【写真】苦笑いをしながら頭を抱える渥美清さん“山口善助”
BS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)の放送枠「よる8銀座シネマ」と「土曜ゴールデンシアター」では、8月19日(月)より、「男はつらいよ」シリーズ2作を含む、渥美清さん主演作8作品を一挙放送。また今回の放送に伴い、同シリーズの原作・脚本・監督を務める山田洋次監督と、同作で寅次郎(渥美さん)の妹・さくらを長く演じてきた倍賞千恵子よりコメントが到着した。
■おかしくも哀しい人情喜劇「拝啓天皇陛下様」
8月19日(月)夜8時からは「拝啓天皇陛下様」を放送。山田正助(渥美さん)は、物心もつかぬうちに両親と死別した。腹いっぱい三度のオマンマにありつけるうえ、俸給までもらえる軍隊は、正助にとって“天国”だった。意地悪な上官のイビリも問題ではない。昭和7年大演習の折、正助は天皇陛下の“実物”を見た。この日から正助は天皇陛下が大好きになる――。
8月20日(火)夜8時からは「続・拝啓天皇陛下様」を放送。ある事件で家族を失った山口善助(渥さん)は世間から馬鹿にされて生きてきた。昭和14年、善助に召集令状が届く。善助は、冷たいシャバよりはマシな世界だと思い、喜んだ。軍犬部隊に配属された善助は、ある犬の元の飼い主・ヤエノ夫人(久我美子)に憧れを抱く。混乱の戦後を善助はヤエノ夫人のために生きていこうとする――。
8月21日(水)夜8時からは「拝啓総理大臣様」を放送。角丸(渥美さん)は人が良すぎて要領が悪く売れない漫才師。そんな角丸のかつての相方であるムーラン(長門裕之)は、妻のルージュ(横山道代)と組んだ漫才で人気を博し、角丸とは対照的に売れっ子タレントに。そんな中、師匠の死に一念発起した角丸は上京してムーランと再会するが、ムーランは妻に浮気の現場を押さえられてそれどころではなかった――。
8月22日(木)夜8時からは「喜劇 急行列車」を放送。特急列車の専務車掌・青木吾一(渥美さん)は、17才から国鉄に勤務しているこの道20年のベテランで、鉄道一筋。そんな青木が、佐世保長崎行の特急「さくら」号に乗務した際、乗客の中に昔の憧れの君・塚田毬子(佐久間良子)を発見。すっかり動揺した青木は、車内放送用マイクのスイッチが入っているにもかかわらず、マイクに向かってかつての恋心を語り始め車内は大爆笑。さらには、ホステス5人組の貴重品や下着が盗まれるという事件まで勃発し、大騒動となってしまう――。
■四国のローカル駅を舞台に巻き起こる笑いと涙の物語「喜劇 団体列車」
8月23日(金)夜8時からは「喜劇 団体列車」を放送する。舞台は四国愛媛県。国鉄職員・山川彦一(渥美さん)は、奥道後温泉を近くにひかえた小さな駅、伊予和田駅に勤務する30歳の独身男で、母親と二人暮らし。赤字対策の団体旅行客獲得に忙しくする中、迷子になった子どもを押しつけられて大騒動が勃発。宇和島駅でやっと母親に坊やを引き渡すことができた彦一は、なんと、その子の母親で、学校の先生をしている美しい未亡人・志村小百合(佐久間良子)に一目惚れしてしまう。何となく浮かれ気分で帰路についた彦一だったが、そんな彼に見合い話が持ち込まれる――。
8月24日(土)夜9時からは「喜劇 初詣列車」を放送。上田新作(渥美さん)は、国鉄で働く長距離列車の車掌。しっかりものの女房・幸江(中村玉緒)と可愛い娘・鞠子とともに平凡だが幸せな日々を送っていた。そんなある日、先輩車掌の野々宮(西村晃)とともに、上越線の急行列車に乗務中、幼なじみの坂本美和子(佐久間良子)とバッタリ遭遇してしまう――。
8月26日(月)夜8時からは「男はつらいよ 純情篇 4Kデジタル修復版」を放送。長崎で赤ん坊を背負った絹代(宮本信子)と出会った寅さん(渥美さん)は、彼女を五島列島の福江島にいる父親・千造(森繁久彌)のところへ送り届ける。父娘愛を目の当たりにして里心がついた寅さんがとらやに帰ってくると、2階におばちゃんの遠縁の娘・夕子(若尾文子)が間借りしていた。夕子に惹かれる一方、義弟・博(前田吟)から仕事の独立話を相談された寅さんは、話をまとめるどころかこじれさせてしまう――。
8月27日(火)夜8時からは「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎 4Kデジタル修復版」を放送。大分県の湯平温泉の旅館で、三郎(沢田研二)という青年と出会った寅さん(渥美さん)。彼の亡くなった母親が昔、この旅館で女中をしていたことを知った寅さんは、知人を集めて供養を営んでやる。同じ旅館に泊まった螢子(田中裕子)たちと道連れになった寅さんは、三郎が運転する車に同乗させてもらって旅を楽しむ。その後、飛行機で東京へ帰るという螢子たちとの別れ際、三郎はいきなり螢子に「付き合ってください」と告白する――。
■山田洋次監督 コメント
この度、BS松竹東急で放送される渥美清シリーズを見ると、渥美清という俳優がいかに多彩な才能の持ち主であったかがよくわかります。特に「拝啓天皇陛下様」は、日本の軍国主義が貧しい農民に犠牲を強いることで成立する有様を笑いによって描いた、日本映画史の中でも傑出した喜劇で、鋭いギラギラする刃物のような渥美さんの笑いを、この「拝啓」シリーズで楽しんでいただきたいと思います。「喜劇列車」シリーズは肩の凝らない楽しい映画、今の日本映画にはあまり見られないタイプの作品です。このような多様な作品を経て、渥美さんは「寅さん」シリーズ一本に仕事を絞ることになるのです。
■倍賞千恵子 コメント
こちらがセリフをポンと投げると、渥美さんがポンと投げ返す。テンポよくセリフのキャッチボールを重ねて、どんどんテンションが上がっていく。歯車がぴったり噛みあった、即興演奏のかけあいのように、お芝居がどんどん進むと、あまりにもうまくいくことが、たまらなくおかしくなって、ある瞬間、爆発する様に、同時に吹き出してしまう。相性がよかったのか、間合いが合うのか、渥美さんとのお芝居では、そんな幸せな時間を何度も過ごしました。二人でお芝居をしたときにだけ体験した、特別な瞬間です。そして、渥美さんは、常に相手の立場に立って物を考えている方でしたから、普段の姿から「人の立場になって物事を考えることの大切さ」を学びましたし、何よりも「人間としてどう生きるか」「人はどうして生きていくのか」ということを教えてくれました。映画「男はつらいよ」シリーズは、「玉手箱」みたいな作品なのではないかしら、と思います。そこには、日本人の情や、今は失われてしまった風景など、たくさんの「宝物」が詰まっていて、観る度に、人として大切なことを思い出させてくれる気がします。ぜひ、皆さんにも、この「玉手箱」を開けてみてほしい、と願っています。
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