってるのはおかしいと思う……。
屋良それ、10年前も同じこと言ってたね(笑)。
――三度目の上演ということで、それだけ愛されている作品です。作品としてはどんなところが魅力ですか。
中川僕はこの作品、ニューヨークを舞台にしているところが面白いと思っていて。僕らはブロードウェイで最高のミュージカルを作ってヒットさせようとしているコンビでしょ。僕らの居方次第で、そこがニューヨークに見えなければいけない。で、僕自身はともかく、エディを演じる屋良っちを見ていると、そこがスタイリッシュなニューヨークに見えてくる。一方で非現実の世界にも入っていくところが面白くコミカルに描かれていたりもするんだけど。なんかこの組み合わせが、僕は好きだなあ。
屋良俺はやっぱり音楽の良さが魅力かな。雪さん(森雪之丞)の詩と、色々な人が担当してくださった音楽がそれぞれいい。アッキーも何曲か書いてくれてるよね。
中川冒頭の『鎮魂歌』と、2幕の『現実の国で夢見る人』。
屋良『現実の国で夢見る人』! あの曲最高。最後にふたりで歌うんだよね。
中川楽屋で昼夜公演のあいだにふたりで練習した音源が、実はスマホに残ってたんだよ。(音源をかける)
屋良うわ、なんで録ってるの(笑)。……俺たちちゃんと練習してるね、偉いね。
――おふたりの声質、合いますよね。
中川それ、初演の時も、再演の時も言われました! 僕ら、声が合うって。
屋良ありがたいことです。
中川屋良っちのソロ曲って何だっけ?
屋良俺、実はソロ曲ないんだよ。アッキーとデュエットしてたり、マリーと歌ったりするけど。ソロはないの。
中川じゃあ俺が書くよ! 足してもらおうよ! みんな聴きたいでしょ?
屋良いい、いい。ソロ“パート”は山ほどあるから(笑)! アッキーは恐竜の歌があるよね。
中川うん『Dinosaur in my heart』。親友が僕の大好きな女性とキスしているのを見て歌う嫉妬の歌(笑)。
屋良めちゃめちゃいい曲! ……タイトル、すごいけど(笑)。
――屋良さんのソロ曲が足されるのかはさておき、まずは約10年ぶりにエディとピーターが帰ってくるのを楽しみにしています!
屋良この10年で色々な経験をしてきましたから、おのずとパワーアップするはずです! 俺らふたりももちろんだし……(武田)真治さんとかもめちゃくちゃパワーアップしてそうだよね。
中川間違いない(笑)。僕らも、掛け合いはパワーアップしてるよね、きっと。初演は屋良っちから「ぅおい!(そっちかーい!)」みたいな箇所がいくつかあったけど、そこは「うんうん、こうくるよね、分かってたよ」と変化したりもするかも。その“分かり合ってる”さまに、お客さまが「キュン」となさるかもしれませんね(笑)。
屋良冒頭のシーンなんか、けっこう……遊べそうだよね。
中川イケそう。
屋良稽古場でも、どんどんお互い出し合っていけるんじゃないかな。そうやって作り上げていきたいね。
中川すでに楽しみだよ!
〈あらすじ〉
1976年のアメリカ。自信過剰な作詞家のエディ・レイク(屋良朝幸)と、気弱な作曲家のピーター・フォックス(中川晃教)の幼馴染のふたりは、自分たちの作ったミュージカルがブロードウェイでヒットすることを夢見ている。エディが書いているのはマフィアのボスや内通者の刑事たちが繰り広げる裏社会の物語。そんな彼らのもとにある日、音楽出版社のディレクター ニック・クロフォード(武田真治)がやって来て、ふたりの曲をボスが気に入ったと言う。ただし契約の条件は書きかけのミュージカルを1年以内に完成させること、そしてそのミュージカルにふさわしいディーバを見つけること。偶然にも女優の卵で素晴らしい歌声を持つ女性マリー・ローレンス(実咲凜音)と知り合い、契約に近づいたかに思われたが……。
ミュージカル『SONG WRITERS』トレーラー映像
取材・文:平野祥恵撮影:杉映貴子
ヘアメイク:(屋良朝幸)大平真輝・(中川晃教)松本ミキ
スタイリスト:(屋良朝幸)柴田拡美(Creative GUILD)・(中川晃教)Kazu(TEN10)
衣装(中川晃教):ジャケット ¥126,500・パンツ ¥48,400 /共にNEW ORDER(シアンPR TEL03-6662-5525)・その他スタイリスト私物
★ぴあアプリにて、8/31(土) 11:00よりチケット先行受付開始!詳細は下記よりご確認ください。
【「ぴあ」アプリ チケット先着先行受付中!】ミュージカル『SONG WRITERS』シアタークリエ
※上記リンクは8/31(土) 11:00より有効になります。
<公演情報>
ミュージカル『SONG WRITERS』
作・作詞・音楽プロデュース:森雪之丞
演出:岸谷五朗
音楽監督・作曲:福田裕彦
作曲:KO-ICHIRO(Skoop On Somebody)、さかいゆう、杉本雄治、中川晃教
出演:屋良朝幸中川晃教
実咲凜音相葉裕樹青野紗穂蒼木陣東島京コング桑田武田真治 ほか
【東京公演】
2024年11月6日(水)~11月28日(木)
会場:シアタークリエ
【大阪公演】
2024年12月7日(土)・8日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
【愛知公演】
2024年12月11日(水)
会場:Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホール