【写真】実はこんなにかわいかったアビ子先生。脚本の完成に目を輝かせる
アニメ「【推しの子】」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほかにて放送/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Leminoほか)の第十五話「感情演技」が7月24日に放送された。プロデューサー・雷田澄彰(CV.鈴村健一)の英断により完成した舞台「東京ブレイド」の脚本だが、今度は求められる感情演技にアクア(CV.大塚剛央)が苦戦し、PTSDを発症。「これはつらすぎる」「観てる方もフラッシュバックするトラウマ」と、悲鳴に似たコメントが寄せられた。(以降、ネタバレが含まれます)
■アビ子×GOAで脚本完成…が、あまりの尖りぶりに引きつる雷田
今回で第三話目となった舞台「東京ブレイド」のエピソード。ここまで制作側の事情と原作者側の心情が描かれ、コミュニケーションのまずさが原因でほつれていた両者の意図だったが、今話でそれが一気に解決する展開を見せる。
難航する脚本を完成させるために雷田がとった最後の手段は、原作者の鮫島アビ子(CV.佐倉綾音)と、脚本家のGOA(CV.小野大輔)の直接対話。GOAが脚本を手掛けた舞台「SMASH HEAVEN」がすばらしかったこと、師匠の吉祥寺頼子(CV.伊藤静)に歩み寄りを諭されたことから、アビ子自身が希望した場であった。
原作者と脚本家の直接対話は良い方に転がれば文句はないが、お互いの主張が相容れず、最悪ケンカ別れで企画が白紙になるケースも考えられる。雷田はそれを恐れて避けていたが、間の伝言ゲームがなくなったことで、2人が見る世界は見事に噛み合っていく。もともとGOAは降りてくる修正指示に疑問を持っていたし、アビ子も相手への誤解が解けたことですっかり意気投合し、GOAの自分にない引き出しに感心しながら、原作者としての意見をどんどん出していく。
そんな2人のやり取りを見る視聴者も、「GOAさん東京ブレイドのガチファンだし、『分かってるじゃない』って言われて嬉しかっただろうな」「アビ子先生、トゲが取れて良い顔してる」「2人ともホントに楽しそう。ずっと歪んでたから良かった」と安堵の声が寄せられる。
そうして出来上がった脚本に大満足したのだろう。すっきりした表情でリモートから退出していくアビ子。あとに残ったのは、「GOAくん…」とひきつる雷田と、「すみません…なんか楽しくなっちゃって…」と詫びるGOAの2人。「やっぱり危惧した通りになったああ!! クリエイターが団結すると尖った作品になりがちなんだよなあ…」と、雷田は机に突っ伏してしまう。
破綻も怖いが、チャレンジングすぎるのも困ってしまう。前半パートはアビ子との対峙でプロデューサーの責務と覚悟も語られており、雷田の気苦労にくすっと笑ってしまう一幕でもあった。
■フラッシュバックするトラウマにアクアが離脱
大幅に内容が変更された脚本に挑むのは役者陣。説明台詞が大胆にカットされた内容は、つまり役者の芝居表現そのものが言葉となり、物語を伝えるということだ。実力を試されるような脚本に、受けて立つという表情を見せる有馬かな(CV. 潘めぐみ)。黒川あかね(CV.石見舞菜香)は自分の解釈と一致するキャラクター表現に納得顔となり、劇団ララライの役者陣はむしろこちらのほうが得意とばかりに受け入れる。
一方で、アクアは苦戦する。かなに指摘された通り、感情を表に出さずに生きてきたアクアは指導される感情演技ができないでいた。アドバイスを求められたかなは、自分が使う感情を引き出すためのトリガーを1つ教えるが、それが原因でアクアは最愛の母であるアイの死を強く思い出してしまい、稽古を離脱してしまう。
しばらくアクアの過去に触れられる描写がなかったため薄れていたが、アクアが芸能界に踏み込んだのは、アイの父親とアイを殺した犯人を突き止め、復讐するため。今回の舞台出演も、アイと交流があったとされる劇団ララライの演出家・金田一敏郎(CV.志村知幸)に接触するためである。さらに転生前の自分であるゴローが、アイが死んだのはお前のせいだとアクアを咎める。
この一連のシーンは印象的な描写であったこともあり、「トラウマの回想シーンがつらすぎる」「前世の記憶が完全に呪いになってるのがキツイ」「冷たくなっていく母親の体温って…胸が締めつけられる」など、視聴者も大きく感情を揺さぶられた様子であった。
■あかねはアクアの秘密に気づいた?
ラストでは、うなされるアクアが漏らした「アイ」というひと言から、あかねがプロファイリングでアクアの秘密にたどり着く場面も。おそらくあかねは確信したのかもしれない。「私はなにがあってもアクアくんの味方だよ」と涙を流すあかねに、「あかねちゃん凄い、優しい、健気」「あかねは本人には決して言わない。こういうところ好き」「あかねちゃん、アクアの闇を癒してあげて」といった視聴者からのコメントが多数寄せられることに。
一方で、あかねが健気であるだけに、「アクアはきっとかなのことが好きなんだよね」「かなの太陽の笑顔が眩しいだけに…」と彼女を心配する声も寄せられる。先の稽古中、かなに「今回はうれしかったことを思い出しながら演技すればいい」と言われたアクアが心を和ませたのは、あかねとの時間ではなく、かなとの時間であったからだ。アクアにとってはビジネスカップルだが、あかねにとってはもうすでに本気の恋になっている。アクアを巡るかなとあかねの恋の鞘当てはどうなっていくのだろう。
また、五反田泰志(CV.加瀬康之)はアクアの事情を知る数少ない人物の1人だが、映される彼のPCのデスクトップには「hoshino」「aqua」というフォルダと並び、「hikaru」というフォルダが見て取れた。意味深に見えたこのシーンだが、五反田はなにかを掴んでいるのか。本作の醍醐味であるサスペンスストーリーにも注目していきたい。
■文/鈴木康道
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