カンヌで喝采!アニメ【化け猫あんずちゃん】W監督が制作裏話を語る

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カンヌで喝采!アニメ【化け猫あんずちゃん】W監督が制作裏話を語る

7月18日(木) 21:05

熱狂的ファンを持ついましろたかしの漫画『化け猫あんずちゃん』が、日仏合作アニメーション映画となって7月19日より全国ロードショー!実写映像をトレースしてアニメーションを制作する”ロトスコープ”という手法で制作され、森山未來が主役の化け猫”あんずちゃん”の声と動きを演じ、カンヌ国際映画祭「監督週間」やアヌシー国際アニメーション映画祭で喝采を浴びたこの作品の劇場公開を前に、久野遥子監督と山下敦弘監督に、本作の魅力や制作裏話などをたっぷりと語ってもらった。

――監督のオファーをもらったときはどう思われましたか?
山下僕はもともと原作のいましろさんの漫画が大好きでしたし、「いつか映像化出来たらいいな」と思っていた作品でもありましたので、やっぱり嬉しかったです。ただ同時にアニメでという発想はなかったので、「どうなるのかな?」っていう戸惑いもありました。

久野私は初の長編作品の監督をやらせていただけるだけでなく、山下監督と映画を作れるということがすごく嬉しくて。山下監督と一緒なら、そして『あんずちゃん』という題材であれば面白いことが出来るんじゃないかってとても楽しみに思っていました。

――『あんずちゃん』という作品の魅力、面白さはどういったところにあると思いますか?
山下いましろさんの作品には男のジレンマや葛藤、怒りといったものが感じられて、それにすごく共感出来たんです。そうしたものがあんずちゃんという猫のキャラクターに詰まっているのが本当に面白くて(笑)。『コミックボンボン』連載ということで子供向けでありながら、いつものいましろさん節もしっかり効いているところもがこの作品ならではの魅力だと考えています。

久野猫ゆえの責任を持たない感じというか、あんずちゃんの適当さがいいんですよ(笑)。それでいて可愛いみたいな、そこがこの作品のオススメポイントかなと思っています。

――そんな『あんずちゃん』を映画化するにあたって、何をテーマにしようと考えられたんでしょうか?
山下一応『あんずちゃん』のテーマには「人助け」があるんですが、原作の漫画の方では全く解決しないで毎回終わるというのがお決まりパターンになっているんです。でもそれだと映画にならないので、”かりん”という映画にしか出てこないキャラクターを作り、彼女とあんずちゃんの二人を軸に物語が展開するようにしてみました。

久野かりんちゃんについては、私がキャラクターデザインを起こしています。かりんちゃんを演じた五藤希愛さんのビジュアルに似せようと、彼女の可愛らしさや特徴を元にデザインさせてもらいました。

――脚本などに原作者であるいましろたかしさんの意見などは反映されているんでしょうか?
山下撮影前にお話を聞きに行き、そこで聞いたいましろさんのアイデアを取り入れて脚本を直したり、シーンを足したりさせてもらいました。逆に、僕らの考えにも納得してくださり、残させて頂いたシーンもあります。

久野かりんちゃんが地獄に行ったことを、虫や動物たちが伝言ゲームできのこのおっさんまで伝えるところは、ガッツリいましろさんのアイデアが使われているシーンになります。

――今作はロトスコープで制作されることになりました。この手法でアニメを作ると聞いたときはどう思われましたか?
山下最初は「ロトスコープって何?」っていう状態だったんです(笑)。「まずはどうしたらいいの?」っていうところからのスタートでしたが、『あんずちゃん』の脚本を作っている最中に久野さんと一緒に豊島区のPRアニメ映像をロトスコープで作る機会があり、そこで得た経験と知識を活かしながら制作を進めていくことになりました。

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◆猫耳にふんどしとシュールすぎる撮影現場

――実際に撮影してみていかがでしたか?
山下アニメになることを想像しながらの撮影ということで、最初は久野さんを気にしながら撮っていたんです。でも、久野さんから「いつもの感じでやってください」と言われてからは、いつも通りのやり方で撮らせてもらいました。

久野基本的に撮影には全て立ち合わせてもらいました。おかげで役者さんの温度感を感じることが出来ましたので、そうした現場の空気みたいなものもアニメーションに描き起こす際の参考にさせてもらっています。

――化け猫であるあんずちゃんを演じた森山さんについてはどんな印象がありますか?
山下森山君って俳優もやりつつダンサーとしても素晴しく、身体の表現がものすごく上手い人なんですよ。猫的な動きや仕草についても森山君だったら相談しやすいだろうということもあって今回出演をお願いしました。その期待通りに素晴らしい演技をしていただき、あんずちゃんの表情や動きなどは森山君のお芝居をかなり反映したものになっています。

久野難しい動きをなんなくやってくれるんですよ。あんずちゃんを描いてくれたアニメーターさんに「森山さんの動きって無駄なものがないからすごく描き起こしやすい」と言われたんですが、しなやかで力の入ってないような動きが本当に猫っぽくて。撮影のときは面白いなって思いながら見させてもらいました。

――かりん役の五藤さんについては?
山下五藤さんにとっては初のヒロイン、初アニメと初めてだらけでもありましたので、現場では僕から演出的なところを細かく要求させてもらいました。その指示を隣で聞きながら、森山君が全体をまとめていく感じだった気がします。僕としては五藤さんの周りを森山君やベテランキャストが固めることで、五藤さんとも共通するかりんの未熟な部分や初々しさがより引き立つと思いましたし、ロトスコープという手法でアニメ化された際の面白さに繋がるんじゃないかと考えていたので。後は久野さんに丸投げして上手い具合に仕上げていただきました(笑)

久野五藤さんが山下さんの言ったことをどんどん吸収して、素敵に演じたシーンもいろいろあるんですよ。特にかりんとあんずちゃんが宴会の後で最初にケンカするところは、五藤さんの演技の輝きが見られるシーンじゃないかなって思っています。

――ちなみに今だから言える撮影秘話などありましたらお聞かせください。
久野森山さんが猫耳で撮影に臨まれていて(笑)

山下貧乏神役の水澤(紳吾)さんはふんどしをつけていましたから、そうとうシュールな撮影現場だったとは思います(笑)。ドラマと違ってそのまま映像を使うわけではないので、照明はいらないし、通行人も同録のマイクが映っても大丈夫。天気も気にしないでいいということもあって、役者の演技に集中しながら楽しく撮ることが出来ました。ただ8月の撮影だったことから、とにかく暑すぎて。最後まで撮りきることで精一杯だった記憶があります。

◆実写で描いたとおりにお芝居で泣ける作品

――こうして撮影された実写映像をアニメに落とし込む際に注意したポイントは?
久野実写の印象にしたいという風には思っていました。その一方で、役者さんが透けて見えてしまわないように、アニメとしての良いお芝居を追究するようにはしています。実写の通りに描いていくと、どうしても生々しくなってしまうというのがあって。そこで何度も実写の映像を見直しながら「このぐらいキャラクターのテンションを上げた方が実写の温度と同じになるな」とか「ここは手をより強めに上げておくと動きが気持ちいいな」といったように、実写とアニメのお芝居を近付けながらカット単位で正解を探っていく作業を続けていった感じです。

――背景映像の美しさも際立っています。
久野キャラクターの作画までを日本で行い、背景美術と色彩設計、最終的な画面のルックを設計するコンポジット開発などはフランスのMiyu Productionsに担当していただきました。最初に美術監督&色彩設計のJulien(De Man)さんから「ポスト印象派の画家であるピエール・ボナールの絵がイメージにあるんだ」って言われたんです。実際に描かれたものを見てみたら光の感じが柔らかく綺麗で、ちょっとゆるいキャラクターたちとの相性もすごく良かったんですよ。この組み合わせは私では思いつかないものでしたので、どのような映像が出来上がるのかすごい楽しみになりました。

――完成映像をご覧になっての感想をお聞かせください。
山下一番嬉しかったのは、アニメになってもキャラクターのお芝居で泣けたことですね。僕が意図した実写でのお芝居から、アニメに置き換わってもしっかりと感動するシーンに仕上がっているのはすごいなって思いました。

久野やっぱりロトスコープという珍しい手法で制作した映像ということもあって完成するまで「どうなるんだろう?」っていう不安がずっとあったんです。なので実際に完成した映像を見て初めて「こういう作品なんだ」っていう感想を持てるようになりました。初めての驚きとチャレンジがすごくたくさんあった作品だなって、今改めて思っているところです。良い経験をさせてもらいました。

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
山下ありそうでなかったというか、この夏に劇場で見るのにふさわしい新感覚のアニメに仕上がりました。絶対に皆さんの想像を裏切る映画になったと思います(笑)。ビックリ箱じゃないですけど、驚きと楽しさがいっぱい詰まった作品になっていますので、ぜひ劇場に足を運んでみてください。

久野なんだか見ていて安心出来ない映画になっています(笑)。夏休みの体験としてちょっと狐につままれてほしいというか、この作品でしか味わえない不思議な体験を皆さんにも味わってもらえたなら嬉しいです。
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