JR大阪駅や阪急梅田駅、中之島エリアやSUMMERSONIC会場などの大阪市内中心部で、2024年8月25日(日)まで開催中のアートプロジェクト「MUSIC LOVES ART 2024 - MICUSRAT (マイクスラット) -」。美術館やギャラリーとはひと味違い、街なかでさまざまなアート作品を楽しむことができる本イベントをレポートする。

MASAGON《HELLO!!! "MASAGON WORLD"》

まずは、JR大阪駅「時空の広場」にあるカフェへ。大阪・北加賀屋にアトリエを構えるMASAGONの作品が、壁面やテーブルを彩る。ポップでカラフルな作品を見ていると、わくわくしながら、友達と待ち合わせができそう！

鐵羅佑《かすむ》

阪急サン広場には、とても大きなオオサンショウウオが横たわっていて、びっくり！こちらはパフォーマンスや大型の立体作品を手掛けるアーティスト鐵羅佑（てつらゆう）の作品だ。水がきれいな場所に生息する、絶滅危惧種のオオサンショウウオが表現されている。

REMA《The Ecosystem of Love from That Time.》

淀屋橋に移動し、日本生命淀屋橋ビルへ。地下1階のサンクンガーデンには、REMAによる、砂をつかった彫刻作品が設置されている。REMAはいつも自分自身をモチーフにしており、このハート形の作品は、細かなモチーフがいろいろと彫られていて、興味深い。

檜皮一彦《HIWADROME_TypeΔ_SPEC3》

続いて、中之島フェスティバルタワーへ。フェスティバルタワー地下1階の空間に、約70台分の車椅子の車輪が積み上げられている。自身も車椅子をつかう檜皮一彦が手掛けている魅惑的なインスタレーションだが、見ているうちに、さまざまなことを考えさせられる。

大谷陽一郎「はん/えい」大谷陽一郎《はん/えい》（部分）

道路を渡った向かいのフェスティバルタワーウエストの3階オフィスエントランスホールには、一見すると、雨やシャワー、水たまりを表現しているような絵画のようにみえる。実はこの作品は、アートプロジェクトの全体テーマ「はんえい」を元に、「はん」と「えい」と読む漢字を、水がある風景に見えるようにプログラミングした作品だ。画面から遠ざかったり、近付いたり、動きがある鑑賞が必須！

そしてさらに、中之島エリアへ移動。ダイビルの2階にも、大谷陽一郎の作品が展示されている。同じ空間には、音楽をモチーフに制作を行う渋田薫の作品も。

大谷陽一郎《はん/えい》渋田薫《Tenor》

向かいに中之島美術館が見える、開けた場所のせいもあって、渋田の有機的でカラフルな作品は、暑さでへたばった身体や心を広げてくれそうだ。渋田の作品は、ダイビル1階にも設置されている。

渋田薫《Singin’ in the Rain》《ミライムジーク》

川を渡って、堂島リバーフォーラムの4階ギャラリースペースでは、v0idによるデジタルアートを見ることができる。

v0id《transitory images》

LEDを使った光のアート、という言い方をするにはもったいない！もとの画像の上に、さらに別の層を重ねて映し出す、という技法により、目に見える形や色、受け取る感覚さえもゆるやかで、ついつい見入ってしまう。

堂島リバーフォーラムと隣のABCホールの間にある、Art Beat Cafe NAKANOSHIMAにも行ってみよう。

COIN PARKING DELIVERY 展示風景

このカフェは、普段からアート作品を展示しているが、この「MUSIC LOVES ART 2024 - MICUSRAT (マイクスラット) -」期間中は、ポップな展開をするCOIN PARKING DELIVERYの平面作品が並んでいる。ランチやお茶をしながら、のアート鑑賞は、この季節にはとても助かる。

ちなみに、「MUSIC LOVES ART 2024 - MICUSRAT (マイクスラット) -」は、SUMMER SONIC 大阪会場でも展開していた。

久保寛子「やさしい手」※本作品のみ2024年8月20日(火)までの展示

池に浮かぶ、青くて大きい手は、久保寛子の作品。国内外のアートイベントに引っ張りだこの、現代美術界注目のアーティストだ。

奥中章人「INTER-WORLD/SPHERE: The Three Bodies」

宇宙から何かやってきた？！奥中章人による、このまばゆい巨大なソフトスカルプチュア作品は、中に入ることもできる。

GOMA「ひかりの滝」

交通事故に遭った2日後に絵を描き始めたというGOMAは、手塚治虫の《火の鳥》をモチーフにした作品を展示。8月の太陽へ向かっていくようなさまは、ここの場所とマッチしていた。

「MUSIC LOVES ART 2024 - MICUSRAT (マイクスラット) -」は、文化庁が主催する日本の文化芸術をグローバル発信拠点へ成長させていくプロジェクト、と書くと、堅苦しい気がするが、これまで見てきたように、アートの既成概念にとらわれない、メイド・イン・ジャパンの作品を見ることができる。大阪の町を歩きながら、アート作品に触れることも、新鮮なはずだ。まだまだ暑い日が続く。仕事に行く前、その帰りなど、ふらっと立ち寄ってみてはどうだろうか。

取材・文・撮影：藤田千彩

〈開催概要〉
「MUSIC LOVES ART 2024 - MICUSRAT (マイクスラット) -」

会場：大阪市内中心部
会期：8月12日(月)～ 25 日(日)
※SUMMER SONIC 大阪会場及び周辺での展示は8月17日(土)～ 18日(日)（※終了）
※千葉市内での展示もあり

公式HP：https://micusrat.com/