【写真】久美子との会話で、誠実さと不器用さが露わとなった顧問の滝昇(CV:櫻井孝宏)

吹奏楽に青春を捧げ、全国大会での金賞を目指す高校生たちの姿を描いた「響け！ユーフォニアム」(毎週日曜昼5:00-5:25ほか、NHK Eテレ／NHKプラス・Lemino・ABEMA・ディズニープラス・FOD・Huluほかで配信)、シリーズの「最終楽章」となるTVシリーズ第3期。新部長に就任した黄前久美子(CV:黒沢ともよ)は3年生に進級し、部員たちとともに高校最後の大会へと臨んでいく。第十回は、部内に漂う気まずい雰囲気をどうにかしようとする久美子の葛藤を描いた「つたえるアルペジオ」。(以下、ネタバレを含みます)

■久美子と滝の会話に、滝の誠実さと不器用さが露わに

オーディション結果を巡って部内に重苦しい雰囲気が立ち込めるなか、高坂麗奈(CV:安済知佳)からも「部長失格」と言われてしまった久美子は、意を決して顧問の滝昇(CV:櫻井孝宏)に質問を投げかける。「どんな音楽を目指しているのか」と問われた滝は、それは難しい質問だと前置きしながらも「結果が伴う音楽」と答える。滝が、部員たちが自ら掲げた「全国大会金賞」という目標を叶えるために、できることは全てやろうと真摯に取り組んでいることに疑いはなく、久美子はそれ以上何も言うことはできない。しかしその日の全体練習の際、ついに部員たちの不満が爆発してしまう。オーディションごとにメンバーが変わることへの困惑、それにより部内の雰囲気が険悪になってしまっていることは誰の目にも明らかだったが、麗奈はこれまで通りの強気な姿勢を崩さないのだった。

冒頭の久美子と滝の会話シーンでは、滝の誠実で真面目な性格が改めて浮き彫りとなった。漠然とした、かつ失礼に当たりかねない質問に対してもはぐらかそうとはせず、極めて真剣に答えていて、だからこそ久美子は「なぜ真由をソリに選んだのか？」という真に聞きたかったことは口にできなかったように思える。さらに、言いたいことを飲み込んだ久美子に何かを感じた滝は、これといった言葉をかけることはなく飴を手渡す。そんな一連のやりとりは、滝の誠実さと不器用さが伝わってくるシーンだったように感じる。SNSでも「久美子ちゃん… 気持ちは痛い程にわかるけれども」などの声があがっていた。



■久美子と麗奈、過去イチの確執へ

部内の重苦しい雰囲気を受けて、もはや自分たちだけでは解決できないと感じた塚本秀一(CV:石谷春貴)は、久美子に「滝先生に相談すべきでは？」と提案。久美子は麗奈の意見を聞くためふたりきりで話をするが、ここでも意見は対立してしまう。滝に相談し、できれば滝の口からオーディション結果について説明してもらったほうがいいと考える久美子に対し、それをすれば余計に部はバラバラになると主張する麗奈。久美子の必死の訴えも虚しく、ふたりの考えは平行線のまま、交わることはなかった。

前話での喧嘩以来、久しぶりにふたりきりで話した久美子と麗奈だったが、むしろその意見は全く交わらない結果となった。麗奈の考え方も理解できるものの、久美子の置かれた立場や気持ちを知っていると、どうしてもお互いの言い分がもどかしく感じてしまう。そもそもシリーズを通じてここまでふたりが本気で対立したことはなかったので、今後の行方にはドキドキハラハラなのだが、それ以上に「関西大会直前」ということもあり、とにかく一刻も早く仲直りをしてほしいと思ってしまう。これにはSNSでも「先週に続いて見ていて辛すぎる」などの声が寄せられていた。

■あすか&香織の上級生コンビの登場に反響

麗奈と対立してしまい八方塞がりとなった久美子は、藁をもつかむ思いで先輩の田中あすか(CV:寿美菜子)の元を訪れる。大学生となり、中世古香織(CV:茅原実里)とルームシェアをしているあすかは、久美子の悩みを聞くと「結局、黄前ちゃんのわがままなんだよ」と一刀両断。滝も真由も迷っているのではないかと推測したうえで、久美子の良いところは「無責任に好き勝手に言えること」だと指摘。その言葉に何かをつかんだ久美子は、部員みんなに自分が思っていることをすべて伝えることを決意するのだった。

あすか&香織の上級生コンビは今シーズン初登場。久美子が持っていたハガキは、久美子たちの2年生時代を描いた『劇場版 響け！ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』にてあすかが「魔法のチケット」として久美子に渡したもので、これ以上なく大事な場面で効力を発揮したと言える。久美子がここを訪れる時は麗奈と喧嘩したときだと予言していたり、今の久美子の悩みに効く処方箋を一発で出してしまうあたり、「さすが」というほかない。ちなみに、あすかが引き合いに出した「あの時言われたこと」とは、2期の第十回「ほうかごオブリガート」での一幕のこと。家庭の事情で退部しようとしていたあすかに対し、久美子が「あすか先輩と本番に出たい！」と涙ながらに訴えたシーンだ。あすかの事情など一切無視して、あすか自身の思いを聞き出そうとした久美子の自分勝手な心からの叫びは、あの時、たしかにあすかの心に響いたのだった。ともかく、想像の斜め上をいく一挙手一投足に翻弄されつつも、最後にはやっぱり魅了されてしまうあすかの強烈な存在感は今も健在と言ったところ。これにはSNSでも「かおり先輩もあすか先輩もマジエンジェル」「あすか先輩きたぁぁぁあーーー！！！」など、声にならない声があがっていた。

■あすか先輩の一言もあり、久美子の名スピーチが爆誕！

関西大会当日。不安を抱えながらも本番へ向けて準備を進めていく部員たち。本番直前、スピーチの時間をもらった久美子は、全員に今の自分の気持ちのすべてを言葉として吐き出していく。悲願である全国金賞を獲るためには何かを変えなきゃいけないと思ったこと、そのことに戸惑いを感じた部員の気持ちも分かるということ。さらにそのことを謝罪したうえで、北宇治なら金賞が獲れると思っていることなどを語る。それまで、どこか不安や緊張の目立っていた部員たちだが、久美子のスピーチによって一気に闘志がみなぎっていくのだった。

最後は久美子の魂のスピーチが炸裂。素直な気持ちで部員たちに体当たりしていくこのやり方は久美子にしかできないことで、同時に彼女のもつ言葉の「強さ」を感じるシーンでもあった。表情や仕草、音楽で説得力を持たせることの多い本作だが、ここではキャストの芝居と言葉の力がより大きな感動を生み出していることに注目したい。部長であっても素直に謝罪してみせる器の大きさや、人の心を動かすことのできる考え方、さらには思ったことがすぐに口に出てしまう天然さもあいまって、久美子はこの瞬間、歴代部長に自信を持って肩を並べられる存在になったのではないだろうか。これにはSNSでも「久美子ちゃんの魂のスピーチ… 目頭が熱くなるな…」「演奏する前から泣かせないで」など絶賛の声が寄せられていた。こうして全員が「やり切った」という顔で関西大会の演奏を終えた北宇治吹奏楽部。果たして結果は？次回第十一回は6月16日(日)放送予定。期待して待とう！

■文／岡本大介




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