「自分のためのお詫びになっている」フワちゃんやす子への直接謝罪に“謝罪のプロ”は苦言

「自分のためのお詫びになっている」フワちゃんやす子への直接謝罪に“謝罪のプロ”は苦言

8月17日(土) 6:00

お笑い芸人・やす子(25)に対するXでの不適切投稿によって、現在は芸能活動を休止しているタレントでYouTuberのフワちゃん。

ことの発端は4日、Xでやす子の投稿に対して《お前は偉くない》《予選敗退でーす》などと誹謗中傷ともとれる内容をポストし、すぐさま削除したものの、たちまち拡散され批判が噴出。同日深夜、フワちゃんは《本当にすみません今ここで皆さんに報告することではないのですが、言っちゃいけないこと言って、傷つけてしまいましたご本人に直接謝ります》と謝罪した。

しかし、騒動は収まらず、5日のレギュラーラジオ番組『フワちゃんのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)が急きょ放送休止に。フワちゃんは同日、Xで2度目の謝罪をした。さらに翌6日には、フワちゃんが出演するGoogle PixelのCMも非公開となった。

8日には改めてXで長文の謝罪文を掲載し、やす子に直接謝罪したことを報告。不適切な投稿は、アカウントの乗っ取りや裏アカウントからの投稿ではなく、やす子のポストに対してアンチコメントがついたらという想定のもと打ったものが誤って投稿された操作ミスだったと説明した。

それでも批判はおさまらず、10日にはやす子がXで《フワちゃんさんのことめちゃめちゃ許してます!》と事態の沈静化を図ったものの、11日、フワちゃんはXに声明文を掲載し《この度の件の責任の重さを考え、一つの区切りとして、しばらくの間、芸能活動をお休みさせていただくことにしました》と活動休止を発表することとなった。

3度にわたる謝罪の後、最終的には活動自粛によって責任を取ったフワちゃんだが、ほぼ全ての仕事を失うなど窮地から脱したとはいまだ言い難い状況にある。そこで、「謝罪のプロ」こと危機管理コミュニケーション専門家の増沢隆太氏に、フワちゃんの一連の謝罪の問題点を聞いた。

「まず前提として、お詫びをすれば“何とかなる”というより、実際はお詫びしたら“何とかなる場合がある”ぐらいのものです。 さらに今回の場合はフワちゃんの元々の立ち位置というか好感度の問題もあって、スタートから不利でした。フワちゃんはある種の“ヒールキャラ”で仕事をされていたので、“もう見たくない”など反発も強く、そもそもマイナスからのスタートだったと思います。

それでも、問題の投稿の後すぐにそれを取り消して謝罪しました。謝罪のタイミングは良かったと思います。とにかく、すぐに対応したことは評価できるポイントです」

とはいえ、謝罪の仕方は危機管理の観点では“間違いだった”と指摘する。

「そもそも今回は内容があまりにも悪すぎて、お詫びで何とかなるレベルではないだろうなと最初から思っていました。パワハラは、個人の感覚に左右されるのではなく、厚生労働省が決めた明確なガイドラインがあります。そのひとつに”人格否定”があります。

つまり、“死んでください”という文言ひとつで完全に該当します。会社で上司が冗談でも『君、死んで』と言ったら、これはもうパワハラになってしまうんです。この単語を使った時点で、かなり致命的でした。なので本当はこの時点で“謝っても難しいだろうな”と見切って危機対応すべきでした」

ではフワちゃんは、どうすべきだったのだろうか。

「まず、お詫びと発言の削除をしました。次の段階では、やす子さんに直接お詫びをした。そして第3段階で、芸能活動自粛になりましたよね。この3段階がいわゆる“戦力の逐次投入”で、やってはいけないことでした。

例えば、災害時に自衛隊をちょっとずつ投入するのではなく、最初にドンと全部出して、必要がなかったら下げるというのがいわゆる危機対応です。フワちゃんのこの内容は、私だったら“これは相当まずいぞ”と思って、最初から無期限の芸能活動自粛を発表したでしょう。その上で、やす子さんにお詫びしますとやるべきでした」

過熱する世間からの批判に対し、対処療法的に徐々に謝罪の内容を強めていったフワちゃんだったが、それが裏目に出たようだ。

「何かが起きてから対処というのは危機対応ができていないということです。犯罪の場合は、危機対応も何もないですが、例えば不倫ならイメージの問題なので、上手く立ち回れば傷が浅く済む場合があります。

フワちゃんは、1番インパクトの大きいGoogleに切られる前に、自らCMを辞退して芸能活動も自粛するなどの手を打っていれば、多少は傷が浅くできたかもしれません」

また、操作ミスで意図せず投稿してしまったという説明も余計だったと指摘する。

「あの説明を信じた人がどれほどいるでしょうか。だからこそ逆に事実だったのかなとも思うのですが、真実だとしても誰も信じてくれないような説明は憶測を呼ぶだけなので不要です。食品偽装事件などでも、正直に仕入れの条件など説明すると、わかりにくくて嘘をついていると誤解されることがあります。

だから、わからないことを言っても何のプラスにもなりません。『私が不用意でした。軽いノリでしたが、被害者の気持ちを全く考えない愚かで最低な行為でした』とだけ言って謝るしかなかったんです」

しかし、再発防止の観点から、経緯の説明がないと、反省してないとみなされる懸念もないだろうか。

「その手のツッコミは、もう何をやったって絶対言われます。反省すれば、“反省すりゃいいと思ってんだろう”と言われるし、しなければしないで“お詫びする気はない”と言われる。これがまさに取り返しがつかない状態です。

だから、今回はそもそもの発言内容からも相当厳しいですが、1番最初に問題の大きさに見合った重いペナルティーを自分に課すこと、つまり活動自粛を出していれば少しは流れが変わった可能性もあったと思います」

また、被害者に直接謝罪しに行くことにも問題があるという。

「リスクは極めて大きいですし、私だったら絶対にさせません。芸能界にいるやす子さんは謝罪に対して“ノー”と言えるはずがありません。ということは、最初から許されることを前提に、自分のためのお詫びになっているので逆に印象が悪くなる可能性があるからです。

木下優樹菜さんのタピオカ騒動のときも謝罪に出向いて炎上していましたが、これは自分中心の考え方であって、全く問題解決にならないんです。本人がお詫びに行くのは場合によっては誠意ではなく、誠意の押し売りだと思います。私なら被害者が希望しない限りはやらせません」

ネットの普及により大炎上で表舞台から姿を消す人が後を絶たない昨今、危機管理の重要性が身につまされる。

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