20~30年前のテレビドラマでは喫煙や暴力など過激なシーンが散見されたが、近年はコンプライアンスの意識が高まったことを受け、ドラマの表現方法も大きく変わった。そんな中、4月から放送されているドラマプレミア23『95(キュウゴー)』(テレ東系、月曜よる11時6分~)では、高校生役の登場人物の喫煙や飲酒のシーンが普通に登場し、令和の地上波ドラマでは珍しい刺激的な内容だ。
本作は早見和真氏の小説『95』(角川文庫)を原作とした青春群像劇。1995年を舞台に、King & Princeの髙橋海人演じる広重秋久(Q)が中川大志演じる鈴木翔太郎(翔)を始めとした仲間たちとともに、“ダサい大人”にならないために奔走する姿を描いた本作。撮影に関する裏話などを本作のプロデューサーを務める倉地雄大氏に聞いた。
喫煙シーンでも、髙橋海人の演技力に驚愕
まずQが徐々に煙草を吸うことに慣れていく様子がとてもリアルに描かれているが、倉地氏は髙橋の演技力だからこそ表現できている部分だと話す。
「実は本作は時系列をバラバラに撮影しています。例えば、5話のシーンを撮った後に3話のシーンを撮る、みたいなことが一般的な現場です。時系列通りに撮影していれば、Qが徐々に煙草を吸うことに慣れる姿を演技しやすい。ですが、時系列がバラバラのため、
慣れた手つきで喫煙しているシーンを撮った1週間後にはたどたどしく煙草に火をつけなければいけない、という高い演技力が求められます。そこを髙橋さんは見事に対応していて驚きました」
演技力だけではなく髙橋の勤勉さにも驚かされたと振り返り、「撮影中に髙橋さんは『今の芝居って大丈夫ですか?』といろいろなスタッフに頻繁に質問します。監督だけではなくプロデューサーの私やカメラマンにまで質問を求める役者さんは珍しい。本作のためにとても悩んでくれているため、一緒に仕事ができて本当に嬉しいです」と続けた。
目を背けたくなる性的暴行シーンの狙い
そもそも、高校生の喫煙や飲酒のシーンを撮ることに抵抗はなかったのか。倉地氏は「弊社の温かく寛容な編成に感謝しています」と笑顔を見せる。
それでも。3話ラストにQの姉・淳子(桜井日奈子)に宝来隼人(鈴木仁)が性的暴行を加えるシーンは生々しく目を背けたくなった。このシーンを撮影するうえでどのようなことを意識したのだろうか。
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「宝来の暴力性や淳子に同情を抱かせるよりも、
Qが“姉を助けることができない”という葛藤を表現したかったシーンです。淳子の部屋で卑劣な被害が現在進行形で行われているにもかかわらず、その現実から目を背けるQ。彼の葛藤を伝えたいため、Qが膝を抱え塞ぎ込むカットを長尺にしました。Qの葛藤をしっかり見せることにより、4話でQが宝来に怒りをぶつける姿に説得力を与えられると考えたからです。
同様にセンシティブなシーンで言いますと、5話ラストにラブホテルでQとセイラ(松本穂香)がキスをするシーンがあります。ここでは後々明らかになる“セイラが抱える闇”と言いますか、
『なぜセイラは達観しているのか?』という背景を臭わせることを意識して撮影しています。しっかり描かないとセイラの闇は十分伝わらないため、センシティブなシーンですが最大限キャストの意見を取り入れつつ、最大限にケアをしながら挑戦しました」
コンプライアンス的にはグレーゾーンなシーンが連続している『95』。ただ、それは視聴者によりよく楽しんでもらうことを重視した結果なのだろう。
エンディングでメイキング映像を流しているワケ
本作の特徴と言えば、エンディングにメイキング映像を流していることも挙げられる。その理由として倉地氏は「単純に出演者がめちゃくちゃ仲が良く、『
この雰囲気を僕たちしか見られないのはもったいない』と思ったことが大きいです」と回答。
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「やはり1クールを経て、出演者の絆が深まっていくのは僕としては本当に嬉しい。『その様子が伝わると良いな』という狙いがあります。また、ドラマ本編はバイオレンスかつセンシティブなシーンが多いです。『
エンディングくらいはほっこりしても良いかな』という考えもありました」
また、本作ではCMに入る直前の10~20秒の映像をCM明けに流している。平成のドラマでは珍しくなかった傾向ではあるが、ここにも何かしらの狙いがあるのか聞くと、「深い意味はないです。リアルタイムで視聴している人はわかると思いますが、本作はCMが結構長いです。CM前に何があったのかを伝えるため、CM直前の映像をCM明けにも流すようにしています」と語る。
最後に「基本的には自由に楽しんでほしいです。ただ、上の年代の人は懐かしいシーンが多くあると思いますので、そこを探してもらえたらと思います。一方、若い世代の人にはQの頑張りを見どころにしてもらえると嬉しいです」とメッセージを送った。
動画配信サービスでしか視聴できないような過激な描写を多く見られる『95』。制作陣の挑戦的な気持ちが詰まった本作が、どのようなラストを迎えるのか最後まで楽しみにしたい。
<取材・文&人物写真/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki
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