U-23日本代表、韓国戦の敗因を分析 過度に慎重な姿勢から選手個々の力量まで

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U-23日本代表、韓国戦の敗因を分析 過度に慎重な姿勢から選手個々の力量まで

4月23日(火) 11:20

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第1戦(対UAE戦)、第2戦(対中国戦)をほぼ固定メンバーで戦ったU-23韓国代表は、3戦目のU-23日本代表に対し、第2戦からスタメン10人を入れ代えて臨んだ。普通に考えるなら、最初の2戦に先発したメンバーがレギュラー組で、日本戦を戦ったメンバーはサブ組ということになる。

対する日本は、2戦目のUAE戦からスタメンを7人代えてきた。1戦目から2戦目にかけても7人の変更だったので、まさに同じペースで韓国に向かったことになる。

つまり韓国は、グループリーグ最強の相手である日本に対し、いかにも分の悪そうなスタメンを編成してきたことになる。日韓両国の総合力が互角なら、この一戦は日本が制しておきたかった試合となる。韓国は引き分けた場合に行なわれる順位決定のためのPK戦を、ある程度、試合前から覚悟していたと思われる。それまでの2試合とは一転、恥も外聞もなく5バックで引いて構える布陣に、韓国の姿勢は見え隠れした。

日本は前半から、もっとお気軽に戦えばよかった。敗戦を振り返ったとき、結果論を承知で言えばそうなる。

冷静に考えれば、次戦をカタールと戦うかインドネシアと戦うかを決める一戦にすぎない。両国の実力の差はともかく、韓国戦は、敗戦に特別大きな痛みを伴わない試合だ。にもかかわらず、日韓戦という名のせいなのか、日本は前半から過度に重々しく、慎重に戦うことになった。韓国の速攻を必要以上に怖がる姿勢は、韓国の術中にはまったのも同然。「絶対に負けられない戦い」という呪縛を自らかけてしまったような試合だったと言ってもいい。

韓国に敗れ呆然とした表情のU-23日本代表の選手たち photo by Kyodo news

韓国に敗れ呆然とした表情のU-23日本代表の選手たち photo by Kyodo news



CKのセットプレーで1点をリードするや逃げきりを狙い、時間稼ぎに走る韓国の姿を見るとなおさらだった。一方で、もう一度戦えば勝ちそうな気がする、ガッカリ感の少ない試合だったことも事実だ。評価の難しい試合である。

ただし後半30分の決勝ゴールを奪われたシーンは、CKのボールが蹴り込まれる前から危うい予感がした。サッカーを観戦していると、何試合かに1度、今にも得点が入りそうなムードを感じる瞬間がある。このCKがそうだった。好ましくない空気に、場に居合わせた日本選手全員が飲み込まれているかに見えた。ムードを変えられる存在がいない若い集団が陥りがちな症状を露呈させたと言うべきか。

飛び出しながらボールに触れなかったGK野澤大志ブランドン、競ったものの被り気味にボールをそらした半田陸だけではない。場の空気を払拭できないまま、相手のセットプレーを受けてしまった。U-23が故の仕方ない失点といえばそれまでだが、あえて指摘すればそうなる。

【布陣を変更してもよかった】

加えて敗因について言及するなら、攻撃のバランスだ。左右、中央という攻撃の3つのルートが均等に突けていなかった。奪われた際のリスクを考えると、外が多めになるのはやむを得ないが、基本的には内あっての外であり、外あっての内だ。この日、先発を飾った内野航太郎はポストプレーを得意とする選手だ。その生かし方についてアイデアが豊富だったとは言い難い。荒木遼太郎がボールほしさに下がると、ふたりの間隔は遠くなり、その結果、内野は孤立した。

最終盤、大岩剛監督は1点リードされると、荒木と内野航太郎を下げ、山本理仁、細谷真大を投入した。4-3-3を崩さずに最後まで戦っている。しかし、「絶対に負けられない戦い」という前提に立つなら、布陣を崩してもよかったのではないか。

前戦のUAE戦では終盤、内野航太郎と細谷を2トップにして前線に置き、4-4-2的な布陣に変更したが、たとえば、動きのよかった藤尾翔太を右ウイングから中央にコンバートし、内野航太郎あるいは細谷と2トップを組ませる考え方もあったはずだ。同じ左利きでも、山本ではなく山田楓喜を右ウイングに据えれば、攻撃度はワンランク上がったと思われる。

内容的には5-0でもおかしくない試合を2-0というスコアで終えたUAE戦でも決定力不足は取り沙汰されたが、これを運がなかったとすることができる一方で、もう少し深刻に、構造的な問題と捉えることもできる。

勝てたかもしれない試合を落とした原因を、さらに大きな問題と捉えるならば、選手個々の力についても言及する必要が出てくる。

大岩監督は「誰が出場しても同じようなサッカーができる」と述べているが、それは裏を返せば、特別な力を持つ選手が少ないことを意味する。2戦目から7人を代えて臨んだこの一戦でも、実際、目立って出来の悪い選手はいなかった。揃って平均点以上のプレーをしていた。

しかし、即、A代表でスタメンを張れそうな選手はどれほどいただろうか。細谷をはじめ、A代表に招集されたことのある選手は少なからずいるが、主力にはほど遠い。身体能力の高さを多くの人が称賛する松木玖生、視野の広さを称賛される藤田譲瑠チマも、好選手ではあるが、現状で代表入りに太鼓判が押せるまでには至っていない。鈴木唯人(ブレンビー)、斉藤光毅、三戸舜介(ともにスパルタ)、小田裕太郎(ハーツ)など、今回招集外になった欧州でプレーする選手にも、それは言える。

【組織力はオールマイティではない】

昔の話をすれば、A代表と五輪代表を比べ、「五輪代表のほうが強いんじゃないか」などと言われた時代があった。28年ぶりに本大会出場を果たした1996年アトランタ五輪の頃がそうだった。2000年のシドニー五輪もA代表と遜色ないメンバーで戦っている。若手とベテランが争えば、若手が勝つという構図が出来上がっていた。

大岩ジャパンに平均的なプレーヤーは数多くいる。多くの選手に5段階評価で4はつけられる。だが、5はいない。個人の力で局面を大きく変えられる選手だ。それはチャンピオンズリーガーがまだ数人しかいない森保ジャパンにもあてはまる。日本の成績は組織の力の産物と言うべきなのだ。組織が整備されれば試合内容も安定する。韓国相手に6対4で優勢に試合を進めることはできる。だが組織力はオールマイティではない。それだけでは得点が奪えないこともある。ない物ねだりをするわけではないが、敗因を考えたとき、触れなければならない現実である。

アンダーカテゴリーの目的は本来、勝利ではない。五輪を目指すU-23とて例外ではない。目的はひとりでも多くの人材をA代表に送り出すこと、もっと言えば、チャンピオンズリーガー級の選手を輩出することだ。そのあたりの追求が、メディアを含めて希薄に見える。勝ち負けに一喜一憂する傾向がある。皮肉的だが、それこそを韓国戦の敗因のひとつに加えたくなる。

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