アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第32回九条翔太

/イラスト/Koto Nakajo

アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第32回九条翔太

8月29日(木) 19:00

MOVIE WALKER PRESSの公式YouTubeチャンネルで映画番組「酒と平和と映画談義」に出演中のお笑いコンビ「アルコ&ピース」。そのネタ担当平子祐希が、MOVIE WALKER PRESSにて自身初の小説「ピンキー☆キャッチ」を連載中。第32回は全国民が激震する!
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■ピンキー☆キャッチ第32回九条翔太

画面には二人の若い男女が映し出されていた。モニター右下には『九条翔太・KAHO結婚報告緊急生配信!!』と白い文字で抜かれていた。
このスタジオはもちろん、テレビ局内中が大騒ぎとなっている。冷静で理知的な七海も足をバタつかせて興奮を隠せず、大きく世代が違う吉崎すらも「あへぇ」と口を開けた。

無理もない。九条翔太は端正なルックスで若手時代はアイドル的な売り出しで人気を博したが、本格的に芝居に励み、今や日本を代表する俳優となった。35歳という年齢で円熟味を醸し出しつつも、美しく整った顔立ちで老若男女全ての世代に絶大なる支持を持っていた。ここ近年ではハリウッド映画にも続けて出演し、世界的な大物俳優と肩を並べ、名実共にアジアのトップスターとなった。

一方のKAHOは姿を見せない謎めいた歌姫として突如現れ、リリースする曲の全てがヒットチャート1位を記録していた。アップテンポからバラードまでこなし、主題歌を手がけたドラマは曲先行でヒットした。昨年『KAHOの歌声は加工された偽物だ』との噂がネットで拡散されたのを受けて、アカペラのみのライブを敢行。その様子はテレビでも生放送され、時には鈴の音のような、そして時にはうねるようなパワフルな歌声を披露した。この一連の騒動は世界でも注目され、本物の実力を見せつけたKAHOはその後ワールドツアーも大成功させたのだ。

その二人が突如、事前に交際の噂すら1ミリも無かった上で、突然結婚の発表をしたのだ。更には今まさに生の配信で自分の声で結婚までの経緯を語り、KAHOはこの場で初の顔出しまでしている。あの伸びやかに響く声の持ち主とは思えない程に可憐な印象で、真ん中から綺麗に分けたワンレンの長い黒髪が艶やかしい。おそらくどこかのスタジオなのだろう、白い空間に置かれた大きなレザーソファに腰掛け、九条がリードする形で配信が続いていた。坊主に近い短く刈り込まれたスタイルで、目鼻立ちの力強さがより強調されている。

おそらく今日本中が画面に見入って動けなくなっているのだろう。いや、これは最早国民の祭りが始まったといっても過言ではないだろう。そしてこの祭りのお囃子が収まることはしばらく無いであろう。全員が驚きで硬直しているこの前室で、最初に口を開いたのは吉崎だった。

「こりゃあ・・・無理だなぁ」

都築も画面から目を離せぬまま静かにうなずいた。周囲に念の為の避難要請は発令されているとはいえ、特段大きな被害も出ておらず、ましてや“突起が揺れている”程度ではこの大ニュースに勝てるわけがない。いや、こちらも『防衛省が』という国の防衛に関わる大ニュースではあるものの、流石に相手が悪すぎた。

先程まで理念に燃えていたメンバー3名は嬌声を上げ、携帯を取り出して詳細をチェックし始めた。遠山までもが、上官が目の前にいるのにも関わらず、初対面で横に居ただけのメイクさんと肩を抱き合って無意味なジャンプを繰り返している。

「吉崎さん、ご覧の通りのわけでして、申し訳ありません・・・」
「いや弘崎さん、これは完全にタイミングが悪かったんです。仕方がありません」
「我々マスコミにも事前の報告が無く、今さっき飛び込んできたニュースでして・・。情報は自分達で配信できてしまう時代なんですね。しかし私も本当に驚きました」

我に返った都築は恐る恐る尋ねた。

「あの・・・一応の確認程度の話なのですがこのニュースの後に流すわけには・・」

「本来であればあと数分で番組は終わる予定でした。再放送のドラマが始まる時間帯なのですが、そちらを飛ばしてこのまま配信を流す予定です。他の局も全てこのニュースに切り替えていますよ」
「そうですよね・・・いやでもしかし・・・」
「都築、現場から連絡が入った。『現在目立った動きなし。振動も認められず』だと。この状況で入れ込むのは難しいだろう」
「確かに・・ええ・・」

ネットニュースのトピックスも項目の全てがこの話題で埋められていた。遠山はまだ興奮冷めやらぬ状態で「翔太ロスだ〜!!でもKAHOかぁ!!辛いけど嬉しい!!」と、鈴香と手を取り合って騒いでいる。

「都築、あちらのプロデューサーの戸松・・さんだったっけ?濁しながらも話はつけてきたんだが、戻れるんじゃないか?リミテッドの収録」
「え・・ああ・・まあそれはそうですが・・」
「ただでさえご迷惑かけてるんだ、ここで立ち尽くしてるんだったら戻ったほうがいいだろう。俺も一緒に言ってやるから」

メンバーを連れて隣のスタジオに戻ると、休憩中に先程の緊急配信が入った為だろう、休憩を延長してスタッフ・演者一同でモニターに見入っていた。戸松に声をかけると「あ、なんかさっき上司の方がいらしてお話ししました。・・ああ大丈夫そうなんですね、では引き続きお願いしますね」と気もそぞろに返答し、モニターに目を戻した。

「100メートル級の怪物でも出てこない限りはもう無理だ。俺は遠山と現場に戻る、プランはまた立て直そう」

都築の肩に手を乗せた吉崎が力無く告げ、去っていった。
画面の中の二人はお揃いの指輪を見せていた。アイドルたちが一斉に歓声を上げる。都築達は緊急中抜けしたはずのリミテッドのスタジオにヌルリと戻った。

(つづく)

文/平子祐希


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