芸能活動休止という事態を招くに至った、
フワちゃんのやす子に対するXでの暴言投稿問題。
大炎上の末、当人の直接謝罪、当のやす子も深く傷き悲しんでいたようだったが争う姿勢は最初からなく、一応この件については収束に向かったといえる。
今回の投稿は、やす子以上に多くの人の
「許容」
を超えてしまったことが大炎上につながった。これまで許容してきたタメ口、呼び捨て、失礼キャラのようなものが、投稿ひとつで一気に逆目に傾いてしまった状況だ。
日本社会において“異端”のタメ口キャラ
たけしやさんま、黒柳徹子にもタメ口、呼び捨てで話す。古くはとんねるずやダウンタウンも大きく分ければその範疇に入るのかもしれないが、芸歴や格など上下にこだわることの多い芸能界においては、タメ口キャラは異端である。
もちろん、それを嫌悪したり、生意気、苦手と感じる人も一定数存在する。
異端であるゆえに、その距離の近さは、ある種珍獣のように興味を持たれるターンにひとたび入ると、「頭の回転が早い」「実は空気が読めている」「明るい」「楽しい」「おしゃれ」などなど、そのハッキリした物言いも、どんどん好感に結びついていく。
基本的に敬語社会の日本では失礼になりかねないタメ口キャラは、その属性のようなもので許されるところが大きいのではないだろうか。
フワちゃんも“異端”として受け入れられていた
フワちゃんの場合も、
「(タレント、芸人ではなく)ユーチューバーだし」「帰国子女だし」
という属性を、お茶の間が勝手に咀嚼・変換して受け入れてきた気がする。指原莉乃と仲良しという部分もまた、お茶の間の知名度と好感度を獲得する過程においてプラスに作用しただろう。
マイナスのイメージからスタートすることからのギャップは大きい。不良だと思ってたやつが実はすごくやさしいみたいなアレだ。
そうなると、茶の間の好感度は一気に上昇のターンになる。お笑い系バラエティばかりか、報道系の情報バラエティなどでも、タメ口キャラは臆せずしっかりと自分の意見を言えているように受け入れられた。
しかし、急速に上がった好感度は、ともすれば転がり落ちるスピードも早い。いわゆる
“てのひら返し”
が起こってしまう。「いい子だと思ってたのに」「好きだったのに」「作り物のキャラだったんだ」となる。
タメ口が許されていた女性芸能人の“属性”とは
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先に述べた通り、タメ口的距離感の女性芸能人は、フワちゃんが突然変異的に登場したわけではなく、さほど珍しい存在ではない。パッと思い浮かべてみると……
ローラ、水沢アリー、森泉、ダレノガレ明美、木下優樹菜
……炎上&手のひら返しに陥ったひとがそれなりに存在するところが興味深い。この芸能界の女性タメ口キャラ、前述した「属性」は、いくつか分けられるような気がする。
・ハーフ、クォーター枠
・帰国子女枠
・セレブ枠
・ギャル枠
・天然/おばか枠
ひとつひとつ詳細に語ると長くなるので省くが、海外的なスタンスだから、ギャルだから……それぞれ多くの人にとってはマイノリティの存在、自分たちと違う存在としてまず認識するからこそ、「そういうもの」として許容するのだろう。
しかし、「そういうもの」であるからこそ、今回のように自分たちの許容できる枠からはみ出すことがあると、一気に掌返しが起こってしまう。
多くの場合、タメ口は一般社会でも唐突に使われると「なんだこいつ!?」という反応、受け止められ方をするものである。それがキャラなんだ、育ちや慣習の違いなんだと飲み込めると、理解度を深める過程を何ステップかスキップして近しい距離になれることもある。
しかし、この「スキップ」こそが、タメ口キャラの最大の弱点なのかもしれない。
つまり、タメ口はその人それぞれの「そういうもの」属性と、どこか愛嬌があって憎めないなどの受け入れられ方、そういったものが絶妙でギリギリのバランスが「好感」を生み出しているのだろう。
タメ口キャラの枠は存在し続ける
ギリギリのバランスであるからこそ、ちょっとしたことで一瞬で壊れてしまう。
「ほらやっぱりそうじゃん!」
と掌返しされる。
それがフワちゃんであり、ダレノガレや水沢アリーなどバッシングされたタレントたちの通ってきた道だ。失言や誤爆ではなくLINE流出ではあるが、ベッキーの「センテンススプリング!」もわかりやすい一例だろうか。
ギリギリで保たれていたバランスを、再び同じように戻すことは相当難しいかもしれない。再びフワちゃんのタメ口が聞ける日は来るだろうか。そして、新たなタメ口キャラの人気者も、きっとそう遠くないうちに登場するのだろう。「枠」は変わらず存在するわけなので。
<文/太田サトル>
【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。
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