“小さな古畑”ツートン青木が語る「古畑任三郎」の魅力「田村正和さんは亡くなった感じがしない」

美空ひばりなどのモノマネで一世を風靡した通称“小さな古畑任三郎”ことツートン青木さん

“小さな古畑”ツートン青木が語る「古畑任三郎」の魅力「田村正和さんは亡くなった感じがしない」

6月17日(月) 8:52

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フジテレビ系人気ドラマ『古畑任三郎』が放送30周年を迎えるにあたって、ふたたび話題になっている。30周年を記念した再放送が5月24日より始まると、昔からのファンのみならず、自宅で家事や子育て、在宅ワークをしている人たちから支持を集め、新たなファンを獲得しようとしている。

今回は古畑任三郎(田村正和)をはじめ、美空ひばりなどのモノマネで一世を風靡した通称“小さな古畑任三郎”こと、ツートン青木さん(64歳)に、その魅力について聞いた。

古畑はすべて録画して何度も観ている

――古畑任三郎の再放送はご覧になっていますか?

ツートン青木(以下、ツートン):もちろん観ております。いままでCSでやっていた古畑任三郎も全て録画して何度も観ていますね。再放送がされるたびに録画をしてDVDやブルーレイに焼いているもので、どんどん増えていっています。もちろんDVDボックスも全部持っているのですが、最近はブルーレイディスクの容量が大きくて、画質もキレイでよいですね。100ギガのものとかあるので、1枚でかなりの本数が録画できるので重宝しています。

――今まで古畑任三郎は何周くらい観ているのでしょうか?

ツートン:何周かは数えたことないですね。とにかく最低、テレビで放映された数は観ていることは確かです。あとはDVDを全部観たり、録画を全部見直したり。何回なんでしょうかね(笑)。

元ネタは「コロンボ」だけど斬新

――古畑任三郎の魅力はどういうところにありますでしょうか?

ツートン:よく言われていることですが、元ネタはアメリカの刑事ドラマ「刑事コロンボ」で、最初に犯人が明かされる仕掛けはほぼ同じなんですよ。視聴者と一緒に、誰が犯人なのかを推理していくというのがいままでの刑事物だったりするんですが、古畑任三郎は最初に犯人がわかっている。

犯人を古畑がどうやって推理し、追い詰めていくのかを視聴者が見守る仕組みになっているんです。そこが斬新でした。初めて観た時はすごい作品を作ったなと思いました。でもまんまコロンボとは違い、田村さんの個性が出ているんですよ。

古畑任三郎をやる前の田村さんから観ていたんですけど、今までは田村さん自体のシリアスな演技が好きだったんです。『パパはニュースキャスター』とか『美しい人』あたりが好きだったんですけど、古畑任三郎が出てきてからは、これは新たな田村さんの魅力が出た名作ができたなと思いましたよ。

好きな回は中森明菜、明石家さんまが犯人

――元ネタがあったなんて知らなかったです。

ツートン:そういえば前にテレビの企画で本物の刑事コロンボの役者ピーター・フォークに会いに行ったことがあったんですけど、15分くらい遅刻してしまって、彼を怒らせてしまったことがありました。

遅れて家にお邪魔したら、「ちょっと準備するから待っていてくれ」と言われ、20分くらい待たされました。これはなんの準備なんだろう。きっと遅れてきたことへの当てつけだなと思いました。そのあとちゃんと話はしてもらったんですが、なんだか機嫌が悪いなーといった印象です。

「演技で使っていたコートを見せてくれ」と言ったら40分くらい待たされたり……。でも彼はその後すぐ亡くなってしまったから、最後に彼に会った日本人は僕なんじゃないかな。

――そんなエピソードが。ツートンさんが好きな古畑任三郎のエピソードは何ですか?

ツートン:第1シリーズの1話、中森明菜さんの「死者からの伝言」ですかね。中森さんが「泣いて良いですか?」って言うセリフがあるんですが、かなりグッときました。まだ田村さんのなかで古畑任三郎の役作りが完璧に決め切っていない時期で、演技が結構シリアスで、どことなく田村正和さんの素がまだ残っている気がするんです。

第1シリーズ2話の堺正章さんの回「動く死体」もよかったですね。古畑に一杯食わされた堺さんの「あのやろう〜!」っていう演技が凄すぎました。役者さんが違うとこんなにも表現方法が変わるのかと驚きましたよ。他には第2シリーズの1話の明石家さんまさんの回「しゃべりすぎた男」も好きでしたね。裁判所の中で事件が完結する回です。古畑が濡れ衣を着させられた部下を必死で守る姿に感動してしまうんです。

一度だけ古畑が犯人を叩いた回とは?

――シーズン1からシーズン2にかけて田村さんの演技も変わっていきますよね。

ツートン:第1シリーズの時は、古畑は犯人を諭すような終わり方が多かったのですが、第2シリーズとなるとキャラが固まってきたのかどんどん強いことをいうようになりました。4話の木村拓哉さんの回「赤か、青か」なんて、古畑が初めて人に手をあげたんですよ。「そんなくだらないことで爆破事件を起こしたのか!」って怒ってキムタクを叩いていて。まあ、人を叩くのはその1回だけだったんですけど、怒りを抑えられないような演技が衝撃的でしたね。

ちなみに今回の再放送ではいままで再放送禁止だった「赤か、青か」も、フジテレビが権利関係をしっかりしてくれたみたいで、地上波で放送されたんですよ。あの伝説の回が、リマスターされてさらにキレイになったバージョンで見られるなんて、ほんと嬉しいですね。まあDVDは持っているのでそれを見ればいいんですが、テレビで再放送されるという、この嬉しさは伝わらないだろうな〜。

――古畑任三郎のすごいなという所は他にありますか?

ツートン:ほとんどのシーンがセリフを撮り直さず一発撮りの所ですかね。田村さんは自身のセリフだけでなく、共演者のセリフまで完璧に覚えて現場には台本を持ち込まない主義だったので、他の役者さんは相当なプレッシャーだったと思います。観ていると、わかりますが、明らかにワンカットで撮っている長尺のセリフが多いんですよ。

田村正和さんはまだ生きている

――2021年に田村さんが亡くなられた時の気持ちはどうでしたか?

ツートン:正直言うと亡くなった感じがしないんですよね。僕はいちファンなので……。もし個人的に交流があったりしたことがあったら、感じ方はかなり変わったと思うのですが、僕にとってはテレビの中の人で、田村正和さんはまだ生きているんです。いまだったら昼にテレビつければ動いている田村正和さんが見られるじゃないですか。

――闘病の姿とかも全然見せてなかったですよね。

ツートン:引退宣言というか、自分で俳優として見切りをつけたタイミングがあったと思うんですよね。2018年の『眠狂四郎 The Final』だったかな。実際そこから一切仕事をしてないんですよ。実際、古畑任三郎は10年にわたって演じてこられましたが、50代の頃と、60代の頃とでは田村さんのしゃべり方が全然違うんです。申し訳ないですが、滑舌がどんどん悪くなっていましたね。2006年に最後の作品の『古畑任三郎ファイナル』「ラストダンス」でゲストが松嶋菜々子さんの回がありました、その時も何をしゃべっているのかわからない瞬間があったように思います。

古畑がなかったら僕は世に出ていない

――ツートンさんにとって、古畑任三郎はモノマネを超えた思い入れがあるように思えますがどうでしょうか?

ツートン:古畑任三郎が放映されてなかったら、僕は世に出てなかったでしょうね。本当に古畑任三郎ありきで僕という存在がいるのは間違いありません。

一度、田村さんとはビールのCMでご本人はテレビで、私がウェブ版で共演するといったお話もあったのですが、ギャラの問題で私がちょっと安いかなと思って問い合わせたら、流れてしまったので、最後まで本人には直接会ったことがありませんでした。

<取材・文/山崎尚哉撮影/スギゾー>

【ツートン青木】
1959年6月27日生まれ、神奈川県出身。歌唱ものまねが中心だが、古畑任三郎に扮する田村正和なども得意としており、レパートリーは幅広い。2021年に脳卒中で倒れ、現在はリハビリをしながら芸能活動を行っている。2024年7月14日に小田原の三の丸ホール(大ホール)で「不死鳥コンサート」を開催予定

【山崎尚哉】
’92年神奈川県鎌倉市出身。ライター業、イベント企画、映像編集で生計を立てています。レビュー、取材、インタビュー記事などを執筆。Twitter:@yamazaki_naoya

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