【写真を見る】一枚の絵をきっかけに、八虎の運命は大きく動きだしていく(『ブルーピリオド』)
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、山口つばさの同名漫画を眞栄田郷敦主演で実写化した青春ドラマ、はまじあきの4コマ漫画原作の同名アニメの劇場総集編の後編、バズりに魅了されたインフルエンサーを描くダークスリラーの、ドキドキする3本。
■経験に裏打ちされたリアリティあふれる受験ドラマ…『ブルーピリオド』(公開中)
「マンガ大賞2020」をはじめ、多くの漫画賞を受賞し、アニメ化もされた大ヒットコミックを『サヨナラまでの30分』(19)の萩原健太郎監督が実写映画化。成績も良く、友だちづきあいも上手にこなしながら、自分には本気で好きなものがなにもない…と空虚感を抱いていた主人公の高校生、矢口八虎(眞栄田郷敦)が、一枚の絵との出会いをきっかけに、日本一受験倍率が高いことで知られる超難関、東京藝術大学絵画科の合格を目指して突っ走る!
藝大卒の原作者、山口つばさの経験に裏打ちされたリアリティあふれる受験ドラマの熱気を、眞栄田郷敦、高橋文哉、板垣李光人が生々しく、泥臭く、そして最高にかっこよく体現。剣士役の俳優が剣術を稽古するように、本作のキャストは筆を手に長期間、絵画練習を徹底的に重ね、吹替なしで絵を描くシーンに強い説得力を持たせている。主人公、八虎が描いた劇中絵画として登場する、眞栄田本人による作品も必見。原作で絵画部分を担当した作家と同じ人に依頼した絵画の数々、萩原監督が得意とするVFXを効果的に使った心象風景の描写など、実写化ならではの見どころもたっぷりだ。印象に残るのは、劣等感、焦燥、嫉妬に苦しんでも、自身の努力で乗り越えようとする登場人物たち全員の心の美しさ。大人になっても自分が好きなことは何なのかを見つめ直してみたくなる。(映画ライター・石塚圭子)
■前編でも好評だったマナームービーも健在…『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』(公開中)
引きこもり寸前だったぼっちこと後藤ひとり(声:青山吉能)が、ひょんなことでガールズバンド“結束バンド“に加入。個性豊かな仲間たちに揉まれながら、どん底だった人生が少しずつ明るく変化していく。芳文社「まんがタイムきらら MAX」連載のはまじあきによる漫画を原作に、2022年に放送されるや社会現象となったテレビアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」を再編集した2部作の後編。前編でも好評だったマナームービーも健在だ。
「ぼっち・ざ・ろっく!」は、なんと言っても音楽が魅力。フルアルバム「結束バンド」は2023年、オリコン「作品別売上数部門・デジタルアルバムランキング」で1位を獲得、この夏は国内最大級のロック・フェスティバル「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024」にも出演をはたした。後編の見どころは、テレビアニメでも話題になった、ぼっちが文化祭でボトルネック奏法を披露するシーン。映画館の大スクリーンと大音響で聴く「星座になれたら」は、まるで文化祭会場で聴くような迫力だ。また前編同様、後編でも新曲が主題歌に起用されていて、つ、ついにあの人が楽曲を!それを聴くだけでも観る価値がある。(ライター・榑林史章)
■SNSが浸透した現代の危うさをあぶり出す…『#スージー・サーチ』(公開中)
幼いころから推理が特技だった主人公スージーは、ポッドキャストで未解決事件の独自調査を配信している女子大学生。そんな彼女が行方不明になったインフルエンサーの同級生を救出し、一躍地元のヒーローになるが…。Z世代のアマチュア探偵である主人公の活躍を描くミステリー映画と思いきや、前半のうちにあっと驚く展開が待ち受け、SNSが浸透した現代の危うさをあぶり出すダークな青春ドラマへと発展。インフルエンサー誘拐事件を引き起こした人物の意外な正体と、その犯行動機とは?
新人のソフィー・カーグマン監督のポップな語り口、製作総指揮を兼任した主演女優カーシー・クレモンズの表情豊かな演技が、映画に軽やかなテンポをもたらし、最後まで目が離せない。サスペンスとユーモア、そしてシニカルな社会風刺が絶妙のバランスで混じり合った一作だ。(映画ライター・高橋諭治)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼
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