眞栄田郷敦が主演を務め、国内最難関の美術大学合格を目指す高校生とライバルたちの情熱ほとばしる青春模様を描く映画『ブルーピリオド』。本作でお笑いコンビ・ずんのやすが、眞栄田演じる一人息子の奮闘を言葉少なながらも温かく見守る父親を好演している。相方・飯尾和樹につづき、近年俳優活動にも積極的に取り組むやすに本作の撮影エピソードや、来年結成25周年を迎えるコンビに対する思いを聞いた。
【写真】渋い性格俳優のよう!ずん・やす撮り下ろしショット
◆一人息子を陰ながら応援する父親役を好演自身の父を思い出し役作り
本作は、マンガ大賞2020に輝いた山口つばさの同名漫画を実写映画化。高校生の主人公・矢口八虎(眞栄田)が、1枚の絵をきっかけに美術の世界に本気で挑み、国内最難関の美術大学を目指して奮闘する姿を描く。やすは、石田ひかり演じる母・真理恵と共に、突然美術に打ち込み始めた息子を心配しながらも温かく応援する父・行信を演じる。
俳優活動では、映画『沈黙のパレード』やドラマ『アンナチュラル』などで相方の飯尾が評価を集める。一方のやすも、映画『ロストケア』やドラマ『下剋上球児』など出演作が続いているが、本作出演オファーには驚きがあった。「息子が郷敦くんで、奥さんが石田ひかりさん。え!何かの間違いじゃないかな?と思いました。萩原健太郎監督とは2度ほどお仕事をしたことがあったので、それで声をかけてくれたんですかねぇ」と振り返る。出演が発表になり、相方・飯尾の反応を尋ねると、「ブルーリボン賞取ってるんですよ、あの人。『俺は取ったからお前も追いつけるように頑張れよ(笑)』と言われてキッ!っとなりました(笑)」と教えてくれた。
「台本を読ませていただくと、めちゃくちゃいい本で!セリフが少ないのも安心しました(笑)」と謙遜するが、セリフは少ないながらも、家族のために黙々と一生懸命働き、息子の挑戦に対してつかず離れず優しく応援する姿は、温かさと存在感が心に残った。「お母さんがすごく心配しながら応援しているので、その周りでウロウロしている感じのお父さん。息子の夜食のおむすびをアチアチ言いながら作るシーンは『ブルーピリオド』の中の自分の名シーンでしたね」と笑う。
役作りにあたっては、自身の父親の姿も思い出したそうで、「ああいう時っておふくろのほうが距離が近いじゃないですか。親父ってちょっと距離感ありますよね。本当はかわいいし、めっちゃ好きなんで『八虎~』と抱きしめたいんですけどね。淡々と仕事をして見えないところで支えているっていう感じなのかな。それがちょっとでも出せたらなと思いました」と、役はもちろん家族にも愛情を持って撮影に臨んだ。
◆息子・眞栄田郷敦、妻・石田ひかりの矢口家は自慢の家族
映画のプロモーションで『さんまのまんま』に眞栄田郷敦と出演したやすの姿は、自慢の息子を尊敬する上司の家に連れてきた父親のようで、ほほえましかった。そう伝えると、「郷敦くんが『やすさんがお父さんでよかった』って言ってくれたんですよ。男同士なんて父親に自分の気持ちを言わないじゃないですか。息子の本音を直接聞けた感じで、あれは本当にうれしかったな~」と本当の父親になったような気持ちでいる。眞栄田については「目力がものすごい。玄関で2人でしゃべるシーンがあるんですけど、吸い込まれそうになるんですよ。『やすさん、近づきすぎてます』と監督に注意されて2回NGを出しちゃったくらい。吸引力というか人間としての魅力というか、あんなこと初めてでしたね。すごい人だなって思いました」と感心。
「矢口家はあのお母さんがいないと成り立ってないですよね」と絶賛する妻役の石田ひかりの人柄にも助けられたそう。「ものすごく気さくで、スタッフさんやみんなに『元気?』って話しかけていました。台所にあった豆苗にも話しかけてたんですよ。『育ってるね!』って(笑)。劇中でも撮影現場でも石田さんの周りの空気が温かくなっていましたね」と語るなど自慢の家族のようだ。「独身なんです、僕。一人暮らしなんで、撮影が終わって家に帰った時にすごくさみしかったですね。あそこに帰りたいなって思いました」。
演技の仕事は大好きだと語るやす。「スタッフさん含めてみんなで1つのシーンを一生懸命作っている、そこにいるのが大好きなんです。待ち時間も全然つらくないんです」と明かし、「お笑いの現場ではないんですけど、映画とかドラマの現場ではめちゃめちゃ褒められるんですよ(笑)。お笑いの時は怒られたりダメ出しばかりで褒められることは一切ないんです。芝居の現場ではいっぱい褒められるんで、いくらでもやりたい。あははは」と意欲を見せる。
とはいうものの、演技にはお笑いの現場での経験が活きているそう。「毎年先輩の関根勤さんと一緒にやっている舞台のコントでテンポとかは鍛えられているんで。それに、相方とやるコントも、なんせブルーリボン賞を取っている相方とのコントですからね。演技は鍛えられていると思います」と笑顔を見せた。
◆相方・飯尾は「いなかったら仕事にならない。全部甘えてます」
2000年に結成したずんは来年25周年を迎える。やすにとって、相方・飯尾和樹はどんな存在なのだろう?「いなかったら仕事になんないんですよ。ずっとフォローしてもらってますからね。相方のモットーはですね、『笑いの現場でMCに甘える』。その相方に全部甘えてますもん。フォローしてくれる相方がいないと仕事にならないんですよ」ときっぱり。『マツコ&有吉 かりそめ天国』での食レポなど、コンビでの仕事では、普段温厚な飯尾がやすに対して当たりが強いのも面白い。「あれがずんのやりとりなんですよね。相方は年が1つ上で芸歴も先輩。胸を借りてる感じですよ」。
デビューから33年目となるやすにとってのターニングポイントは、相方・飯尾とコンビを組んだ時だとの答えが。「前のコンビを解散して、ピンになった飯尾さんが『やす、やろう!』って言ってきたんです。その時に僕は仕事がなさ過ぎて周りが見えなくて、先輩が一緒にやろうと言ってきているのに、『俺と組みたかったら、今やっている仕事を全部0にして来てくれますか?』って答えたんです(笑)。頭おかしいんですよ、自分は足並みをそろえることしか頭にないから、俺に足並みそろえろよって訳の分からないことを言って。相方はもうこいつとはやれないと思ったらしいですけどね」と振り返る。
「ただその時に、もう芸人を辞めてしまったのですが同期のアラちゃんが仲を取り持ってくれたんですよね。『やすさん、絶対に飯尾さんとやってください』ってげんこつくらって、飯尾さんには『やすさんは精神的に参っていておかしくなっているんで』って電話してくれて。そこから、『じゃ考えてみようか』『お願いします』となり…。一番最初にずん史上一番揉めてるんです。あの時、アラちゃんがいなかったらどうなっていたか。恩人ですね」。
25周年に向けて何かスペシャルな企画なども期待されるが、「それがなんにもないんです(笑)。相方は何か考えてるのかな?」と、ここも頼りっきりなスタンスは変わらず。それでは今後の活動の目標は?「コンビの仕事を増やしたいですね。いつかは冠番組も持ちたいです。華大、タカトシの番組などにゲストで行くんですけど、いつかはゲストで来てもらう。そういう夢がありますね。ま、全部相方に丸投げになるんですけど(笑)。あとはブルーリボン賞を取りたいです!『ブルーピリオド』で近づきましたかね?(笑)」。(取材・文:渡那拳写真:高野広美)
映画『ブルーピリオド』は、8月9日公開。
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