みうらじゅん、自身初プロデュースの熟女写真集に懸ける「紙」への並々ならぬ拘り

みうらじゅん、自身初プロデュースの熟女写真集に懸ける「紙」への並々ならぬ拘り

4月19日(金) 15:50

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2000年代初頭、島田陽子、松坂慶子、沢田亜矢子など、錚々たる大女優たちが過激な写真集を出版したころから続くと言われる、昨今の「熟女ブーム」だが、このたび、『週刊SPA!』で20年近く『グラビアン魂』の連載を続けてきた、みうらじゅん氏が「最唯一無二の存在」と評する、レジェンド熟女グラドル沢地優佳を指名し、プロデューサーとして初めて手掛けた熟女グラビア写真集『Venus, y』が完成したという。

―――なぜグラビア写真集『Venus, y』をプロデュースしたのでしょうか?

みうらじゅん:実は以前から「グラビアン魂アワード」(1年間に「グラビアン魂」に登場したグラドルのなかから、連載パートナーのリリー・フランキーとともに選定)に選ばせていただいた方の紙の写真集を出してほしいって、担当編集には言い続けてたんですよ。出版不況とか言われる中で、あえて紙で出すってことに夢があるじゃないですか。ご本人も事務所もそうでしょうけど、写真集好きな僕みたいな人は、とくに大喜びですよ。出版社は売れ行きとか気にすると思うけど、いつも書店という「現場」で写真集を買っている僕に言わせれば、今も昔も、写真集を買う人間って絶えずいるんですよ。そこにきて最近の熟女ブームです。いまこそ、この写真集『Venus, y』を出すべきと思いました。それで「いまどき紙の写真集が話題らしい」って評判が立てば、出版界に奇跡みたいなことが起こる可能性もあるし、ワクワクしませんか?

もちろん出版不況は理解していますけど、いまも紙の写真集を買っている人たちや実際にグラビアを頑張ってる人たちのことは、どうにかしなきゃいけない。そのためにも大人が動かないとね。少なくとも、僕が好きだったグラビア文化はまだ残ってる気がするし、いまはそれを「グラビア世界遺産」みたいな文化遺産として認めるか認めないか、グラビア自体が続くかどうかの瀬戸際だと思います。もしこれが世界的に「日本独自の面白い文化」と認められたりすれば続くかもしれないし、逆に、いろいろ厳しい時流に流されると、なくなっちゃうかもしれない。だから、あらためて出版社にお願いしました。

―――既存の写真集では満足できなかったということでしょうか?

みうらじゅん:最近、着衣をうまく使ってる写真集が減ってるんですよね。着衣があるからこそ、水着グラビアにドラマが生まれるのに残念でなりません。「このページの前に、なんでこの着衣のカットを入れないのか」っていうことが、すごく多くて。「脱いでる写真載せておけばいいんでしょ」みたいな感じで、仕事として流してやってるようでは、つまらなくなってしまいます。そんな写真集を見ながら、僕が再構成したらどうなるか?そんなことばかり考えてきました。やっぱり、決して安くはない写真集だからこそ、映画くらいのストーリー性があるべきじゃないですかね。

―――だからこそ『Venus, y』ではエスキース(撮影用の下絵)を自分で描かれたんですね。

みうらじゅん:グラビアで大事なことは、もうひと手間、の部分をあえて残し、そこを想像で補わせることだと思うんです。ダイレクトに過激なことをするんじゃなくて、やっぱり読者側に想像の余地を与えることが、とても大事じゃないでしょうか。「ことが始まってからの写真」ではなく、その手前の表情やポーズみたいな「寸止め」がグラビア表現じゃないかと。この「寸止め」って、間違いなく日本の伝統文化です。だから今回の『Venus, y』では、その妄想の入る隙を意識して、エスキースで演出してみたつもりです。


構成を考えたときは、逆に「決まりすぎたカット」を外し、ちょっと油断している表情とか着衣のなにげないカットをたくさん入れたつもり。それがあるからこそ、見る側の頭の中で物語が動き出すんです。とはいえ、たとえば雑誌のグラビアはページ数に制約があるから、そういう一見すると無駄に思えるカットが使えない。だからこそ写真集があるわけだし、出してほしいし、書店で売ってほしいと思ったんですよね。

―――デジタル全盛の時代に、なぜ、あえて「紙の写真集」なのか?

みうらじゅん:なにせこちとら「神対応」より「紙媒体」ですから(笑)。自分で書店で手に取って買わなきゃ気が済みません。だからこそ、みんなも写真集を買うようになればいいのになって本気で思うんです。紙で鑑賞するのは古いって世の中は決めつけてるけど、デジタルだけで見ている人は、デジタルでは補えないものがあるってことを知りようがないんです。紙で見るからこそ、その深みに気づけることがあるし、それを今回、沢地優佳さんの『Venus, y』で知ってほしいと心から思っています。

***
このように今回の写真集制作の経緯について熱く語ってくれたが、その制作過程にも、みうらじゅんらしい強いこだわりがあった。

<構成/北井 亮>



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