久保建英、物議を醸すパフォーマンス だがその「憤激」がスーパーゴールを生んだ

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久保建英、物議を醸すパフォーマンス だがその「憤激」がスーパーゴールを生んだ

8月25日(日) 16:50

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8月24日、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)の久保建英(23歳)は、エスパニョールとの敵地戦で控えスタートだった。67分に交代出場すると、定位置の右サイドに入っている。そして80分、右サイドから鋭くドリブルで切り込み、左足で1-0の勝利に結びつく得点を決めた。

「ベンチスタートは驚きで、久保が気に入るはずもなかった。怒りとともにピッチに入り、決勝点の主役となっている。右サイドからカットインするプレーで、エスパニョールのGKを打ち抜き、スーパーゴールは勝ち点3を意味した。ユニフォームの名前を見せつけ、名誉を回復。イマノル(・アルグアシル監督)へのメッセージだったか?」

スペイン大手スポーツ紙『アス』は、久保が控えだったこと、途中出場でのゴールを高く評価し、物議を醸すゴールパフォーマンスについても言及している。

久保はゴール後、祝福に来たチームメートたちをはねのけ、喜びを共有しようとしなかった。そしてベンチの近くでスタンドに背中を見せ、両手でユニフォームの肩のあたりを釣り上げた。表情は怒っていたようで、それは彼らしいパフォーマンスだった――。

エスパニョール戦で決勝ゴールを決めた久保建英(レアル・ソシエダ) photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

エスパニョール戦で決勝ゴールを決めた久保建英(レアル・ソシエダ) photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA



控え目に言って、ゴール前後の久保は怒っていた。

「怒りで我を忘れるな」

日本ではそう体のいい指導をすることがある。それはひとつの定石だが、真理ではない。ラテンの国の選手たちは、多かれ少なかれ、怒ることで集中力を最大限まで高める。怒ることでトランス状態に入る。アスリートのゾーンにも近い。誰が何を言おうが、何をしてこようが、味方でさえ、"自分に従わないなら必要ない"となぎ倒す覇気というのか。日本的に言えば「覚悟」と言い換えられるかもしれないが、もっと血なまぐさいものだ。

「Rabia」(ラビア)

スペイン語で「激怒、憤激」を意味する。それはプロサッカー選手として成功するため、スペインでは不可欠なものと言われる。とりわけ、アタッカーのポジションで「Rabia」を表に出せない性格は致命的だ。

【激情が運まで引き寄せる】怒りは暴発すれば、ただの暴力になってしまうし、冷静な判断を欠くことになる。しかし、紙一重のバランスで保つことができたら、巨大な武器になる。たとえばリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドも「怒っている状態が一番怖い」と言われる。本能に導かれるまま、敵の度肝を抜くプレーができるからだ。

チームメートも、悪態をつくような姿にむしろ頼もしさを覚える。ゴール後、実力者であるマルティン・スビメンディ、人格者であるキャプテンのアリツ・エルストンドが、憤然とした様子の久保を追いかけ、ゴールを称える姿は印象的だった。高次元の信頼関係だ。

「仲良しこよし」は高いレベルのサッカーでは、一番の毒である。怒りこそ、張りぼての絆を粉々に打ち砕く。"ついてくるならついて来い"というハイレベルのリーダーシップで、恐ろしいほどの集中力だ。

それは信じられないことに、運まで引き寄せる。

得点シーン。久保が仕掛けたドリブルは相手の足に当たって、一度は弾んでいる。しかし、彼はそれを体ごと押し出す形で前に出られた。当たったボールがどこに転ぶか。その運命を含めて、彼は場を制していた。激情を持った選手のほうへ、ボールは不思議と転ぶ。そこからの一撃も簡単ではなかったが、集中力のおかげで軌道が見えていたはずだ。

「タケ(久保)のゴールパフォーマンス?多くの選手たちがやるように、カメラに向かって、どこかの誰かに向けたメッセージだろう。誰に向けてだったかは、君たち記者が彼に聞くべきだ」

アルグアシル監督は歴戦の猛者だけに、軽やかに論争を避けている。選手の感情の爆発があってこそ、競争力も生まれるのを承知しているのだろう。指揮官は、選手の怒りを発動させるのがうまい。特に久保に関しては、わざと発奮させるように先発から外し、あるいは途中交代を命じ、爆発力を引き出してきた。

現在、ラ・レアルは舵取りが難しい局面にある。ロビン・ル・ノルマン、ミケル・メリーノというふたりの主力が移籍。守備の重鎮であるイゴール・スベルディアもケガで出遅れている。そして昨シーズンから懸案のストライカーも補強できていない。

久保は、その不穏さをひとりで突き破った。それは"お手てつないで"の戦い方では成し得なかったことだろう。エゴをむき出しにした怒りの一発で勝利をもたらし、チームを団結させたのだ。

「久保がラ・レアルに"自信を与える"勝利をもたらした」

スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は、そう見出しを打っている。久保と同様にうまい選手はいるが、自らがチームをけん引するという覚悟こそ、代えがたい能力なのだ。

8月28日、久保とラ・レアルは同じバスクのアラベスと対決する。

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