【写真】川遊びを楽しむ村瀬幸子“鉦”の4人の孫たちとリチャード・ギア“クラーク”
生涯に30本もの映画を手掛けた、“世界のクロサワ”こと黒澤明監督。BS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)では、「よる8銀座シネマ」枠にて8月8日(木)、8月9日(金)の2夜連続で、「まあだだよ」「八月の狂詩曲」の2作品を放送する。そこで今回は、両作品のあらすじや見どころについて紹介していく。
■映画界に伝説を残した黒澤明監督が表現する世界とは
「生きる」や「七人の侍」、「羅生門」など名だたる作品を生み出し、数多くの海外の映画祭にて輝かしい受賞歴を持つ黒澤監督。
実際、1951年に「羅生門」がベネチア国際映画祭でグランプリを、1952年に「生きる」がベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞。その後1959年に黒澤プロダクションを設立し、生涯にわたり30本もの作品づくりに没頭した。
そんな黒澤監督の作品が評価される理由は、時代を先走る“斬新かつ独創的な表現力”の部分が大きい。「羅生門」に取り入れられた藪の中の炎暑や、「七人の侍」における豪雨の中の決闘など、演出効果を高めるような表現技法を取り入れ、映画作品の可能性を世に広げた。
■監督50周年の記念すべき遺作「まあだだよ」
BS松竹東急では、8月8日(木)夜8時より監督生活50周年、第30作目の遺作となる「まあだだよ」(1993年公開)を放送。本作は、随筆家として今も人々に愛される内田百けんと、その弟子たちとの交流をほのぼのとしたタッチで描いた心温まる物語だ。
ある日、長らく大学でドイツ語を教えていた内田百けんは、文筆に専念するために教職を退くことを宣言する。教え子たちは悲しみ、「学校の先生を辞めても先生は先生です」と、敬愛する教師の新たな門出を見送った。しかしその後も何かと内田家に押しかけては団らんを楽しむ教え子たちにより、のちに「摩阿陀(まあだ)会」という内田百けんの誕生日を祝う会が開催されるようになり――。
本作では、テレビドラマ「男はつらいよ」シリーズの2代目“おいちゃん”役で知られる松村達雄さんが主人公の内田百けん役に抜擢された。実は松村さんは長いキャリアの中で、本作が初の映画主演作品となり、絶妙な名演技を披露している。
その他にも、内田百けんの教え子である生徒の一人を所ジョージが演じている。
■家族の愛と平和のメッセージが込められた「八月の狂詩曲」
8月9日(金)夜8時からは「八月の狂詩曲」(1991年公開)を放送。芥川賞受賞の村田喜代子氏による小説『鍋の中』が原作で、ハリウッドスターのリチャード・ギアが出演したことでも話題を呼んだ。
ある日、山村に住む鉦(村瀬幸子)のもとに、兄でハワイの大富豪・錫二郎の息子であるクラーク(リチャード・ギア)から、“不治の病で余命短い錫二郎が、死ぬ前に会いたい”という旨のメールが届く。きょうだいが多い鉦には錫二郎の記憶はなかったが、親戚が“富豪”だと聞いた息子と娘は、ハワイに飛んで行ってしまう。それによって残された4人の孫たちは、夏休みに鉦の家で過ごすことに。そうこうしているうちに、突然クラークがハワイからやって来て――。
本作では、孫たちが長崎にある鉦の家で過ごしている間、長崎の街にある戦争の傷跡や、鉦から原爆で祖父を亡くした話を聞いたりすることで、少しずつ鉦の気持ちを理解するようになっていく。そんな本作は、家族の愛と希望、そして平和のメッセージが込められた一作と言えるだろう。
また作中で、友好的なキャラクターを演じるリチャード・ギアは非常にさわやかに映り、片言な日本語もかえって好印象を与えていた。さらに、少年時代の吉岡秀隆のフレッシュな演技が楽しめる点も見どころの一つだ。
※内田百けんの「けん」は、門がまえに月という字。
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