8月2日(金) 17:01
1994年『漫画ゴラク』にて連載を開始し、最新55巻が絶賛発売中!累計発行部数800万部を記録するラズウェル細木の長寿グルメマンガ『酒のほそ道』。主人公のとある企業の営業担当サラリーマン・岩間宗達が何よりも楽しみにしている仕事帰りのひとり酒や仕事仲間との一杯。連載30周年を記念し、『酒のほそ道』全巻から名言・名場面を、若手飲酒シーンのツートップ、パリッコとスズキナオが選んで解説する。焼売について語るには。満腹時に〆の雑炊を食べるには。
仕事帰りだろうか、宗達は会社の同僚たちと中華料理店へ。中国茶を味わいながら点心を食べる、いわゆる“飲茶”スタイルの店らしいが、一行はもちろん瓶ビールで乾杯している。
「飲茶といったらまずエビ餃子」と嬉々としてオーダーする宗達だが、残念ながらすでに売り切れてしまっていた。落胆する一同に、後輩の桜木が「点心の中でビールに一番合うのは焼売だと思いますけどねっ」と熱く語り出す。
横浜出身の桜木はさらに言う。「横浜の人間は焼売には特別の思い入れがあるんですよ」と。
作中では「K陽軒」とぼかされているが、あの有名なシウマイ弁当も、たしかに横浜生まれのものである。ちなみに焼売は一口で食べてしまわず、ビールを飲むあいだにかじった断面にカラシ醤油をしみこませて残りを食べるのが桜木流。
なにかと餃子の陰に隠れがちな焼売の美味しさを、一同が称え始める。「ほらね」とばかりの得意顔で焼売に関するうんちくを披露し続ける桜木。しかし、そこで宗達は「ちょっと待った!」と眼光鋭く言い放つ。なぜなら、桜木は焼売のグリンピースが苦手で、それだけを取り除いて食べているのだった。そんな人間に焼売を語る資格はないと宗達は言うのだが、この「それぐらい許してやってよ!」と思うほどの細かなこだわりこそ、やはり我らが宗達なのだ。
季節は冬。アンコウ料理が名物らしい店のお座敷で友人たちと飲んでいる宗達。あん肝をつまみ、「おほーっこのコクこの風味」とご満悦である。今宵のメインディッシュはこの店の名物「あんこう鍋」だ。
「アンコウは捨てるところがないと言われている」「俗に「七つ道具」と言われるいろんな部分の味のバラエティが楽しめる」と、読んでいるうちに食に関する知識を増やしていけるのが『酒のほそ道』のありがたいところ。
エラやキモ、水袋(胃)など、7つの部分にそれぞれに味わいがあるというアンコウだが、宗達はキモが好きで、鍋のなかからそればかり探している。
あん肝にしてもフォアグラにしても、肥大化した肝が美味なわけだが、年末年始から飲み続け食い続けだったという宗達のお腹も、かなりでっぷりしている。友人の斎藤に「お前、アンキモ食わんで自分のキモ食えば」とまでからかわれた宗達は、「ちょっとたのむ、足をおさえてくれっ」と向かいに座る竹股に言う。
すごい勢いでやおら腹筋をし始めた宗達に「急にそんなことやったって焼け石に水だぞ」と斎藤は冷静につっこむが、宗達の目的は肥大化したお腹をひっこめることなどではない。締めの雑炊を食べるため、胃の容量に少しでも余裕を作ろうとしているのだった。いつでもその場を楽しむために全力を注ぐのが宗達流。先のことは、明日考えればいいのだ!
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次回「小さなシアワセの見つけかた『酒のほそ道』の名言」(漫画:ラズウェル細木/選・文:パリッコ)は8月9日(金)17時配信予定。
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