アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第31回臨時ニュース

/イラスト/Koto Nakajo

アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第31回臨時ニュース

7月31日(水) 19:00

MOVIE WALKER PRESSの公式YouTubeチャンネルで映画番組「酒と平和と映画談義」に出演中のお笑いコンビ「アルコ&ピース」。そのネタ担当平子祐希が、MOVIE WALKER PRESSにて自身初の小説「ピンキー☆キャッチ」を連載中。第31回はいよいよ番組ジャックで素性を発表する予定だが!?
ファンタジーとリアリティを織り交ぜた、アルコ&ピース平子祐希の小説デビュー作「ピンキー☆キャッチ」


■ピンキー☆キャッチ第31回臨時ニュース
「鈴香です」
「七海です」
「理乃です」
「私達三人合わせて『ピンキー☆キャッチ』です!」
十七歳の私達、実は誰も知らない、知られちゃいけないヒミツがあるの。それはね、、表向きは歌って踊れるアイドルグループ。
でも悪い奴らが現れたら、正義を守るアイドル戦隊『スター☆ピンキー』に大変身!
この星を征服しようと現れる、悪い宇宙人をみ〜んなやっつけちゃうんだから!
マネージャーの都築さんは私達の頼れる長官!
今日も地球の平和を守る為、ピンキー☆クラッシュ!

都築の身体は強張っていた。無理もない、これから生放送中の報道番組に飛び入りし、迫り来る謎の危機について説明をする大役を仰せつかったのだ。更にはこれまでの経緯を、そして世間的にはアイドルであるピンキーメンバーが、怪物討伐の役割を担っていた事実も同時に伝えなくてはならない。全てが突発的だったため、依頼した原稿も荒削りなものだろう。生本番での臨機応変な立ち回りを問われるであろう事は想像に難くない。

ジャパンワイドが放送されているDスタジオ前に到着すると、長身でグレーのスーツを着た男性が待っていた。

「都築さんでしょうか?弘崎と申します。吉崎さんから連絡を頂いておりまして」
「お世話になります。こちらも突然の事でしたがご迷惑をおかけします」
「いいえ。私が現場に出ていた際に防衛省付きだった期間がありまして。吉崎さんには大変お世話になったんですよ」

チーフプロデューサーの弘崎には、吉崎がそれとなく話を通してくれていた。物腰柔らかそうな紳士ではあるが、流石にここまでは説明を受けていなかったのだろう、後に付いてきたピンキーメンバーに気がつくと、訝しげな目線を向けた。

「間も無く吉崎もこちらに参りますので、この子達の詳しい説明もその際に・・」
「ああええ、正直こちらは独占のスクープを頂けるのでありがたいのですが。場合によっては防衛省発表も連動するかもしれないと伺いました。とりあえず中へどうぞ」

前室へと案内されると、通路はパネルを出し捌けするAD達でバタついていた。バラエティと違って裏手のスーツ組の割合が高く、やはり空気も張り詰めている。
弘崎に差し入れの栗どら焼きを勧められたが、とてもじゃないが今は喉を通らなかった。先程までは勢いのよかったメンバー達も表情は固く、時折無意味に肩を回したりしている。
緊張感に耐えられなくなった都築が水のペットボトルに手を伸ばしかけると、激しく扉が開き、遠山が駆け込んできた。

「都築さん!先程到着しまして、今吉崎さんがリミテッド側に事情を説明してくれてます」
「そうか!しかし生放送よりも先に情報を漏らしてしまって大丈夫か?」
「もちろん詳細は伏せつつ、とある事情として説明するとの事でした。そのまま編成部に立ち寄った後にこちらへ」
「ありがとう、助かった。現場の状況はどうだ?」
「細かな振動が起きて、止まってを繰り返している感じです。他の局も中継のスタンバイこそしていますが、まだ大々的に報じられてはいないようです」
「いたずらな憶測で報道されても混乱を招くだけだからな、タイミングは良かった」

そこへ紺のスーツに身を包んだ吉崎が入ってきた。

「弘崎さんこの度は急な申し出で申し訳ありませんでした」
「いいえ、お久しぶりです。お変わりありませんな」
「都築、出番に間に合ったから今回は私も一緒に出演させてもらう。現状に関しての大枠の説明は私がするから、都築は討伐側の説明を担ってくれ。メンバーに関しても頼んだぞ」
「承知いたしました!」

都築は胸を撫で下ろした。頼ってしまうのは情けないが、冷静沈着な吉崎がいるのであれば安心だ。そこへ一人のスタッフが入ってくると、弘前に耳打ちをした。

「お待たせいたしました。今伝えているニュースが終わり次第CMに入ります。それが明けましたらアナウンサーよりご紹介をいたしますので、お話下さい」
「はい、お願いします。じゃあ都築も、ピンキーのみんなも頼んだぞ。遠山は大きな動きがあったら情報を入れてくれ」
「承知いたしました!」
「では皆さんこちらへどうぞ」

弘崎を先頭にスタジオへの分厚い扉を潜った。横から見えるセットでは神奈川県で起きた玉突き事故のニュースを報じていた。MCの子安マサノリが、重々しい言い回しで有識者達への質問を飛ばしている。
テレビを観ている時には無論わからないが、セットをぐるりと取り囲むように沢山の巨大なカメラが出演者の一挙手一投足を余す事なく狙っている。バラエティとはまた違ったあのセットに立ち、幹部達に背く形で情報の初出しをすると思うと身震いしたが、都築は自らを鼓舞した。

『この日本が、いや、世界が強大で未知なる危機にさらされようとしているのだ。今は全国民協力体制でこの危機を乗り越えなければならない。理解を得る上でこの生放送は重要だ。気を引き締めるぞ』

番組がCMに入ると、セット内へと促された。ディレクターが出演者達に事情を説明していたが、皆緊急のニュースには慣れているのであろう。いつもの事だというように話を引き取るとこちらへ会釈をしてくれた。

「子安でございます宜しくどうぞ。放送終了まで12、3分ほどありますかな。お話はお任せするとして、時間が余りましたらこちらから簡単な質問などで調整しますので、やりやすいようにどうぞ」

歯に衣着せぬ物言いで時折ネットを炎上させているベテラン司会者ではあるが、その実物腰の柔らかい人物なようだ。吉崎と都築は返礼で返した。

「CM明けまで2分です!」

フロアのスタッフが叫ぶ。思ったよりも余裕があった。都築はネクタイを締め直し、鈴香の折れた襟元を直してあげた。ふと、セットの横に若いスタッフが駆け込んで来ると、カンペを持ったフロアディレクターに何やら耳打ちをした。驚いた表情のディレクターはインカムで誰かと話をしながら前室に駆け出した。よく見るとスタッフ全体が慌ただしくバタバタと動いている。
都築は『何かあったのか?』と遠山に目配せしたが、『さあ』と小首を傾げていた。現場で何かが起こったとすれば先ずはこちらに連絡が入るはずだ。
先程のディレクターがMCの子安と女性アナウンサーの元にかけ寄り、一言二言話をすると、二人は大きく目を見開いた。

「都築、様子が変だな」
「はい、何が起きてるんでしょうか」

吉崎と小声で話していると、プロデューサーの弘崎が小走りで寄ってきた。

「皆さん大変申し訳ない!一度セットの外へ・・・さっきの前室に一旦お戻り下さい!」
「あの、何か現場で起きたんでしょうか?」
「いえ、そうではないのですが、ご説明しますので一旦、皆さんちょっと一旦お願いします!」

紳士然としていた弘崎が異常に慌てふためいている。何が何やら分からないまま、吉崎を先頭に前室のソファ席へと案内された。メンバー3人は憮然と立ったまま説明を待った。

「吉崎さん、大変大変申し訳ありません!」
「何かあったんでしょうか?こちらには現場から連絡は何も入っていないのですが」
「はい、それがあの・・・緊急ニュースが入ってしまいまして・・・」
「緊急て・・・こっちのニュースと違うん!?うちらのが先だったやんか!」
「理乃、静かにしなさい。一体何が起きたんですか?」
「ええと・・・あ、CMが明けますのでご覧頂いた方が・・」

前室に置かれた大型のモニターに目を移すと、CMが終わり、先程のセットが映し出された。アナウンサーが「ここで最新のニュースが入りました」と告げる。

次に切り替わった画面を見て、ピンキーの3人は目を丸くし「ええええええ〜〜〜っっ!!!!?」と大声をあげた。都築も驚きのあまり後ろにのけぞった。防衛省の異変を報せる臨時ニュースが、完全に飲みこまれたのだ。

(つづく)

文/平子祐希

MOVIE WALKER PRESS

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