「死ぬまで働く」が現実的になった現在。流されるように再雇用に頼るのではなく、もっと貪欲に稼ぎ方を探ったほうがいい。そして、実は60代からが最も“自由に”働ける年でもあるのだ。定年後を充実させる働き方を伝授しよう!
シニアの労災が急増中
シニアの働き場所が増える半面、労働災害(労災)の件数も急増している。厚生労働省の「労働災害発生状況」(令和4年版)によると、60歳以上の労災による死傷者数は年間4万人弱で、平成14年の2万人弱から20年間で約2倍に増えている。「労災ユニオン」の佐藤学氏が話す。
「労災ユニオンには'23年の1年でおよそ200件の相談があり、その半数以上が高齢者からの相談でした。'19年の発足時から増え続けています」
どんな相談が多いのか?
「全体の7割程度がケガです。例えば少しの転倒でも高齢者は骨折などのリスクが高くなってしまいます。本来であれば雇用主側が従業員に対する安全教育や、現役世代よりも仕事の密度などを軽くする合理的配慮をすべきですが、コストの問題などでないがしろにされるケースが多いです」
特に相談が多い職種は…
特に相談が多い職種が、建設業や介護業といった肉体労働や、ビルメンテナンスなどの清掃業だという。
「これらの業界は仕事内容がハードなので離職率が高く、常に人手不足です。そういう現場に『生活のためにとにかく働きたい』と願う高齢者が流入することが労災の増加に繫がっているのでしょう」
事例から見るシニアの労災
過労死事件を多く扱う弁護士の尾林芳匡氏も、「高齢者の立場の弱さが労災に繫がるのでは」と話す。
「'23年に過労死だと労災認定されたケースとして、厚焼き玉子を作る食品会社で働いていた70代男性が'20年に心筋梗塞で亡くなった事例があります。この男性は会社が卵を仕入れすぎたために、通常の倍以上を製造することを命じられ、深夜や休日も働いていたそうです。食品工場内はとても暑く、その中で9日間にわたり長時間労働をしていました。このように高齢者には過酷な仕事で無理に働くケースが多いのです」
尾林氏は「長時間労働だけでなく、寒暖差の激しい環境で働く人は特に気をつけてほしい」と警鐘を鳴らす。
「例えば真冬の屋外勤務や、暑い厨房内でマスクを着けながら働く場合です。長時間労働ではなくても、寒暖差によって血管がダメージを受けて脳や心臓に疾患が生じると過労死が起きやすくなります」
仕事を選ぶ際に重要なポイント
また、仕事を選ぶ際にも「シニア労働者への配慮がある職場かどうかを、きちんと調べるべきだ」と続ける。
「労働時間は無理のない範囲内なのか、夜勤が多くないか健康診断はあるのか、急に体調が悪くなったときに休めるのか。そういった条件は面接時に聞いたほうがいいですし、同年代が実際に働けているのかも調べておきましょう」
シニアを求める職場が増えているのだから、「ここがダメでも次がある」という強い気持ちを持ったほうがいい。
【労災ユニオン局員 佐藤 学氏】
総合サポートユニオンでの活動から続いて、'19年の労災ユニオン立ち上げ後も仕事によるケガや病気、過労死など多くの相談に対応
【弁護士 尾林芳匡氏】
八王子合同法律事務所所属。30年以上にわたり、過労死や労働災害の裁判などを多く担当。その経験からメディアへの寄稿も多数
取材・文/週刊SPA!編集部
【関連記事】
・
定年退職を機にタイへ移住した男性の悠々自適な生活「年金頼りでもゆとりある暮らしができる」
・
高額バイトとして人気の「治験」定年後に参加する人が増加。50泊で“謝礼金100万円超”の案件も
・
「汚ねぇな、出ていけ!」60代男性が目の当たりにした“シニア派遣の闇”。給料カットや交通費ゼロもザラ
・
「管理職には興味がない」50歳ヒラ社員、年収1500万円の仕事を捨てて辿り着いた幸せ
・
「Amazonの倉庫バイトなら日給1万円にはなる」66歳女性が、定年後の肉体労働をすすめる理由