「007」への未練タラタラ…!?『ARGYLLE/アーガイル』にも込められたマシュー・ヴォーンのスパイ映画への愛と憎しみ

『ARGYLLE/アーガイル』などマシュー・ヴォーン作品にはスパイ映画愛が満載!/[c]Universal Pictures

「007」への未練タラタラ…!?『ARGYLLE/アーガイル』にも込められたマシュー・ヴォーンのスパイ映画への愛と憎しみ

3月4日(月) 11:30

スパイ騒動に巻き込まれた小説家の災難が、理想と空想の世界が交差しながら繰り広げられる『ARGYLLE/アーガイル』が3月1日から公開中だ。メガホンをとったマシュー・ヴォーン監督といえば、代表作「キングスマン」シリーズなど、スパイ映画の“お決まり”を覆し、予想の斜め上をいく作品を作り上げてきた。キャリアを通じてなにかとスパイ映画と縁の深いヴォーン監督だが、そこには過去のある経験が関係している?
【写真を見る】マシュー・ヴォーン監督がスパイ映画にこだわる理由とは?(『ARGYLLE/アーガイル』)

■大好きな「007」の監督候補になるも…

2017年に「エンパイア」誌で明かしたお気に入りの映画に『007/私を愛したスパイ』(77)、『007/ゴールドフィンガー』(64)、『女王陛下の007』(69)を挙げるなど、イギリス人ということもあってか「007」シリーズには思い入れのあるヴォーン。

実はボンド役がダニエル・クレイグへと移った『007 カジノ・ロワイヤル』(06)のタイミングでヴォーンは監督候補に挙がり、企画も出したが、ボンド役に薦めたダニエル・クレイグだけが受かり、自身は直前で断られてしまうという苦い経験を味わっている。

このことがモチベーションとなったのか、ここから数々のスパイ映画を作り上げていくヴォーン。2007年のイスラエル映画『The Debt』をリメイクした『ペイド・バック』(10)では製作と脚本を担当。イスラエルの秘密諜報機関モサドの工作員を題材に、派手なアクションはないものの、重厚なスパイサスペンスに仕上げてみせた。

またアメコミ映画『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11)では、「X-MEN」誕生の物語を1960年代の“東西冷戦時代”というスパイ映画の定番の設定に落とし込み、60年代「007」映画からの影響を盛り込みながら魅力的に描いた。

■「007」への複雑な想いが込められた「キングスマン」シリーズ

そんな彼のスパイ映画愛がひねくれた形で発揮されたのが『キングスマン』(14)だ。表向きはテーラーだが、その正体は世界の危機を救う諜報機関“キングスマン”の活躍を描く本作。ロンドンの労働者階級で育ったゴロツキの青年エグジー(タロン・エガートン)が、ハリー(コリン・ファース)の導きによって優秀なスパイへと成長していくというものだ。

そもそも原作者のマーク・ミラーと共に思いついた『キングスマン』の基となるアイデアは、『007/ドクター・ノオ』(62)の際にテレンス・ヤング監督が労働者階級出身のショーン・コネリーを行きつけの紳士服店やレストランなどに連れ回し、紳士の嗜みを教え込んだという裏側のエピソードなのだ。

また、叶わなかった「007」シリーズへの恨みを晴らすかのような皮肉も満載で、ハリーと悪役のヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)が会話するシーンでは「最近のスパイ映画はシリアスすぎてダメ」とハリーがチクリ。その言葉通り、本作には脚が刀という荒唐無稽な悪役やロマンあふれるガジェットが多数登場する。

さらに敵のパーティーに忍び込んだエグジーが「マティーニを。ウォッカでなくジンで。10秒ステアして」とオーダー。これはボンドの好むウォッカ・マティーニの「ステアではなくシェイクで」というおなじみのスタイルの真逆になっている。

その後も続編『キングスマン:ゴールデン・サークル』(17)では、ウイスキー(ペドロ・パスカル)が雪山で開いたパラシュートが星条旗という『007/私を愛したスパイ』でボンドがユニオンジャックのパラシュートを開くオープニングのオマージュなどが登場。

さらに前日譚の『キングスマン:ファースト・エージェント』(21)では、オックスフォード公爵役のレイフ・ファインズや執事のポリーを演じたジェマ・アータートンなど、あてつけかのように「007」絡みの俳優をキャスティング。「キングスマン」はヴォーン監督の「007」への愛と憎しみが満載のシリーズなのだ。

■『ARGYLLE/アーガイル』も一筋縄ではいかないスパイ映画に!

そんなヴォーン監督の最新作『ARGYLLE/アーガイル』は、スパイ小説家エリー・コンウェイ(ブライス・ダラス・ハワード)が、自身の小説が現実の出来事を予言していることを理由にスパイ組織にねらわれる様子を彼らしいツイストの効いた物語で描いていく。

虚構と現実が混ざり合った、これまで以上に荒唐無稽な描写でストーリーが展開され、「スパイ映画の常識を覆す」というヴォーン監督の気概が感じられる型にハマらない1作だ。

そのことを象徴する一つの要素が、小説内の敏腕エージェントであるアーガイルのルックス。ヘンリー・カヴィルが持ち前の魅力を生かしチャーミングに演じているキャラクターだが、その髪型はなんと“角刈り”。カヴィルだからこそかっこよく映っているが、この角刈りは既成のスパイ像を覆すというヴォーン流のブラックジョークなのだ。

「キングスマン」をはじめ、これらの大立ち回りから、今後ヴォーンに「007」の監督のオファーが来る可能性は低そうというのが正直なところ。とはいえ「007」も仕切り直しのタイミングなので、もし監督することが実現したらヴォーンはどのような作品を作り上げるのか?気になるところでもある。

文/サンクレイオ翼


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