石田卓也、俳優業から離れたことで生まれた「余裕」さまざまな経験が役者としての幅に

石田卓也 クランクイン!写真:高野広美

石田卓也、俳優業から離れたことで生まれた「余裕」さまざまな経験が役者としての幅に

1月31日(水) 6:30

2005年に役者デビューしてから20年近くの歳月が流れた俳優の石田卓也。最新作映画『罪と悪』では、高良健吾、大東駿介という同世代の俳優たちと“心”をぶつけ合う芝居を披露した。数々の映画やドラマに出演しているキャリア豊富な石田だが、一時期俳優業から離れていた時期があった。そのことで俳優業という仕事の奥深さや難しさが、よりクリアになったという――。

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■同世代の高良健吾、大東駿介と心をぶつけ合う芝居を

井筒和幸、岩井俊二、武正晴、廣木隆一ら数々の名監督の助監督を務めてきた齊藤勇起がオリジナル脚本で挑んだ初監督作品である『罪と悪』。14歳のとき直面したある事件を背負いながら大人になった男たちのさまざまな感情がぶつかり合うという重厚なストーリーだ。

石田は「いまの日本映画はコメディだったりポップな作品が多いと思うのですが、この映画はほぼ男性しか出てこなくて、コミカルな要素も一切ない。とても男臭く重い作品だなと感じました」と脚本を読んだときの感想を述べる。

石田が演じたのは、14歳のとき仲間が殺され、その犯人だと思われる人物を殺めてしまった3人組の一人・朔。同じく現場にいた高良演じる春と、大東扮する晃とは大人になって再会し、魂をぶつけ合う。

高良、大東共に石田とはほぼ同い年であり、共にキャリアも豊富な俳優たち。石田は「どちらもテクニックというよりは、心で芝居をする方たち。齊藤監督もあまり『こうしてほしい』という細かい演出はなく、僕らの心の底から出てくるものを救い上げよう……という感じだったので、任されている嬉しさがありました」とじっくり“人”と向き合えた環境に感謝を述べる。

魂と魂のぶつかり合い。セリフではなく、視線や息遣いで対峙するシーンが多かった。その意味で映像は緊張感で溢れている。石田は「どちらも子どものころから久々に再会し、過去の出来事からギクシャクしている関係性。何とも言えない嫌な感じが、映像に映ればいいなとは思っていたのですが、現場ではそこまで意識していなかったんです」と語る。

しかし完成した作品を観たとき石田は「僕が現場で思っている以上に居心地の悪さが、体全体から出ているなと感じて嬉しくなりました」と作品全体のトーンにあった芝居ができたことに喜びを感じたという。「本当に二人がド直球で感情をぶつけてきてくれたので反応できた。本当に食らいました」と高良と大東に感謝していた。

■テクニックではなく内から湧き出てくるものを――恩師からの金言



2017年に所属事務所を退社後、約3年俳優業から離れていた時期があった。石田は「僕は15歳の終わりぐらいから芸能の世界に入って30歳ぐらいまでこの仕事しか知らなかった。正直この世界はどこかおかしいところがあるのではないかという思いもあり、別のことをやってみたくなったんです。僕の性格上、半々でうまく立ち回ることはできないので」と一旦芸能の世界を離れた理由を語ると、「いろいろな仕事をしました。そのなかで農業というのが一番自分に合っているし楽しいなと思って今も続けています」と現状を報告。

少し俳優業から離れたことで見えてきたことも多かった。石田は「一番大きかったのは余裕が出たことですかね」と話し出すと、「久々に俳優業に戻ったとき、いろいろなことが新鮮に映ったんです。例えばスタッフさんの動きなども以前はそこまで気にする余裕がなかったのですが、今はいろいろな人の支えがあるからこそ、僕らが現場に立てるんだという思いもあります。客観視することができるようになると、心にも余裕ができるんです。離れていた3~4年にほかのことをやれて、すごく自分にも幅ができたと思います」と良い状況で作品に臨めていることを明かす。

こうした経験は本作でも活きている。石田が演じた朔は、大人になって農業に従事している役柄だ。「あえて僕のことを意識してそういう役にしたのか監督には聞いていないので分かりませんが、普段やっている作業だったので、農家のシーンはリアリティがあると思います。劇中日焼けしていますが、それもファンデーションを塗ったわけではなく、そのままの僕でしたし、スッと汗が出る作業もリアルにやっている。僕が演じた朔はとても難しい役だったのですが、そういう部分でリアリティを出せるのはとてもありがたかったです」。

「俳優業だけやっていたら、とても幅の狭い役者になっていたと思う」と語った石田。いろいろな人物を演じる仕事が俳優業。「もちろん殺人犯の役をやるとき殺人を犯すわけにはいきませんが」と笑うと、「でもしっかりといろいろなことを経験していれば、たった一ミリでも感覚の違いが出ると思う」と私生活でも“経験する”ことの重要性を説く。

「テクニックではなく、内から湧き出てくるものを表現しなさい――」。この教えは石田が映画デビュー作『蝉しぐれ』で監督を務めた黒土三男さんから掛けられた言葉だという。「昨年亡くなってしまいましたが、黒土監督から言われたことは、今でも常に基本としています。脚本を読んでみて、気持ちがどうしても理解できない役はやれないんです。それは監督と約束したことだから」。だからこそ、心と心でぶつかり合えた本作は「本当にありがたい作品でした」と心に残る作品になったという。

『罪と悪』という作品タイトルには、重層的な意味合いが込められている。石田は「法律上で『君は間違っている。罪だよ』と言われることも、実際のところは、それが罪ではないかもしれない」と語ると、「人それぞれの心の中に罪も正義もある」と、一元的に決めつけることの危険性を述べる。だからこそ「行動や考えは自由であるべきですが、自分で出した答えには自分で責任を取らなければいけない。そんなことが描かれているのかな」と自身の思いを語ってくれた。(取材・文:磯部正和写真:高野広美)

映画『罪と悪』は、2月2日全国公開。

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