“人の顔”や東京都庁がエグられる…映像化困難の声を飛び越えた“衝撃の描写”と俳優陣の演技に感嘆<七夕の国>

VFX技術を駆使してカルト的人気のSFコミックを映像化/(C)2024 岩明均/小学館/東映

“人の顔”や東京都庁がエグられる…映像化困難の声を飛び越えた“衝撃の描写”と俳優陣の演技に感嘆<七夕の国>

8月18日(日) 8:10

VFX技術を駆使してカルト的人気のSFコミックを映像化
【写真】異形のビジュアルに絶句…山田孝之“頼之”

細田佳央太が主演を務めるドラマ「七夕の国」。7月4日にスタートし、8月8日に最終回となる全10話が配信された。怪作、そして映像化困難と言われていたSFコミックの実写化に挑んだ同ドラマの注目ポイントをあらためて振り返る。(以下、ネタバレを含みます)

■平凡な大学生を主人公に描く不気味な超常ミステリー

同作は、「寄生獣」で知られる漫画家・岩明均によるコミック「七夕の国」(小学館刊)を実写化。物に触れずに小さな穴を開けるという役に立たない“超能力”を持つ大学生・南丸洋二(通称:ナン丸)を主人公に、不気味な超常ミステリーの物語が繰り広げられる。

主人公・ナン丸を細田が演じるほか、ナン丸が訪れる里で暮らす東丸幸子を藤野涼子、幸子が恐れる兄・東丸高志を上杉柊平、ナン丸と共に謎を追う大学の助教授・江見早百合を木竜麻生、ナン丸が通う大学の教授で失踪してしまう丸神正美を三上博史、多くの謎を持つ丸神頼之を山田孝之が扮(ふん)する。



■日常を“エグる”超常現象の映像化

冒頭、何百年も前の山深い場所にある里。とある対立から甲冑に身を包み、槍を持った大勢の武士たちが攻め入ろうとするのだが、迎えるのはハチマキこそしているものの普通の着物を着た村人たち数名だ。あまりの対比に目が引き付けられていると、突如パンパンという音と共に武士たちの間に閃光が走った。次の瞬間、顔や足などが丸くエグられた武士たちが横たわっていた。

クレジットタイトルを挟んで、現代パートになると、主人公ナン丸がバツ印の書かれた紙の上に手をかざし、「ちょわあああ!」と叫んで集中すると、パツンという小さな音と共に穴が開いた。

冒頭の何らかの力と比べるとなんともショボい…。だがナン丸が穴を開けるときの両手のポーズに共通点を見いだすことができ、超常ミステリーが幕を開ける。

原作が連載されたのは1996年から1999年。当時の映像界ではCG技術が飛躍的に進化していた。しかし、そんな中でも原作が映像化困難と言われたのは、人をはじめとする物体を“エグる”表現があったからだろう。パンという破裂音と共に人の体がエグられる不気味さ。でも現実で起きていることとして見せなければならない。それを現代の現実と架空の世界を融合させることができるVFX技術が可能にする。

物語が進むほどに、この超常現象の規模も大きくなっていくのだが、地上波では到底許可されないようなエグさに時に目を覆いたくなっても、次はどうなるのかとワクワクさせることに成功している。


■東京都庁の上層階、そして東京の一部がなくなる!

ミステリーの鍵は、戦国時代より続く東北地方のとある豪族の領地だった丸神の里。民俗学的視点、閉鎖的な村を舞台にするヴィレッジスリラーのような怪しさが物語を包み込みながら、SF色が色濃くなっていく。

ナン丸は丸神の里の子孫であることが分かり、やがて能力を開花させていくのだが、その頂点にいるのが頼之だ。ナン丸が失踪した丸神教授の謎を追って丸神の里(丸川町)を訪れるようになる一方で、里を出ていた頼之は東京で能力を使ってさまざまな事件を引き起こす。その頼之の能力の描写が驚がくものなのだ。

里に伝わる能力は、黒くて丸い球体を生むことができ、その球体が触れたものを同じ体積分だけエグり、消し去ってしまう。頼之は政界権力者の依頼で、講演中の国会議員を会場外から球体を操って殺害した。球体が近づいたと思ったら上半身がなくなって下半身のみ倒れる姿はかなりの衝撃だ。さらにその依頼者のボディーガード数人と対峙(たいじ)したときは、あっという間に球体をいくつも生んで、まるで西部劇の早撃ちのように額をエグッた。

頼之の目的は何なのか、そんな謎を追ううち、彼の本当の恐ろしさを目の当たりにすることになる。東京都庁の上層階がスパッとなくなったのに続いて、東京のある一部の土地が円状にがっつりと消し去られたのだ。

原作での二次元表現から、映像として三次元で表現されたときの迫力。この醍醐味(だいごみ)は最終話で最大限味わうことができるのも、最後まで飽きさせない作りでうれしい。


■細田佳央太、山田孝之、三上博史の演技がすごい!

SNSには漫画の実写化として高く評価する声が寄せられた。原作をリスペクトした忠実な構成、VFX技術を駆使した映像、そして俳優陣の演技が相乗効果を生んでいる。

主人公を演じる細田は、ドラマや映画に引っ張りだこで多士済々の若手俳優の中でも実力派と呼び声高い。本作では原作の世界から現代の若者の雰囲気をたたえながら、物語をけん引。初めは就職活動にものんびりとしていて、頼りないように見えるが、自分の能力にやがて葛藤し、向き合って変化していく様子を丁寧に見せる。

細田演じるナン丸と対極にいるといえる頼之役の山田は、その素顔を本編中でさらさず、でも声と動きのみで絶対的な存在感を放った。実は頼之は最高位にいる能力者である証として額に赤い石、尖った耳、大き過ぎる目、手の甲にも石があって長過ぎる指という、宇宙人のような異形の姿をしている。劇中で全貌を表すシーンは少ないのだが、不気味さと力を持った者として畏怖を集める雰囲気を発する。その演技を見た細田や上杉、瀧悠輔監督が称賛していたのもうなずける。

藤野や上杉らそしてもう一人、特筆すべきが三上だ。中盤まで失踪したキャラクターで回想シーンのみだったが、第9話で本格登場したときの自然と引き付けられる佇まい。そこから劇中でも見る者にとっても、謎解きの中心人物として引っ張っていく。山田とはまた違った存在感で物語を盛り上げる。

さて、最終回まで配信され、ディズニープラスの公式YouTubeチャンネルでは、メイキング映像が公開された。そこでは細田らが役作りについて語っているほか、山田の特殊メイクの裏側もチラリ。特殊メイク+CG技術でできているとは明かされていたが、額の赤い石にCGで細工されていたことには気付かず、本編を見返して、こんな細かな表現がされていたのかと楽しんだ。映像表現、そして俳優陣の演技も、細やかに行き届いた魅力があった。

「七夕の国」(全10話)は、ディズニープラスのスターで独占配信中。

◆文=ザテレビジョンドラマ部





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