映画『箱男』(公開中)の公開記念舞台挨拶が8月24日、新宿ピカデリーにて開催され、永瀬正敏、浅野忠信、白本彩菜、佐藤浩市、石井岳龍監督が登壇した。
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1973年に安部公房が発表した小説を映画化した本作は、1997年に製作が決定していたが、クランクイン前日に企画が頓挫した経緯がある。公開を迎えた心境について「言葉にならない。感無量です」と喜びを噛み締める永瀬。石井監督は原作を読んだ時の感想を「箱男というキャラがまずすごいと思って。映画にしたらおもしろくなると思った」と振り返り、映画化が難しいとは考えなかったかという質問には「取り憑かれてしまったという感じです」としみじみ。
27年の時を経て映画化されたことについて主人公“わたし”を演じた永瀬は「いまはSNSの時代。やっと原作の世界に世の中が近づいてきたのかなって思います。安部公房さんは預言者のような人。すごいなって思います」と話し、「僕自身、この27年間はずっと箱男と一緒に歩んできました。いまとなってはその時間も必要だったのかなと思います」と、27年経過したいま、映画化され公開に至った意味への自身の想いを語った。
27年前の企画では佐藤が演じる予定だった“わたし”をつけ狙い、箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ医者役の浅野は映画化を知り、復活することにとても驚いたという。「あの企画が復活する。これは徹底的にやろう!と思いました」と気合が入っていたようだ。箱男を完全犯罪に利用しようともくろむ軍医役の佐藤は「この27年があったことがよかったのかどうかは、これから何十年か先に分かることだと思います」とし、「いまの情報量に比べて、ナロー(範囲が限定されている)だった時代。広がった部分はあるけれど、狭くなっているものもある。そういう世界の対比がおもしろい」と本作の魅力に触れていた。また、MCから浅野の役は自身がやるはずだったのに…という想いはないのかと尋ねられると、「いえいえ(笑)。僕は軍医を愛していますから」と役への強い思いを口にしていた。
“箱”をかぶるとどんな気持ちになるのか、との質問に「見るとかぶるとでは大違い!」と答えた永瀬は「安心感も恐怖感もある。閉塞感はそんなにないけれど…、暑かったです」とコメント。浅野が箱のなかでほぼパンツ一丁になっていたことを暴露し、「浅野くんの気持ちが分かるくらい、暑かったです」と撮影時の苦労を明かす場面も。「箱に入ると、(周囲が)存在を忘れてくれる」と答えた浅野は「いつもなら、待ち時間には“浅野さん、ちょっと待っててください”と声をかけてもらえる。でも、箱に入っていると、僕の存在が忘れられてしまって、声をかけられることがない(笑)。みんな仕事してるなー、と(なかから)見ていました」と箱のなかから撮影現場の観察を楽しんでいた模様。さらに「誰にも相手にされない感じがちょっと気持ちよくなってくる。これにハマるんだ、って箱男の気持ちを分かってくる」とニッコリ。さらに「なかでパンツを脱いでても気づかない!」とニヤリとした浅野だが「俺だけ気づいてた!」との永瀬の返しに照れ笑い。2人は息ぴったりのトークで観客を笑わせた。
オーディションで“わたし”を誘惑する謎の女、葉子役を射止めた城本は、本作の見どころについて「笑っていいのかな?みたいなシーンが出てきます。それは葉子の想像をはるかに超えるもの。ネジをはずさせていただけるような経験ができて楽しかったです」と充実感を滲ませていた。
永瀬が演じた“わたし”は原作では“ぼく”となっている。「“ぼく”を使うのは男性が多い。”わたし”は男性も女性も使うので、箱女もあるということだと思います」と持論を展開。さらにプロモーション中に気づいたことがあるとし、「監督は必ず“わたし”って言います。監督こそ箱男なんじゃないかな(笑)」とコメントし笑わせた。
最後の挨拶で永瀬はまず石井監督に視線を向け、「本当におめでとうございます」と深々とお辞儀。続けて「最初にも言いましたが、本当に感無量です。できれば、何度でも(映画館に)足を運んでいただいて、いろんな俳優の目線で何度も観てほしいです。そのたびに“おいしい”と思います!」と本作の見どころ&うまみをアピール。石井監督が「いろいろな見方をしていただけるように、仕掛けています。マジカルミステリーツアーです。観終わったあとも楽しめるおもしろい映画です。観ていただけたら分かると思います!」と呼びかけると、会場はこの日一番の大きな拍手に包まれた。
取材・文/タナカシノブ
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