風間トオル、“何もできなかった”俳優デビューから35年ベテランのアドリブに驚かされた作品が転機に

風間トオル クランクイン!写真:上野留加

風間トオル、“何もできなかった”俳優デビューから35年ベテランのアドリブに驚かされた作品が転機に

8月14日(水) 7:00

沢口靖子が主演を務める人気シリーズ『科捜研の女』(テレビ朝日系/毎週水曜21時)。25周年、season24まで歴史を重ねた本作に、2011年よりレギュラーキャストとして出演しているのが、化学担当研究員・宇佐見裕也を演じる風間トオルだ。俳優デビュー35周年を迎え、60代に突入してもいつまでも変わらぬ爽やかさを放つ風間に、本作の魅力やこれまでの俳優人生のターニングポイントなどを聞いた。

【写真】還暦を迎えても変わらない爽やかさ!イケオジぶりに拍車のかかる風間トオル

◆進化する科学のスピードに負けない脚本が長年愛される理由

1999年のスタート以来、現行連続ドラマ最多シリーズ記録を更新し続けている本作。京都府警科学捜査研究所(通称・科捜研)の法医研究員・榊マリコ(沢口)を中心とした、ひと癖もふた癖もある研究員たちが、法医、物理、化学、文書鑑定などの専門技術を武器に事件の真相解明に挑む。最新の科学捜査テクニックと人間ドラマが絡みあうハイクオリティーなミステリーとして厚い支持を集めてきた。

2011年に化学担当の研究員として登場する前に、一度犯人役として出演経験もある風間。

「犯人役で出演した時に、科学から推理して事件を解決するというところに面白さを感じました。まさかレギュラーで入れるとは思っていなかったので、どんな感じだろう、ちゃんと科学者に見えないといけないなと思いました」。

演じる宇佐見というキャラクターは「化学が好きで没頭している。それで事件が解決していく面白味を感じ、そんな仕事をしていることを誇らしく思っているタイプ」と分析。シーズンを重ねるごとに宇佐見の役作りも深まっており、「どんどん科学が進歩するので、今まで知らなかったことを興味深く思ったり、台本にはないようなことでも知りたくて調べたりと、どんどん深みにはまっている感じがあります」と明かす。

長年愛され続ける本作の魅力を尋ねると「セリフにもあるんですけど、『科学は嘘をつかない』。科学で事件を解いていくという面白さにあると思います」と、ゲスト出演時に感じた最初の魅力が変わらず今も作品の柱にあることを挙げる。

「科学はどんどん発展しているじゃないですか。これまで知らなかったようなことが毎回出てくるので、演じていてもすごく楽しいですね。3Dプリンタなんて、この作品で初めて知って。実際に使っている神戸のラボをお借りして撮影したんですけど、興味津々でしたね。『え!これで、なんでもできるの?』『家もできるのかな?』ってみんなで言っていたら、今、3Dプリンタで家もできるんですよね。そんな最新技術をどんどん取り込んで、今回も新しい科学の力でびっくりするものがたくさんあるので、科学が続くかぎり、『科捜研の女』も成長していくのかなと思います」。

◆暑い夏や寒い冬の撮影はあるも「京都での生活は楽しい」



現在放送中のseason24からは加藤諒が新メンバーとして加わり、「愛されキャラなので、より現場が和んでいい感じで撮影できています」と新シーズンにも手ごたえを感じている。沢口をはじめとする科捜研のメンバー、土門刑事を演じる内藤剛志、法医学教授・風丘早月を演じる若村麻由美ら、おなじみの顔ぶれがそろう撮影現場は「皆さん長いんで、親戚が集まったみたいなホッとする感じ」があるそうだ。

そんなメンバーを束ねる座長・沢口靖子の印象を尋ねると、「あまり私生活が見えないので、謎ですよね。朝、赤飯を食べているというのは聞いたことがありますけど」と笑う。「やっちゃん(沢口)はすごく明るいから、撮影が押してきても、彼女がいるだけで現場が明るくなる感じがあります」との答えが。「自分が知りたいことや分からないことは突き詰めて、監督に聞くなどクリアにしています。そんなやっちゃんについて行こうという雰囲気が現場にはあふれてますね」と絶大な信頼を寄せている。

過去には2クールでの放送や、1年4クールを通して放送されたこともあり、京都のうだるような暑い夏や底冷えの厳しい冬の撮影も経験した。

「夏の撮影は多いですね。夏の京都の主演はやらないっていう役者さんもいるので、やっちゃんが一手に引き受けているのかなって思ってたんですよ(笑)。夏も冬もロケはどっちもつらいです。冬のロケで若村さんと大覚寺の池の前で話すシーンで、あまりの寒さに口が回らず、お互い何を言っているのか分からなくてNGになったこともありました。でも最近はラボでのシーンが多いので、暑いとか言ったら怒られますね」。

そうは言いつつも、京都での撮影は楽しいそうだ。

「情緒もありますし、仕事とはいえこれだけの長い期間京都にいられるっていうのは自分の人生の中の財産だなと思って堪能しています。最近は外国人観光客の方が多くて、なかなか京都の名所でロケをするのも難しい感じもありますが、枯山水からヒントを得て事件を解決するとか、大文字焼きからヒントを得るといった京都らしさがある回は好きですね。自分でやっていても楽しいですし、見ていても京都を感じるところがいいですよね」。

◆俳優デビュー35周年ベテランのアドリブに驚かされた作品が転機に



「MEN'S NON-NO」などでモデルとして活躍し、1989年放送のドラマ『ハートに火をつけて!』で俳優デビューを果たしてから35年が経つが、元々俳優志望だったわけではなかった。

「お芝居とかやったことがなかったので、実際にテレビで自分の演技を見てびっくりしました。仕事として全然できてないなって。セリフを言っても聞き取れないから、浅野ゆう子さんがお客さんに伝わるように僕のセリフをリピートしてくれたこともありましたね」。

そんなスタートから、35年続けられたのは「皆さんのお力のおかげ」と感謝する。

「ゆう子さんもそうですが、周りの俳優の方たちが、僕があまりに何もできなかったので、自分の出番じゃないところでもセリフ合わせをしてくれました」。

そんな35年の俳優人生の中でターニングポイントとなった作品を聞くと、1991年公開の岡本喜八監督による映画『大誘拐』を挙げた。

「初めて映画って面白いなと思わせてくれた作品で、やっていて面白かったです。前もって台本を読んでいるんですけれど、『この後どうなるんだろう?』っていうくらい、役者さんが台本通りじゃないことをするパターンが多くて(笑)。『え!こんなアドリブしたら次どうなるんだろう?』という楽しみがありましたね。1ヵ月くらいみんなで同じ旅館に泊まっていたのですが、言えないハプニングがいっぱい(笑)」。

それまでトレンディードラマで共演するキャストとは年齢も経験も違う、北林谷栄、緒形拳、樹木希林とベテランぞろいの共演陣からは学ぶことも多かった。

「演じる人物の、生きている前後が見えるということが大事だなと感じさせられました。昔どんな子が大きくなって今こういうことをしているのか、そういうプロセスが見えると言いますか。演じるのはすごく難しいんですけど、そういうことをやっている方が多かった。体から何か違うものが出ているなと感じました。緒形拳さんは、演じている時のダイナミックさと、普段はこんな適当でいいんだ!というギャップっていうんですかね…そのギャップもまた演技で使うんだと思うんですけど。何かを言われて衝撃を受けたというよりは、いろいろ見させてもらって教えてもらったという感じがあります」。

ドラマ以外にバラエティー番組などでも活躍する風間。今後の活動の目標などはあるだろうか?

「ドラマに出る前は『笑っていいとも!』などのバラエティーにも出ていましたし、楽しいのは好きなんです。俳優としては、コメディが好きなんで、コメディができる人になりたいですね」。

60代になっても、変わらない大人の男の爽やかさでイケオジぶりを発揮している。

「体のために運動は定期的にしてますね。役がある時はそれに適合した筋肉をつけたりしますが、最近はそんなに筋肉をつける役もないので少し楽です(笑)。夏なので泳ぎたいんですけど、日焼けしちゃうじゃないですか。それは『科捜研』に支障が出てしまうので。クランクアップしたらがむしゃらに泳ぎたいなと思っています」。(取材・文:渡那拳写真:上野留加)

ドラマ『科捜研の女 season24』は、テレビ朝日系にて毎週水曜21時放送。

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