細川亨インタビュー(後編)
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現役時代は西武、ソフトバンク、楽天、ロッテの4球団で19年間プレーした細川亨氏。松坂大輔氏をはじめ、数多くの好投手とバッテリーを組み、その一方でパ・リーグの強打者たちとマスク越しに名勝負を繰り広げてきた。そこで細川氏に、これまで印象に残った「好投手ベスト3」「強打者ベスト3」を挙げてもらった。
ロッテ時代の2020年シーズンを最後に現役を引退した細川亨氏photo by Sankei Visual
【記憶に残る好投手3人】
──捕手というポジションは、いろいろと大変なことがあったのではないでしょうか。とくに2016年にコリジョンルールができるまでは、本塁でのクロスプレーも多かったと思います。
細川
2007年のロッテ戦で、早川大輔さん(ロッテ)と本塁クロスプレーになって、アウトにはなったのですが、脳しんとうを起こしまして......「レフトから返球した和田(一浩)さんが、なぜいるんだろう」と、記憶が飛んでいましたね。
2008年は死球を与えたベニー・アグバヤニ(ロッテ)に首投げをされて、きれいに「一本」を決められました。おまけに左肩に乗られて脱臼し、病院送りにされました。ほかにも西口文也さんのフォークを捕り損ねて指を裂傷したり、ファウルチップで骨折なんてしょっちゅうです。
──19年間のプロ生活で、細川さんがすごいと思った投手を3人挙げてください。
細川
ナンバーワンは松坂大輔です。好調時はリードに苦心しなくても、逆に引っ張ってくれるような圧倒的な投球でした。自分のなかでは、松坂は変化球投手なのですが、ここ一番でのストレートはすごかったです。松坂は1歳下なんですが、人間性、追求心など、尊敬できる選手でした。
──ふたり目はどなたですか?
細川
斉藤和巳さんです。私が西武の時に「東西対抗」でバッテリーを組んだのですが、マウンドに立っている姿が圧倒的で。長身から投げ下ろすストレートは迫力、威力とも凄まじく、野球のボールがソフトボールのように大きく感じられたほどです。
──最後のひとりは誰になりますか?
細川
攝津正です。私のソフトバンク時代、攝津は5年連続2ケタ勝利を挙げ、うち1回は最多勝のタイトルを獲得しました。右打者のインコースにシンカーを投げてファウルを打たせ、緩いカーブで泳がせる。とにかく気持ちの強い投手でした。もちろん、このほかにもたくさんの好投手の球を受けさせてもらいましたが、印象に残っているのはこの3人です。
【打ちとるのに苦労した3人】
──では、マスク越しに感じたすごい打者ベスト3を挙げていただけますか。
細川
まず稲葉篤紀さんですね。外角球でも一、二塁間を抜きますし、甘い球がくるとフェンスを越される。広角に打てますし、打ちとるのに苦労しました。ふたり目は西武時代のチームメイト・栗山巧です。選球眼がよく、いいコースに投げてもファウルで粘る。稲葉さん同様、どうやって打ちとるべきか考えさせられました。最後は城島健司さんです。とにかく勝負強く、チャンスで回ってきてほしくない打者です。同じ捕手ということで、配球の読み合いもありました。
──細川さんは現役引退後、指導者としても実績を残しています。
細川
「火の国サラマンダーズ」は、もともと熊本ゴールデンラークスという社会人チームが母体で、基礎はできていました。そういうこともあり、監督1年目(2021年)でリーグ優勝することができました。その翌年の2022年は、同い年の藤田太陽(元阪神ほか)に誘われて、社会人野球の「ロキテクノ富山」のバッテリーコーチ兼ディフェンス担当を務め、都市対抗に初出場することができました。
昨年のドラフトでは、澤柳亮太郎投手がソフトバンクの5位指名を受けました。ブルペンでひと目見て球質がいいとわかりました。1年目は体づくりをしっかりやらせ、投手目線は藤田、捕手目線で私がアドバイスを与え、順調に育ってくれました。
──今後の目標はありますか。
細川
捕手としての経験を生かし、今後もいい選手、いいチームづくりをしていけたらと考えています。
細川亨(ほそかわ・とおる)
/1980年1月4日、青森県生まれ。青森北高から青森大に進み、2001年自由獲得枠で西武に入団。08年にベストナイン、ゴールデングラブ賞を獲得。10年オフにFAでソフトバンクに移籍。13年から2年連続100試合以上に出場するなど、常勝チームの正捕手として活躍。16年オフにコーチ就任を断り自由契約となるも、楽天に移籍。18年オフに戦力外となったが、ロッテと契約。2年間プレーし、20年限りで現役を引退。引退後は21年から発足する熊本の独立リーグ「火の国サラマンダーズ」の監督に就任。22年からは社会人野球「ロキテクノ富山」のバッテリーコーチ兼ディフェンス担当として活躍中
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