『地面師たち』だけじゃない!衝撃事件を元にした名作邦画振り返る

(左上から時計回りで)ピエール瀧、柳楽優弥、綾野剛、でんでん クランクイン!

『地面師たち』だけじゃない!衝撃事件を元にした名作邦画振り返る

8月12日(月) 7:00

今夏のドラマは、綾野剛と豊川悦司がダブル主演したNetflixシリーズ『地面師たち』が話題を独占中だ。本作は、土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、多額の代金をだまし取る不動産をめぐる詐欺を行う「地面師」を描いた作品で、原作小説は、2017年に実際に起きた被害額約55億円に上る「積水ハウス地面師詐欺事件」がモデル。『地面師たち』だけではない。本邦には実際の事件をモデルやモチーフにした作品に名作が多い。今回は、2000年以降にしぼり、衝撃事件・凶悪事件をモデルにした映画作品を紹介したい。

【写真】『地面師たち』だけじゃない!衝撃事件・凶悪事件を元にした名作映画<フォトギャラリー>

『誰も知らない』

是枝裕和監督による2004年公開の映画『誰も知らない』は、1988年に発生した巣鴨子ども置き去り事件を題材としている。この事件は、父親が蒸発後、母親も5人の子を置いて家を出ていき、ほぼネグレクト状態の中で起きた悲劇だ。母親は現金を置いていき、ときおり様子を見に戻っていたというが、10代だった長男が三女の妹を暴行して殺してしまったほか、通報を受けた警察によって発見された際には、まだ乳児だった三男が白骨化した遺体で見つかっている。

そんな事件を題材にした『誰も知らない』は、母親役をYOUが演じ、主人公の長男役をまだ子役だった柳楽優弥が演じた。柳楽は本作における演技で、第57回カンヌ国際映画祭で史上最年少、そして日本人で初めて最優秀主演男優賞を受賞し、世界的にその名が知れわたることに。なお、映画で柳楽が演じた長男は、弟・妹思いの優しいキャラクターとして描かれている。

『日本で一番悪い奴ら』

2016年公開の白石和彌監督『日本で一番悪い奴ら』のモチーフとなったのは、北海道警の警官だった稲葉圭昭が引き起こした“日本警察史上、最大の不祥事”とされる「稲葉事件」だ。現役警官の稲葉が、裏取引で手に入れた拳銃で検挙数を水増ししたほか、金に困きゅうして覚せい剤の密売にまで手を染め、自らも使用するという不祥事だった。

本作で主人公の諸星要一を演じたのは、奇しくも『地面師たち』で主演した綾野剛。役作りで10kgの増量を行い、正義を目指して警察官になったはずが、次第に悪に染まっていく様を熱演している。

『愛なき森で叫べ』

1996年から2002年にかけて起きた北九州監禁殺人事件に着想を得て制作されたのが、園子温監督によるNetflixオリジナルの配信映画『愛なき森で叫べ』だ。ある1人の男が、交際相手だった女の家族に入り込み、言葉巧みに家族を操り、お互いを憎ませ合い、虐待、さらには殺し合いにまで発展させた異常性は、戸田正義による傑作ルポタージュ『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件』が克明に明かしている。

『愛なき森で叫べ』では舞台を東京に移し、言葉巧みに周囲の人間を操っていく冷酷な男を、椎名桔平が怪演している。

『地面師たち』で共演のピエール瀧&リリー・フランキーが最恐犯罪コンビを熱演!


『冷たい熱帯魚』

『愛なき森で叫べ』と同じ園子温監督による2011年公開の映画『冷たい熱帯魚』は、1993年に起こった埼玉愛犬家連続殺人事件をベースとした物語。犬猫繁殖販売業を営んでいた男が前妻と共謀し、外国犬の取引でトラブルになった顧客ら4人を猛毒「硝酸ストリキニーネ」で毒殺。さらに、ペット販売会社役員の男の自宅で解体・焼却した上で遺棄した事件だ。

そんな事件をベースにした『冷たい熱帯魚』は、事件に巻き込まれた形の熱帯魚店店主・社本を吹越満が演じ、彼を事件に巻き込む別の熱帯魚店・店主をでんでん、その妻を黒沢あすかが演じた。特にでんでんは、優しげな「おじさん」の風ぼうをしたバイプレーヤーとして当時すでに認知されていたが、本作で演じた最凶最悪の殺人鬼役によって新たな魅力を発掘されたと言って過言ではない。なお本作と『愛なき森で叫べ』、さらに1997年に起きた東電OL殺人事件がベースにした園監督の『恋の罪』を合わせて、「家賃3部作」と称されている。

『凶悪』

『日本で一番悪い奴ら』と同じ白石和彌監督による2013年公開の映画『凶悪』は、1999年に起きた「上申書殺人事件」をモデルにした作品。ある別の事件で死刑判決を受けた元暴力団組長の男が、提出した上申書で告発したことをきっかけに発覚した事件で、男が“先生”と慕う不動産ブローカーと共謀し、金銭トラブルなどの相手を次々に手をかけていった残忍な事件だ。本作の原作となったのは、獄中の男に取材を続け、事件の真相を告発した新潮45編集部によるノンフィクションベストセラー小説『凶悪 -ある死刑囚の告発-』だ。

『凶悪』には、『地面師たち』にも出演していたピエール瀧とリリー・フランキーが共演。『地面師たち』ではほとんど絡みがない2人だが、『凶悪』では回想シーンで残忍な犯罪コンビを怪演している。そんな2人の事件の真相を追うスクープ雑誌「明潮24」の記者を、山田孝之が演じている。

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