7月18日(木) 18:00
Text:兵庫慎司Photo:村井香
2024年7月12日、浅草公会堂にて、銀杏BOYZのライブが行われた。峯田和伸が弾き語りで、2023年9月19日の渋谷WWW Xを皮切りに、約10カ月かけて全都道府県を回ったツアー『銀杏BOYZ 世界ツアー 弾き語り23-24 ボーイ・ミーツ・ガール Boi Meets Girrrl』の、ファイナル公演である。
今年の6月に新潟公演から始まった7都市を回るファイナルシリーズは全公演でゲストがひとり、ブッキングされている。この日のゲストはTOMOVSKY。開演時刻になると、まず峯田がひとりで登場して前説を務め、ゲストを呼び込む。
スーツにネクタイ姿で、水色のセミアコを抱え、足元にバスドラムを配置したTOMOVSKYは、「いい日になるね、きっとね。(ツアーが)すごい大変だったみたいなので。大事な日なので。がんばります」と告げ、「脳」の最初の一節を歌ってから、オーディエンスに「覚えた?」と問いかけ、返ってきたシンガロングに「おお、いいねえ」と喜ぶ──という形でスタートする。で、それ以降も、たびたびオーディエンスに呼びかけて、歌わせる。
TOMOVSKYさらに、「歌う 58歳」もオーディエンスに歌わせたり、19年前に設えた自分の仕事部屋に初めて来た人は峯田君だったことを急に思い出したから、歌にしました──と、「ミネタ君がこの部屋の最初のお客様」というワンフレーズだけで終わる歌を披露したり、6曲目の「夜中一度風が止まる」を終えたところで、「大事な2曲を飛ばしていた!」と報告してから(言わなきゃ誰にもわからないのに)その2曲=「日本酒雨割り」と「夏のアリは早歩き」を歌ったり、その後者の「夏のアリは早歩き」は、某大物アーティストの某有名曲とまったく同じメロディだったり──と、いつもどおりの自由にも程があるパフォーマンスで、オーディエンスを魅了する。
11曲目は「峯田君、日本一周おめでとう!」という叫びから始まった「我に返るスキマを埋めろ」。サビでオーディエンスとの掛け合いが見事に決まり、極めていい空気感で曲は終盤に向かう。そしてもう一度「歌う 58歳」を歌い、最後にギターをかき鳴らしながらスマホを出して時間を確認し、「ジャスト!」という叫びで曲を締め、持ち時間をぴったり使い切ったトモさんであった。
銀杏BOYZのステージは、「新訳 銀河鉄道の夜」でスタート。「シベリア鉄道乗り換え 中野駅で降ります」を「浅草で降ります」と変えて歌った峯田、曲を終えると、この47都道府県ツアー、骨折もせずコロナにもならず、予定どおりに今日のファイナルまで来れました、と報告する。で、「僕んち、すぐそこ。なんなら今から帰ってシャワー浴びて来れる」と、最後は浅草でやりかったことも伝える。峯田は、2019年放送のNHK大河ドラマ『いだてん』で浅草の車夫の役を演じたのがきっかけで、長年住んでいた中野界隈を離れ、浅草在住になっている。
銀杏BOYZ2曲目「NO FUTURE NO CRY」の後半では、マイクスタンドを客席の方に向けて、オーディエンスにシンガロングを促し、自分はアコースティック・ギターの音を拾う用のマイクに口を近づけて絶唱する。という行動は、その後の曲でも、何度も繰り返された。
亡くなった友達(イノマー)への思いを言葉にして、4曲目「夢で逢えたら」に入る。TOMOVSKYのバンド、カステラを小6で知った時のことや、高1で初めてニルヴァーナを聴いた時のことを回想してから「エンジェルベイビー」を歌う。というふうに、言葉と曲で自分の思いを伝えながら「恋は永遠」「いちごの唄」と、ファンは誰もが知っている曲を次々と披露していく峯田だったが、9曲目はちょっと違った。
「朝立ち」をやったのだ。2009年に出た、Kebab Recordsというインディー・レーベルのコンピレーション・アルバムに提供した曲で、このツアーの何公演かで歌うまでは、ほぼライブでやったことがなかった曲だという。
その「朝立ち」のエンディングで、ギター加藤綾太とドラム岡山健二が登場し、次の「二回戦」から3人編成でのライブになる。ひとりでの弾き語りが一部、バンドでのライブが二部、ということだろう。
「二回戦」が始まると、ステージ後方に白幕が降り、歌う峯田の超どアップの顔(目元だけに寄っていたりする)が映し出される。その画は、12曲目「ぽあだむ」では夕焼け空を思わせる真っ赤なビジュアルになったりと曲ごとに変わっていく。
「キミからメールが来ないから」という歌詞の古さに自分でツッコミを入れながらも、「写メールとか、10代の人、わかっかな。まあわかりますよね。ババアばっかりだから」と悪態をついて笑いを取ってから、13曲目「ナイトライダー」へ。この曲は、タンバリンを振る岡山健二と峯田が、ツインボーカル状態で交互に歌う。
次は「FRIENDS(ENDLESS SUMMER)」。GOING STEADY時代の曲を銀杏BOYZでリメイクすることを、峯田は何度かやっているが、この曲を歌うのは珍しいかもしれない。
加藤綾太のギターを褒め称えるMC(峯田「なんでそんなにうまいの、教えてよ。銀杏ぽくないじゃん」)を経ての「骨」は、岡山健二がリードボーカル。バンドでも弾き語りでも、今の銀杏のライブで必ず歌われる曲だが、元は安藤裕子の依頼で書いた曲、つまりそもそも人が歌うための曲だと考えると、岡山健二が歌うのもうなずける気もする。後半では峯田もボーカルを取り、「東京タワーのてっぺんから、三軒茶屋までジャンプするー。」を、「浅草寺までジャンプするー。」に変えて絶叫した。
亡くなったミュージシャンたち(チバユウスケ、櫻井敦司、そしてイノマー)の音楽は消えない、という言葉からの「GOD SAVE THE わーるど」、コンパクトにリアレンジした「光」(オリジナルは11分22秒あるが、この日は7分ぐらいだった)。
そして、MCを経ての最後のブロックは、「少年少女」と「BABY BABY」、銀杏のレパートリー内でトップクラスの、新旧のシンガロング曲を並べた。どちらもオーディエンスは大合唱で応える。特に「BABY BABY」、もう峯田がマイクを向けようと向けまいと関係ない状態である。
本編のラストは、銀杏のライブにおけるアウトロというかクロージング・アクト的な存在である「僕たちは世界を変えることができない」で、美しく締められた。
アンコールを求める声に応えて再登場した峯田は、8月にロンドンのアビーロード・スタジオに呼ばれている、まだ言えないがイギリスのすごいバンドと、一緒にやってくる、本当に音楽をやってきてよかったと思う──と、報告した。
そして「なんとなく僕たちは大人になるんだ」を弾き語りで歌い始めるが、客席から起こったハンドクラップが歌いにくかったようで、いったん歌を止めて、「ちょっとすみません、うれしいよ? うれしいけど、中には……」と、音頭みたいな手拍子も混じっていることを指摘する。「ロックだよ? 謝恩会じゃねえんだよ! でもまあ、浅草っぽくていいか」。客席が笑いに包まれる。
で、最後の最後は、加藤綾太と岡山健二が加わって、峯田はハンドマイクで、「DO YOU LIKE ME」。2分半強の尺で、ハードコアの原曲をラップテイストにアレンジしたこの曲を、終始叫ぶように歌い通した峯田は、「どうもありがとうございました!」とマイクを投げた。ゴツッ! というその音と共に時計を見たら、20時44分57秒だった。
<公演情報>
『銀杏BOYZ 世界ツアー 弾き語り23-24 ボーイ・ミーツ・ガール Boi Meets Girrrl』
2024年7月12日(金) 浅草公会堂
出演:銀杏BOYZ/TOMOVSKY
■TOMOVSKY
1. 脳
2. 歌う 58歳
3. ミネタ君がこの部屋の最初のお客様
4. 部屋にいすぎだ
5. 目をとじるな
6. 日本酒雨割り
7. 夏のアリは早歩き
8. 夜中一度風が止まる
9. SKIP
10. 我に返るスキマを埋めろ
■銀杏BOYZ
1. 新訳 銀河鉄道の夜
2. NO FUTURE NO CRY
3. 若者たち
4. 夢で逢えたら
5. 漂流教室
6. エンジェルベイビー
7. 恋は永遠
8. いちごの唄
9. 朝立ち
10. 二回戦
11. もしも君が泣くならば
12. ぽあだむ
13. ナイトライダー
14. FRIENDS(ENDLESS SUMMER)
15. 骨
16. GOD SAVE THE わーるど
17. 光
18. 少年少女
19. BABY BABY
20. 僕たちは世界を変えることができない
EN1. なんとなく僕たちは大人になるんだ
EN2. DO YOU LIKE ME
TOMOVSKY 公式サイト:
http://www.tomovsky.com/
銀杏BOYZ 公式サイト:
https://gingnangboyz.com/