人生100年時代と言われるようになり、定年後もずっと仕事を続けなければならないが、それに対して不安を覚えている人は少なくないのではないだろうか。
大分県別府市のリラクゼーションスペース「ラフィネえきマチ1丁目別府店」に勤める吉野タカ子さんは、82歳の現役セラピストだ。4500人以上もいるラフィネグループのセラピストの中でも彼女は最高齢。この道37年の大ベテランだが、体力のいる仕事を今まで続けられている理由について探った。
感謝の言葉をもらえることにやりがい
吉野さんは女手ひとつで子供2人を育てるため、学校給食の調理師として働いていた。同時にバレーボールの実業団にも所属しており、練習で捻挫や突き指などのけがが絶えなかった。そこで東洋医学などの専門家の他、一般の人も参加できる医療の勉強会に参加。それから体のケアに強く興味を持つようになったという。
46歳からは鍼灸マッサージ院で働きはじめ、全国療術士協会の研修で療術士に認定された。その後はグループ会社のリバース東京が運営する温浴施設内のリラクゼーションルームで勤務し、施設が閉館したことから、2021年に現在のラフィネ店舗に移った。82歳になった今もセラピストとして週5日、1日6時間の勤務を続けている。
施術はまずヒアリングから始まる。お客さんの抱える悩みを聞き出し、それに合った施術をするためだ。そして施術後に「気持ちよかったよ。ありがとう」と感謝の言葉をかけてもらえることが「うれしいですね。やりがいを感じますよ」と話す。
同僚のスタッフたちは「まるで自分の孫のようだ」
健康で働き続けるために心がけていることは? と訊いてみると、「特別なことはなにもしていない」とのこと。ただ規則正しい生活を送っているだけのようだ。
毎朝5時に起床し、出勤前に神社を参拝。そして夜は9〜10時頃に就寝する。そしてそんな毎日が「とにかく楽しい」という。
吉野さんのそんな幸せなオーラは、他のスタッフにもいい影響を与えている。同僚の女性スタッフはこう話す。
「吉野さんが来てからはセラピスト同士の人間関係がより円滑になって、職場全体の雰囲気が明るくなりました。まさに職場のムードメーカーのような存在で、たくさんのスタッフから慕われています。彼女から施術のポイントなどを教わる人も多いです」
また、吉野さんは予約システムなどパソコン操作が難しいことがあり、そんなときはいつも若いスタッフに助けられている。持ちつ持たれつの関係なのだ。そんなスタッフたちのことを吉野さんは「まるで自分の孫のようだ」と話す。
日々の生活に“小さな幸せ”を
お客さんからの指名も多い。その丁寧な施術の他、豊富な人生経験を活かした人生相談やちょっとした占いなども人気の理由になっているようだ。
吉野さんは、人生をより良くする秘訣として「好きな言葉をひとつでも見つけるといい」と話す。彼女は菜の花の花言葉でもある“小さな幸せ”が大好きなのだとか。
今後の展望について聞いてみた。
「体が動く限り、ずっとこの仕事を続けたいね。この仕事が本当に好きだから。いろんな人と出会えて話ができて、そういうことに小さな幸せを感じるし、自分の心の財産になっていると思うね」
やりがいのある仕事に出会い、日々の生活における小さな幸せを大事にする。吉野さんがこの年齢まで元気で働けているのは、この2つが大きな要因になっているそうだ。
<取材・文/小林ていじ>
【小林ていじ】
バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
【関連記事】
・
「月給60万円も珍しくない」定年退職後にタイへ移住する人が増加中。プール付きのコンドミニアムで暮らす人も・
高額バイトとして人気の「治験」定年後に参加する人が増加。50泊で“謝礼金100万円超”の案件も・
「Amazonの倉庫バイトなら日給1万円にはなる」66歳女性が、定年後の肉体労働をすすめる理由・
「年金は月2万円だけ」バイトで食いつなぐ64歳独身男性。それでも生活保護を受けない理由・
「汚ねぇな、出ていけ!」60代男性が目の当たりにした“シニア派遣の闇”。給料カットや交通費ゼロもザラ