ホラー大好きなセントチヒロ・チッチが“推す”『サユリ』「メジャー映画にうんざりしている、コアなファンもぶっ飛ぶ!」

無類のホラーファン、セントチヒロ・チッチが“最恐ホラー”『サユリ』を激推し!/撮影/河内彩

ホラー大好きなセントチヒロ・チッチが“推す”『サユリ』「メジャー映画にうんざりしている、コアなファンもぶっ飛ぶ!」

8月21日(水) 20:30

押切蓮介の同名漫画を、『ノロイ』(05)や『貞子vs伽椰子』(16)などで知られる白石晃士監督が実写映画化した『サユリ』が8月23日(金)より公開される。ホラー漫画とホラー映画、それぞれのトップランナーがタッグを組んだ本作を、無類のホラー好きを公言するアーティストのセントチヒロ・チッチがひと足先に鑑賞!これから『サユリ』に接する観客に向けて、ホラー的な“推し”ポイントを語ってくれた。
【写真を見る】現地では「幽霊が出る」と有名…昭和レトロなビル内で、セントチヒロ・チッチを撮り下ろし

本作は、中学3年生の則雄(南出凌嘉)ら3人の子どもたちとその両親、祖父母の神木家7人家族が夢のマイホームへ引っ越してくるところからはじまる。中古の一軒家での新生活に胸を弾ませていたのも束の間、則雄は隣のクラスの霊感を持つ女生徒・住田(近藤華)から「気を付けて」と話しかけられ困惑。そんな矢先、理不尽な出来事が神木家を次々と襲い、家族が一人ずつ命を落としていく。呪いの根源は、この家に棲みつく少女の霊“サユリ”だった。ついに則雄にもその影が迫るなか、認知症だったはずの春枝ばあちゃん(根岸季衣)が覚醒!サユリを地獄送りにするための壮絶な復讐劇の火蓋が切って落とされることになる…。

■「“サユリ”のビジュアルがめちゃくちゃ怖かった…」
【写真を見る】現地では「幽霊が出る」と有名…昭和レトロなビル内で、セントチヒロ・チッチを撮り下ろし


「序盤から怖い、怖い、怖い!って、何度もしっかりと恐怖をいただきました」と大興奮のチッチ。「“怖ければ怖いほど最高”と思っている私にとって、本当に好みのタイプでうれしくなりました。Jホラーらしい怖さが最初から詰め込まれていて、押切さんの漫画独特の救いようがない苦しみと、白石監督ならではの味わい深さがマッチしていて、これこそ日常では絶対に味わえない。でも、ただ怖いだけでは終わらずに、軽快さや爽快感もあって心地よい、いままでに観たことがないホラー映画でした」と大満足だったよう。

かねてから押切漫画のファンだったチッチは、映画化が発表される前から本作の原作を読んでいたという。「BiSHに入って2年ぐらい経った時に、ホラー漫画にハマった時期があったんです。そのなかで『ミスミソウ』を読んで、ファンの方に勧められて(同じ押切作品の)『ハイスコアガール』も読みました。そのあとに押切作品では『サユリ』が怖いらしいと聞いて、手に取ったところ全2巻を一気読みしてしまいました」と振り返る。

押切蓮介の最恐漫画が実写映画化!

原作者である押切自身も、映画の出来に「すばらしくて満足」とお墨付きを与えている本作。チッチも原作ファンとして「映画化されると知ってからずっと楽しみにしていましたが、期待以上でした」と太鼓判。「特に驚かされたのは、『実写化するとこうなるんだ!』と感じたサユリのビジュアルです。“怖さ”がぎっしりと詰め込まれていて、あんなのが出てきたら…終わりですよね。めちゃくちゃ怖かったです!」と、白石監督が作りあげた映画独自のサユリの造形に慄いていた。

■「根岸季衣さん演じる春枝ばあちゃんは、強いうえにオシャレで憧れです!」
根岸季衣演じる春枝ばあちゃんが、劇中でガラリと変化!


本作の見どころの一つとなっているのが芸歴50年を誇る大ベテラン、根岸季衣が演じた春枝ばあちゃんのインパクトだ。映画前半では認知症を患い、家の不穏さを感じ取るその様子が恐怖を駆り立てるが、中盤以降、突如として覚醒。ファンキーな格好に身を包み、タバコを片手にサユリへの復讐を誓い、孫の則雄に戦いの極意を叩き込んでいく。

『ドント・ブリーズ』(16)や『X エックス』(22)など、近年ハリウッドのホラー映画では老人が圧倒的な戦闘力を発揮する作品がトレンドになっている。チッチに“老人ホラー”のお気に入りを尋ねると、M.ナイト・シャマラン監督の『ヴィジット』(16)や、ブライアン・シンガー監督がプロデュースした『テイキング・オブ・デボラ・ローガン』(14)などを挙げていく。「“老人ホラー”の醍醐味は、動きも喋りもゆっくりだと思い込んでいたお年寄りが、突然俊敏な動きをすることで生まれる、予期しない恐怖感ではないでしょうか」と魅力を分析。

くわえタバコのファンキーな姿でサユリへの復讐を目論む!

「でも今回のおばあちゃんは、予想の裏の裏をかく動きで、恐怖心を通り越してもっとポジティブで情熱的な感情を呼び起こしてくれます。言葉の一つ一つがすごく心に沁みるし、とにかくカッコ良い。『ハロウィン』のジェイミー・リー・カーティスや、『101』のグレン・クローズみたいに、強いうえにオシャレで、『こういうおばあちゃんになりたい!』と憧れてしまいました」と惚れ惚れ語った。

■「“家”の恐怖表現として、吹き抜けを効果的に使っているのも◎です」

数あるJホラー映画のなかでも、“家ホラー”の代名詞といえる清水崇監督の「呪怨」シリーズがお気に入りだというチッチは、本作についても恐怖の舞台となる“家”を注目ポイントとして挙げる。「家が本当に怖くて、登場人物があの家に入っていくだけで心配になってドキドキが止まりませんでした」。

階段と吹き抜け、照明を巧みに使った演出で恐怖が倍増

劇中に登場する神木家の夢のマイホームは、傾斜地に建つ中古の一軒家。玄関が2階にあり、リビングのある1階から3階までが大きな吹き抜けになっており、ホラー映画特有の閉塞感とは対照的なつくりをしている。「Jホラー作品では家の恐怖表現として、階段や点滅する照明が使われているのをよく見ますが、本作ではそれらに加えて吹き抜けが効果的に使われていました。見上げるとよく見えるし、前と後、右と左だけじゃなくて上にも注意が必要。それも『呪怨』の玄関と共通している部分で、思わずキュンときました(笑)」と、ホラーファンならではの着眼点で“家ホラー”としての魅力を分析。

また、「“家”というちゃんと怖い場所を描きつつ、学校のシーンでは別のテイストのストーリーが描かれている。外に怖さを持っていかない感じが魅力的でした」と、ホラーだけではない複数のジャンルにまたがったエンタメ性の高さについても言及する。

則雄と住田の青春模様は胸キュン間違いなし

映画の前半は少女の霊の恐怖を描く正統派ホラー映画で、中盤からはアツい師弟関係を描くアクション映画、そして後半は等身大の中学生を描いた甘酸っぱい青春映画に…とまさにエンタメの山盛り全部乗せ。ラーメンだったらヤサイマシマシアブラマシマシ…という状態だ。「とにかく展開が早くて、何度も『もう映画終わっちゃう!』って思ってしまったぐらいです(笑)。まるで何本もの映画を観ている気分になりました」。

■「怖いシーンがたっぷりですが、実は後味がいい!」
たくさんのホラー映画のタイトルを挙げながら『サユリ』の魅力を語ってくれた


「“怖さ”を追求するホラーと、テンションを上げるアクションは混ざらない感じがするのに、一体化しているのがすごい。家族の死にまつわる伏線回収もしっかりしているし、絶妙なバランスが保たれていると感じました」と、異ジャンルの要素を携えた本作の魅力を語るチッチ。劇中で特に印象に残ったシーンはどこか訊ねると、彼女は映画後半で則雄が一人で家にいるシーンを選んだ。

「則雄と住田の学校でのストーリーが、どこかで家と繋がる時が来るだろうなと思っていたら、本当に住田が家に来てしまって…。則雄の心が揺らぐのも可愛らしいところだし、そこに付け込んでくるサユリもすごく嫌なやつだし。作品全体のテイストがギアチェンジして、一段階持ち上げられたシーンだと感じました」。そして「あれこそ白石監督のパワーですよね」と声を弾ませる。

POVホラーからエンタメ色の強い作品まで、さまざまなホラーを手掛けてきた白石晃士監督

学生時代にレンタルビデオ店でアルバイトをしていた経験があるチッチは、当時レンタルDVDでブームとなっていた白石作品もチェックしていたそうで、「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズや『ノロイ』(05)が特に好きだと明かしてくれた。「もし『サユリ』を観て、白石監督の映画を観てみたいと思う人がいたら、私は『テケテケ』をオススメします。『サユリ』と同じく怪異に立ち向かう映画ですし、闘う相手が強すぎ、怖すぎなのも同じです。初めて観た時には夜眠れなくなりましたし、帰り道で背後を気にするようになったぐらいです…」。

最後にチッチは、これから『サユリ』に触れる観客に向けておすすめポイントを語ってくれた。「ただ怖いだけでなく、『なぜ、サユリは悪霊になってしまったのか?』という背景までが描かれています。本作のように“切なさ”を感じさせるのも日本のホラーの良いところだと改めて思わされました。個人的には一人ではなく、友だちや家族、大切な人と観てほしい。前半は怖いシーンがたっぷりですが、実は後味がいいので、映画館が明るくなったあと隣にいてくれる誰かと噛み締めてほしい作品です」とアピール。

『サユリ』は8月23日(金)より公開!

「また、メジャーなホラー映画の弱々しさにうんざりしているコアなホラー好きも大満足できること間違いなしです!」と熱っぽく語り、「私は、とある呪文でサユリがスッといなくなるシーンが大好きです。呪文の言葉は、文字では書くことができないようなぶっ飛んだ内容なので…ぜひ劇場で確かめてください!」と呼びかけていた。

取材・文/久保田和馬


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