“フリマアプリ全盛”でもしぶとく生き残るハードオフ。“メルカリにはない強み”が背景に

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“フリマアプリ全盛”でもしぶとく生き残るハードオフ。“メルカリにはない強み”が背景に

4月18日(木) 8:53

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中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。

リサイクル店が大繁盛しています。背景にあるのはインフレによる節約志向の高まり。特に衣料品で好調で、リサイクルショップの売上をけん引しています。

その裏で苦戦しているのが、かつて市場を席捲していた古本や中古ゲーム。 中小の古書店や中古ゲーム専門店は中期的な苦戦が予想されます。

ハードオフとトレジャー・ファクトリーは絶好調

ブックオフグループホールディングス の2023年6月-2024年2月の売上高は、前年同期間比9.3%増の823億円でした。通期は9.0%増の1110億円を予想しています。 ハードオフコーポレーション は、2023年4-12月の売上高が前年同期間比10.2%増の220億円。通期売上予想は10.9%増の300億円。2社ともに通期では1割の増収となる見込みです。

ハードオフは長らく売上高200億円の壁を突破することができませんでした。しかし、2022年3月は15.2%、2023年3月期は10.3%それぞれ増収となり、今期はいっきに300億円台に乗せる見込みです。 物価高が深刻化した2022年からの増収ペースには目を見張るものがあります。

衣料品に強いトレジャー・ファクトリーも好調そのもの。 2024年2月期の売上高は前期比22.1%増の344億円でした。2025年2月期は同17.7%増の405億円を見込んでいます。今期も2割近い増収を予想しているのです。

トレジャー・ファクトリーの売上高もしばらく100億円台で推移していましたが、2022年2月期に200億円台に乗せ、2024年2月期に300億円を突破しました。

しかし、「主力商品」は苦戦が続く

インフレ時代のリサイクルショップは正に庶民の味方。新品の買い控えや節約志向の受け皿になっているのは間違いありません。

ただし、中古品のすべてが売れ行き好調なわけではありません。 ブックオフの主力商品である、古本やソフトメディア(音楽・映像・ゲーム)は苦戦しているのです。

時代の変化を読んで素早く行動するブックオフの底力

ブックオフの書籍の販売額は2022年5月期、2023年5月期は前年割れ。 2023年6月-2024年2月の販売額も前年同期間を1.8%下回りました。じりじりと減少を続けています。

ソフトメディアの販売額は横ばいが続いています。2023年6月-2024年2月はわずか1.0%の増加にすぎません。

好調なのがアパレルで、2023年5月期は2割増。 2023年6月-2024年2月も14.6%増加しています。貴金属・時計・ブランドバッグ、家電も1割増となりました。これ以外に絶好調なのがトレーディングカードやプラモデルなどのホビー。2022年5月期の販売額は前期の1.6倍、2023年5月期が1.4倍、そして。2023年6月-2024年2月はおよそ1.2倍のペースで増加しています。 ホビーの売上高は、3年ほどで全体の1割から2割を占めるまでに成長しました。

ブックオフは立ち読みOK、大量仕入れ・大量販売で、古本店の常識を覆しました。新古書店という新たなビジネスモデルを確立して業界トップに躍り出ます 。巨大化した今もブックオフの市場に対する柔軟性は健在。 出店形態も大きく変わりました。

新規出店したブックオフは、どれも本やソフトの他にホビーやトレカ、アニメグッズ、スマートフォンなどが陳列されています。かつてショッピングモールに小型の古本店を出店していましたが、現在は 「あそビバ」 という新業態を開発。 トレカやフィギュア、アニメグッズなどの専門店に切り替えました。

ブックオフは古本店という殻を完全に破ったのです。

セカンドストリート買収という先見の明

ゲオホールディングスも、今や主力は中古ゲームではありません。 2023年4-12月の中古ゲームの売上高は、前年同期間比4.3%増の249億円でした。一方、衣料・服飾雑貨は同29.6%増の644億円となっています。

ゲオは2010年にセカンドストリートをTOBで子会社化しました。中古ゲームやレンタルの市況が伸び悩みを予想しており、総合リサイクルショップに活路を見出したのです。その戦略が奏功しました。買収には35億円を投じましたが、 会社の成長を担う事業に育っていることを考えれば安い買い物でしょう。

旧来型の中小店は生き残れないかもしれない

書店の減少が深刻化しています。東京商工リサーチは10年間で書店の運営会社が764社倒産したとの調査を発表しています。

書籍のデジタル化が進行し、インターネット通販で購入する消費者が増えていることが背景にあります。中小の古本店も市場縮小の影響を大いに受けるでしょう。中古のゲームやCD、DVDも斜陽化しました。 旧型のビジネスモデルをとる中古ショップの大量倒産が視野に入ります。

規模の大きい総合型リサイクル店や衣料、ホビー、家電などの専門店がリサイクル市場の伸びをけん引すると予想できます。

“メルカリにはない強み”が

一つ疑問に思うのが、 メルカリなどのフリマアプリが台頭しているにも関わらず、リサイクルショップが繁栄しているのはなぜなのかという点。

これには消費者意識が深く関わっています。

環境省がリサイクルショップに関する興味深い調査を行っています(「リユース業者の環境意識高度化事業 消費者へのアンケート調査結果」)。この調査の中で「リユースショップにて購入した理由」について尋ねたところ、 「中古品を購入するなら、リユースショップと思ったから」 との回答は37.3%。この比率が高いのは当然とも思えますが、実は最も回答率が高いのは 「立ち寄ったらほしいものがあったから」 (38.5%)なのです。

つまり、 目的の中古品を購入するためにリサイクルショップに行くのではなく、無目的に訪れている消費者の方が多いのです。 いわば、リサイクルショップは娯楽施設化しています。これが、Webがリユース市場を侵食しきれない理由の一つです。

そうすると、フリマアプリは目的のものを購入するために使い、リサイクルショップは遊びに行くために立ち寄る、という棲み分けができます。

Webサービスが進行しても、リサイクルショップの活況は続くでしょう。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

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