フジロック『WEEKEND LOVERS 2024』“with You”に込められた1時間の濃密なステージをレポート「The Birthdayです」

WEEKEND LOVERS 2024 “with You”

フジロック『WEEKEND LOVERS 2024』“with You”に込められた1時間の濃密なステージをレポート「The Birthdayです」

8月2日(金) 18:00

提供:

Text:秋元美乃

2024年7月26日から7月28日の3日間にわたり、新潟県湯沢町苗場スキー場にて『FUJI ROCK FESTIVAL’24』が開催された。ここでは、その3日目、レッドマーキーで行われたWEEKEND LOVERS 2024 “with You”のステージについてお届けする。

WEEKEND LOVERSはもともとチバユウスケと中村達也が主宰として、ROSSO&LOSALIOS presentsによるオールナイトのサーキットイベントとして2002年にスタートした。その後、オールナイトではなく形態を変えた2008年、対バン形式の2013年と続き、11年ぶりの開催となった今回。久々に開かれるこのロックンロール・パーティを見逃すまいと14時の開演前から会場のレッドマーキーは満場で、メンバー自らによるサウンドチェックに至る所で歓声があがっていた。ステージだけでなくフロアの準備もすでに万端の状態に。思い思いのTシャツやグッズを身につけて、いざ始まりの時を待つ。

すると「千秋楽!」とチバの声が。その声に続いて<WEEKEND LOVERS 週末の恋人よ/WEEKEND LOVERS 爆音のチークタイム/WEEKEND LOVERS 愛ならここにある/WEEKEND LOVERS 踊ろうよ踊ろうよ>―― 2013年に披露された、このイベントのテーマ曲といえる楽曲が流れ、不意を突かれたその歌声に思わず空を見る(レッドマーキーはテントステージなので、実際には空は見えないけれど)。そして大歓声とともにLOSALIOSが登場。パーティが始まった。

LOSALIOSの途切れぬ音塊は「HAE」からスタート。中村達也(ds)、TOKIE(b)、堀江博久(key&g)、加藤隆志(g)、會田茂一(g)。このメンバーから放たれる重くうねるビートとグルーヴにフロアの熱も急上昇。起伏をつけながらぐいぐいと高まっていくサウンドの熱波に巻き込まれたら最後、抗う術がない。中村のシャウトが天を突き抜ける。ハードボイルドに輪をかけたヘビーなナンバー「Hit Man」、スリリングに駆け抜ける「SICK」「IQ69」と、怒涛のインストゥルメンタルは実に雄弁で、その音を浴びているだけでさまざまな情感を呼び起こされた。破天荒なだけではない、柔軟な色合いを併せ持つメロディとリズムが生命力を生み、聴くものの心を躍らせる。

ステージとフロアに現出した、そんなダイナミズムの応酬に身を委ねていると「CISCO〜想い出のサンフランシスコ(She's gone)」のイントロが。そして曲中に中村がThe Birthdayのメンバーを呼び込み、2バンドによる一大セッションへと突入。フロアから沸き起こる「CISCO!」の雄叫びとモッシュの渦。とっくに沸点を超えていた場内はさらなる熱気を立ち込めてロックンロール・パーティを加速させた。

舞台はそのままクハラカズユキ(ds)、ヒライハルキ(b)、フジイケンジ(g)が残り、The Birthdayのパートへ。クハラによる「The Birthdayです」といういつもの第一声がたまらなくうれしい。

1曲目は「月光」。ヒライが前に出るとともに大歓声が起こった。今回、ゲストボーカルなどは発表されていなかったためどんなステージになるのかと思っていたのだが、ドラム、ベース、ギターの音のみで曲が進むにつれ、最初は言いようのない感情が押し寄せた。フロントのあいたステージ。歌われない歌詞。チバの不在を目の当たりにして心が震えた。と同時に、どんな形になっても薄れない楽曲としてのかっこよさも再確認し、その両極で心が揺れた。しかし、フジイが歌詞のいちフレーズ<お前の想像力が現実をひっくり返すんだ>と叫んだ瞬間、パッと目の前のステージに光が射した。The Birthdayとしてステージに立つ目の前のメンバーがやけにまぶしく頼もしい。

3人の音の鳴りがよく聴こえる。ヒライとフジイが前にせり出し、フロア全員で歌った「I SAW THE LIGHT」。1番をヒライが、2番をクハラがボーカルを担当した「サイダー」。まさかこの新曲2曲をライブで聴けるとは思っていなかった。ふたりの優しい歌声が心に沁み込み、何度も視界が滲む。「I SAW THE LIGHT」も「サイダー」もThe Birthdayのメンバーのみで披露してくれたことを思うと、クハラ、ヒライ、フジイはものすごい覚悟でこのステージに臨んでくれたのかもしれない。そんな3人の気持ちを想像するだけで胸がいっぱいになる。

ここでヒライがフロアに語りかけた。このステージのリハをしている時、MCを誰がやるかという話になって「じゃあ俺がやる」と名乗り出た、と。そして、「ここからみんなの表情がよく見えるんですよ。泣きたきゃ泣けばいいと思うし、俺もさんざん泣いたし、やっぱりいまだに毎日思い出すしね。でも、せっかく年に一度のフジロックに来てるから、一瞬でも笑顔になって帰ってくれたらいいなって俺は思う」と。

その言葉に続いて「ハレルヤ」のギターフレーズが鳴らされると、マイクを手にTHA BLUE HERBのILL-BOSSTINOが登場。BOSSが愛とリスペクトで新生させたリリックが、ひとりひとりの心を掬い取るように降ってくる。まるで私たちが立ち向かうものに優しい光をあててくれるようだ。<ここに希望の歌が山ほどのこされた>とBOSSはフロアに語りかけた。希望の歌。そうだ、The Birthdayはいつも希望や未来を鳴らし続けている。今、この時も。BOSSの全霊の言葉とThe Birthdayのサウンドが共鳴し、無二の思いを重ねていく。

再びLOSALIOSが合流し、ゲストボーカルとしてYONCE(Suchmos/Hedigan's)がステージへ。繰り出されるナンバーは「ローリン」。ライブでも極上の威力を放つロックンロールナンバーだ。全身全力でこの曲に向かうYONCEと、The Birthday、LOSALIOS、オーディエンスの全員が凄まじいパワーを炸裂させ、この日のパーティは幕を閉じた。もう涙腺崩壊どころの騒ぎではなかったが、誰もがきっと、また前を向いて笑うための涙だったと思う。

追悼という言葉より“with You”というあり方に込められた1時間のステージは、フジロックとチバユウスケとロックンロール、そして仲間たちとの相思相愛なリスペクトに満ちていた。

WEEKEND LOVERS 愛ならここにある。
WEEKEND LOVERS 踊ろうよ踊ろうよ。
ロックンロールは続く。

<書籍情報>
WITH THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(電子書籍)

定価 3,300円
長谷川誠 著
https://book.pia.co.jp/book/b648351.html

『WITH THEE MICHELLE GUN ELEPHANT』書影

<ライブ情報>
『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZO』

日程:8月16日(金)・17日(土) ※雨天決行・オールナイト開催
会場:北海道・石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ

WEEKEND LOVERS 2024 “with You”の出演は17日(土) 24:00~RED STAR FIELD

出演:LOSALIOS / The Birthday(クハラカズユキ , ヒライハルキ , フジイケンジ)
ゲスト:村越“HARRY”弘明(THE STREET SLIDERS)/ イマイアキノブ / 斉藤和義 / YONCE(Suchmos,Hedigan’s)/ 奥田民生 / 中野ミホ / 山本久土(久土 ‘N’ 茶谷, M.J.Q)/ Rei

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/rsr2024/

RSR公式サイト:
https://rsr.wess.co.jp/2024/tickets/

The Birthday 公式サイト:
https://rockin-blues.com/thebirthday/

LOSALIOS Instagram:
https://www.instagram.com/losalios_official/

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