内田雄馬のエゴと覚醒「僕らは観られて初めて完成する存在」

内田雄馬

内田雄馬のエゴと覚醒「僕らは観られて初めて完成する存在」

5月8日(水) 12:00

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4月19日に『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』が公開となった。原作・金城宗幸、漫画・三宮宏太、キャラクターデザイン・ノ村優介によるマンガが原作で、日本をW杯に導くストライカーを育てるためにスタートしたプロジェクト“ブルーロック(青い監獄)”を舞台に、300人の高校生FWたちががたったひとりのエゴイストストライカーとなるためにしのぎをけずる物語だ。

映画は並外れたサッカーセンスを持つ天才・凪 誠士郎の視点から描いた物語となっている。
今回は、主人公・凪をサッカーへと誘い、彼の運命を変えた御影玲王を演じる内田雄馬に話を聞いた。

視点によって変わるおもしろさ

――今回、本編と同じ物語を凪視点で描いた物語です。脚本を読まれての印象はいかがでしたか。

劇場版を作ること自体がすごいことなんですが、今回、本編の主人公とは別のキャラクターに焦点を当てていることもすごいんですよね。同じ時系列を、視点を変えて描くというのはそれだけ各キャラクターが個性的だったり、ドラマがしっかりしていないと描けないものです。

本編と時間軸が重なる部分をどう描いていくんだろう、と最初にお話を聞いたときに思ったんですが、実際に台本を読んでみると、視点が変わることによって、やっぱり感じ方が違うんですよね。

例えば、本編は潔が主人公で、潔がどんどん成長していくような、ヒーローっぽさがありました。でもそれと相対する凪たちの視点で見ると、潔が成長して変わっていく怖さが感じられるんです。見る人の視点によって感じ方が変わるおもしろさが表現されていたので、映像での完成が楽しみでしたね。

――視点が変わることによって、エピソードの厚みが増すというか。

そうですね。もともと本編が好きだった方も、劇場版を観ていただくと「凪と玲王の二人は、このときはそれぞれこんなことを感じていたんだ」ということがわかって、より世界が深堀りされていくんじゃないかなと思います。

ふたりのキャラクターの正反対の魅力

――やはり凪の魅力というものが大きなところかなと思うんですけど、内田さんから見て凪はどういったところが魅力だと思いますか。

凪はわりと自分がはっきりしているんですよね。「何もやりたくない」ということも自分の意思。ピュアな状態ではっきり自分を確立しているところが凪の魅力かなと思います。だからこそ、サッカーという一つのきっかけが与えられたときに、まっすぐ迷いなく興味のあるところへ向かっていけているんです。淀みがないというのはやっぱりすごいこと。凪はゼロの状態から始まっているので、どんどん積み重ねていくイメージなんです。だからある意味、本当に天才。サッカー選手としてフィジカルが天才っていうのもあるし、どんどんいろんなものをプラスして、変わっていくのがおもしろいところだし魅力なのかなと思います。

――凪はどんどん色がついていくようなイメージですよね。

そうなんですよね。0でピュアなところから、彼らしさがどんどん伸びていくような感じがしますね。

――その凪に色をつけるきっかけを与えた、ある意味、最初に凪の運命を変えていくようなポジションにいるのが玲王なのかな、と思います。ご自身が演じていらっしゃる玲王にはどういった思いを抱かれていますか。

玲王は生まれてから、いろんなものを与えられて生きてきています。
例えば教育もそうだし、自分の環境も、欲しいものは手に入る。いろんなことを学ばされている、学んでいるがゆえに、どんなことでもだいたい何となくうまくやれてしまうんですよね。そんな中で「うまくいく自分」という自己が確立されていて、それが多分彼の外側になっているんですが、心の中はかなり未熟だと思うんです。「自己」というものが多分あまり確立されていない。

今の玲王は、与えられたものの中で出来上がった御影玲王像です。だから彼は、「これは俺が欲しいものじゃない」、「与えられたもので満足できない」と言っていますけど、それは自分自身の意思がそこに則って積み上げたものじゃないからなんですよね。

だから、凪とは逆ですよね。凪は何もしたくないけど、彼自身の意思で「何もしたくない」を選んでいるのではっきりしているんです。玲王は自分の意思ではない部分があるから、その差はおもしろいと思いますね。

個性の裏付けが見えるようになっているのが面白い

――『EPISODE 凪』は、凪にとっても玲王にとっても一つの分岐点で、玲王にとっては初めてぐらいの挫折なのかな、と思うのですが、今回演じる上で気をつけられた点、意識された点はありますか。

今回の話は本編でも描かれている部分があるので、基本的に本編のときと、心情の捉え方とかは変わっていません。ただ、視点が変わることで、作品として見せ方が変わるので、本編とは違うディレクションをいただいてます。

本編はどちらかというと潔たちの視点なので、凪たちの感情の細かい動きはそんなに見えないんですけど、今回は凪たちの視点なので、感じていることをひとつずつ、より細かくリアルに表現して良い、とディレクションをいただきました。割と自然に、シームレスに組み立てていいという作りだったので、心情の解釈は変わらないんですが、お芝居の表現という点では本編とはちょっと違うと思いますね。

――今回のような場合って難しいと感じたりはされるんですか? 組み立て方が自分の中で変わったりだとか。

玲王をこの2年ぐらいやらせていただいていて、見ている分「こうなんだろうな」という解釈は自分の中にもあったりするので、そこは特に今までと変わりなく、です。でも、やっぱり作品作りなので、お芝居のアプローチは都度変わります。今回で言えば『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』で何を見せるか。TVシリーズの『ブルーロック』で何を見せるかもその都度違うので、どう見せるかの違いはあります。それは現場でディレクションをもらっています。僕らはそれに合わせて芝居の見せ方を変えるのが仕事なので、ある意味そこはそんなに難しいことじゃないですね。

何が大変かというと、感情を理解しよう、解釈をしようとしたときに、そのキャラクターのことを理解できないときです。もちろん、自分とは違う人間ですから、全く感性が違うということは当たり前にあります。ですが、この作品に関しては、各キャラクターの心情がもとをたどるとわかりやすいものだったりします。多分、先生の描き方がとても上手で丁寧なんだと思います。理解するために必要な情報を作中で描いていらっしゃるような。第一印象では個性が強い人たちに見えるけど、その個性の裏付けが何か見えるような作りになっているのがおもしろいところなのかもしれないですね。

――だからこそ、『EPISODE 凪』も作られるんですね。

そうですね。各キャラクターの内面的なものが結構描かれていると思います。玲王の人間性は自分の中で解釈ができたので、そういう意味での大変さは今のところはないですが、世の中にはもちろん簡単じゃない役もいますし、多分『ブルーロック」の中にも「何を考えてるのか紐解くのが難しい人」という役もいると思うんですけど、玲王と凪に関しては、すごくシンプルなような気がしてます。

――おっしゃられていたようにキャラクターの個性が際立っていて、キャラクター同士の関係性も面白いところかなと思います。凪と玲王に関しては、もともと知っている仲だということもあり、作中でも特別な部類に入るのかな、とも思ったんですけど、その関係性についてはどのように考えていらっしゃいますか。

凪と玲王は2人でW杯を取るという約束をしていて、それが彼らの一番大事な目的だと思うんですよね。だからそのためにどうするか、ということを多分考えています。他のキャラクターたちもいろいろな思惑があると思うんですけど、例えば自分が最強のストライカーになるためだったりいろんな目的がある中で、凪と玲王は自分というより、この2人で一緒に取るっていうことが目的なので、そこは“ブルーロック”という場所においては、ちょっと特殊なのかなとは思います。

300人の中からたった1人を決めるというプロジェクトなので、その中で目的が違う。相手がいて、2人が揃っているという前提から始まっています。そこから、この劇場版を見てもわかる通り、2人わかれて進んで、各々が自分の場所で自分のサッカーを見つけて、お互いが並び立てるところまで行こう、と進んでいくので。

――そう考えると改めて“ブルーロック”のシステムの残酷さを感じますよね。

300人のうち1人しか残れない。最強のエゴイストストライカーを決めるために削り落としていくっていう話なので、過酷ですよね。

お芝居において、自分に固執しないことがとても大事

――物語の中では「エゴ」と「覚醒」が大きなキーワードだと思うんですが、内田さん自身は仕事に対してのエゴですとか、譲れない部分はどういったところになりますか?

いただいたディレクションに対していかに変われるか、という仕事なので、その中で何を自分の中で大切にするのか、という話なんですよね。となると、僕らの仕事っていうのは、1人では作れない仕事だと僕は思っていて。

世の中にはいろんな役者さんがいます。例えば、周りを自分のフィールドに飲み込んで発揮していくタイプの人もいますが、そういうタイプではなく、どちらかというと繋ぐ方でありたいと思っています。

引っ張る人たちは絶対に必要だけど、それを繋ぐ人も必要だと僕は思うんですよね。それぞれが一番いい力を発揮できる環境にできるような、そういう考え方も必要だな、と。
だから僕の場合は、自分からいかに変われるかってことが結構大事です。

――変化に柔軟なんですね。

お芝居において、自分に固執しないということがとても大事なんですよね。その中にちゃんと個性って出るんです。自分の人生経験とか感じてきたことが、ディレクションを受けて芝居を変えたとしても残っていくので、「これが自分の個性だ」と自分で思い込むんじゃなくて、出てきたものが個性を表してくれるんです。だから、いろんな人の言葉を受けて、いかに自分の中に落とし込めるか、ということは大事なのかな、と思います。それもエゴだと思いますし、自分の意見について、頑なになるだけがエゴじゃないと思いますね。

――いろんなお仕事をされている中で芝居において自分が覚醒したな、と自覚した瞬間はありますか?

自分ではあんまりないですけど、僕らは多分、見られて初めて完成する職業なので、自分がいい芝居だなと思っても、受け取り手次第で変わってきますよね。そういう意味では多分、本当に自分が変わっていってるかどうかは、結果でしかわからないような世界なのかな、と思います。

覚醒……調子がいいときは噛まない、とかそれぐらいですかね(笑)。今日は全然噛まなかったな、というときはある意味覚醒しているのかも。噛まないからいい芝居なわけでもないんですが。

――ご自身の中で、ってことですもんね(笑)。

そうです。だから芝居が覚醒したかどうかは正直自分ではわからないですね。
どんなに「今日は入り込んでいたな」と思う日でも、別にそれは自己満だよねって話ですから。自己満ってすごく大事なんですけど。
でも少なくとも、いい芝居だったと思えたような日の収録は、僕だけじゃなく、みんなで録っていて生まれたいい芝居だと思います。それをみんなで作れるようにしていくことは大事かなと思います。

――最後に今回の『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』、改めて内田さんから見て推しポイントを教えてください。

『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』は、TVシリーズと時間軸が重なる部分も入れて、1本作っているところが面白いと思います。

同じシーン、同じ瞬間だけど視点を変えてみると、感じ方ってこんなに違うんだなと思うことが日常でもあると思うんです。立ち位置を変えて考えるということ、相手の目線に立って考えたらわかることってたくさんあると思うんですが、『ブルーロック』はそれを作品の中で描いていて、潔を主人公として見たら強く成長していくかっこいい存在に見えるかもしれないけど、敵として見たときは「どんどん変わって強くなっていく、めちゃくちゃ怖い存在に見える」といったような、その視点の違いのおもしろさを今回の劇場版では楽しんで欲しいなと思います。

あとはやっぱり凪と玲王のコミュニケーションです。もどかしいところはたくさんあるんですけど、だからこそ、すれ違ってもなお大事にしているものがあるし、その中でどういう風に変わっていくのかが成長だと思います。その過程が今回の劇場版で描かれているので、いろんな視点から『ブルーロック』を楽しんでいただける、そんな作品だと思うのでぜひとも劇場で、動く凪たちを楽しんでもらえたら嬉しいなと思っています。

取材・文:ふくだりょうこ撮影:友野雄

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<作品情報>
『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』

全国の映画館で公開中!

公式サイト:
https://bluelock-pr.com/

(C)金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会

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